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「Capture One 5 Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。


No.08


露出の最適化





文:湯浅立志
1961年、群馬県生まれ。東京写真専門学校卒業後、広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、Web媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。デジタル集団「電塾」の運営委員としてデジタルフォトの啓蒙活動にもつとめる。
有限会社Y2代表。(社)日本広告写真家協会会員。

http://homepage3.nifty.com/y2/
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「Capture One 5 Pro」 49,800円
「Capture One 5」   12,800円
対応OS:Windows XP/Vista/7、
Mac OS X 10.5.8〜10.6

日本総代理店:DNPフォトルシオ
http://www.fotolusio.jp/business/
captureone/index.html

Phase One
http://www.phaseone.com/




まずはバージョンアップのニュースから。

12月2日に「Capture One 6」のダウンロードが開始された。ダウンロードは以下から。http://www.phaseone.com/
バージョンアップのウワサは以前からあったが、ここまで早くアップするとは、、多くの人が驚きを持ってこの情報を受け取ったと思う。
バージョンアップの主要なところはニュースを参照してほしい。

国内でのパッケージ販売は2011年2月1日からの予定だが、当面Capture One 5 Proに無償アップグレード申込書を添付して販売される。バージョンアップはプロ版からPro 6へは10,500円、スタンダードからExpression 6へは7,350円、スタンダード版からPro 6へは39,900円となっており、国内プロショップで受け付けている。
詳しい問合せ先はDNPフォトルシオ(phaseone@dnp-fotolusio.jp)まで、となっている。

ただ、Phase OneのWebサイトでバージョンアップも可能だ。英語のサイトだが69ユーロでクレジットカード決済できる。ただし、このサイトでバージョンアップを行うと国内版と同様のサポートは受けられないので、不安な人は国内でプロショップを経由してバージョンアップを行った方がよいだろう。

Capture One 6で一番、目を引くのはなんと言ってもiPad、iPhone、iPod Touchで画像を表示できる「キャプチャーパイロット」機能だろう。簡単にテストしてみたが、無線LANのある環境なら簡単にiPadで撮影画像を表示できた。ギミックとしては非常に面白いし、実際の仕事でもかなり使えるものと思う。

そのほか、面白い新機能がかなりあり、これはしばらく遊べるな、というのが第一印象だ。この解説でも順次新機能を取り上げていくつもりだ。

さて、新しいバージョンの話はこの辺にして、今回は露出のコントロールをテーマにする。

順番としては本来なら前回のセレクトの次なので、ホワイトバランス、色の調整をするわけだが、すでにこの部分は第5回「ホワイトバランスにおけるカラータブの使いこなし」で解説済みだ。話があちこちにいって解説としては読みにくいことになっているが、お許しいただきたい。まだお読みでない人や、忘れてしまっている人はこの際にもう一度、参照いただけるとうれしい。

今回の露出のコントロールは前回のカラータブの右隣にあるExposureタブのことだ。C1の現像調整はこのタブを左から右へ1つずつ調整していくことで完成形となる流れだ。




◀左がデフォルト状態の画面。



◀露出のコントロールを始める間にいくつか注意点がある。

まずは基本特性のカーブの確認。デフォルト状態で何もいじっていなければここは「FilmStandard」になっている。人間が感じる自然なトーンを再現するカーブだが、写真によって他の意図がある時は最初にここを選択する。



◀シャドウ部の描写を重視したい時は上の「ExtraShadow」、コントラストを高くしたい時は「HighContrast」という具合だ。Linearは直線を意味するが、科学的用途で使うことがあるということだ。



◀調整の定番的な順序では次にホワイトバランスを取る。クィックタブでたいていの調整はすむ。

チャートのグレー部分をスポイトしただけで今回は次に移る。

なお、左の写真は作例としては好ましくない。チャートがライトではれているが、大目に見て欲しい。



◀調整に入る前にまだチェックする部分がある。左のようにレシピが赤字になっているとレシピが選択されていないと言うことを表す。このまま調整に入っても良いが、場合によってはモニター表示画面と実際の現像結果と合わないこともありうる。


◀以前の解説でも書いたが、表示設定を確認しておきたい。

表示>プルーフプロファイルで表示のプロファイルがどうなっているかを確認しておこう。デフォルトでは「選択されているレシピ」になっている。つまり、レシピが選択されていないとそのプロファイルに基づいての画面表示になっていないのだ。




◀outputタブにして、現像する目的のレシピをチェックしておこう。これで画面表示はそのレシピのプロファイルに基づいたものになる。



◀Exposureタブに移る。

一番上のヒストグラムを見るとシャドウからハイライトまで、まあまあ入っている状態で撮影されている。ただ、モデル撮影ということもあり、若干明るめの露出になっている。そのため、チャートの白は255になっている。

露出のコントロールだが、露出のスライダーを動かすだけでほとんどの場合は大丈夫だろう。ただ、それで終わればこの解説も必要ないのだが、、、



◀もう少し緻密なコントロールをしたい時はどうするか? それが今回の解説の骨子だ。

まずその前に、デフォルト状態のツールバーを少し変えよう。



◀ツールバー上にマウスを持っていき、右クリックで「ツールバーをカスタマイズ」する。

左のようなメニューが出るので、その中でツールバーに入れたいものをドラッグ&ドロップする。ここでは環境設定を入れる。



◀ツールバーに環境設定が入ったらそのアイコンをクリックすると環境設定画面になる。上のようなことをやらなくてもメニューバーからも行けるが、頻繁に使う設定なのでツールバーに入れた方がよいだろう。

ここでは「露出」の設定を見よう。

左がデフォルト状態。



◀デフォルトでもかまわないがここを自分の好みで変えてみると、さらに使いやすくなるはずだ。

左は僕の使用状態。シャドウの警告をオンにして、ターゲットレベルも選択してある。



◀これでツールバーの露出警告表示を入れればどの部分が危ないか? 一目瞭然になる。なお、上記の環境設定のスライダーは自分の好みで。デフォルトではハイライト250になっているが、それがすべての人に適正なわけではない。



◀露出警告を入れるとこんな表示なる。なお、露出警告はショートカットキーで覚えておくと便利だ。コマンド+Eで警告のオンオフができる。



◀Photoshopなどでおなじみのターゲットレベルも設定できる。

左のスライダーは効果を分かりやすくするために極端な数字にしてみた。



◀レベルツールの下にシャドウとハイライトの2個スポイトがある。これをクリックしてから写真の目的の部分をクリックすると、その部分が上記の環境設定した数字になるという機能だ。



◀チャートの黒でシャドウポイント、そして、白でハイライトポイントとして設定した。




◀レベルはこのように変化した。

このように目的とする数字がある場合は簡単にその部分のトーンを持っていける。



◀次のケースではレベルとトーンカーブの両方を使う。

白飛ばしの撮影はよくあるが、背景の白を完全に飛ばしきっての撮影はハレーションを起こすので良くない。だが、仕上がりのデータで完全に255になっていないとくすんだ写真になってしまうことがある。

撮影時には255にしないで撮り、後処理で255にするのが常套手段だ。

左の写真では露出警告を入れているのに警告が出ていない。つまりハイライトでも250以下で撮影されている。



◀まず、レベルで背景が警告が出るくらいまでハイライトポイントをずらす。ハイライトポイントはマウスで横方向に動かせばいい。同じようにシャドウポイントもパンツがつぶれない程度に黒を締めていく。

ここでの注意点はこの写真で何が重要か?ということだ。アパレルの写真ならパンツがつぶれないようにするべきだし、モデルのイメージカットなら少しつぶすくらい黒く締めた方がシャープな印象になるだろう。

自分が何を表現したいか? それを自分で見極めることだ。



◀上のレベル調整でほとんどOKだが、さらにモデルにコントラストを与える。

カーブポイントをクリックするとトーンカーブ上にポイントが打てる。ここを選択してから、画像の目的の部分をクリックすると、その部分がトーンカーブにポイントとして残る。

この例ではパンツの黒と顔の部分の二点をポイントした。

肌色は明るめにして、パンツ部分はシャドウを落とし気味に。



◀レベルでハイライトとシャドウを切って、その中でトーンカーブを使い、コントラストを調整した。

他社の現像ソフトではなかなかここまでコントローラブルではない。僕がC1を使う理由はこういうことが簡単にできてしまうからだ。



◀調整前後の比較。左が完成状態だ。


◀前の写真も同じように調整した。

タンクトップの黒と顔の部分の2点をトーンカーブにポイントして、顔のポイントを持ち上げた。

肌色は明るく、それでタンクトップはそのままということが簡単。



◀もう1つ、面白い機能が「ハイダイナミックレンジ」だ。

といっても、最近流行りの面白い絵にする機能ではない。一枚の写真でハイライト部とシャドウ部の描写を作者の意図通りに再現する機能だ。

左の例を参考にしていこう。

日陰の背景の前にシルバーの車を撮ると、シャドウはつぶれ気味、ハイライトは飛んでしまう、、ということになる。



◀露出警告を出すとこんな感じだ。



◀これで「ハイダイナミックレンジ」のシャドウを上げて背景を出して、ハイライトをシルバー部分を少し飛ぶのを押さえてみた。



こんな感じだ。

背景が出てきたので奥行き感が出た。更にボディ部分のシルバーが描写されたので質感も少しは回復された。



◀写真としては上が良いのかどうか?

個人的には背景をつぶして、車の引き立てたいと思った。

レベルのシャドウを動かして背景をつぶした。



これがもう1つの完成状態。

上の写真が良いか、下の写真が良いかはフォトグラファーそれぞれだろう。

ただ、同じ一枚の写真からこのように印象の違う写真が作れるという方法論は覚えておいて欲しい。


今回はこのあたりまで。

レベルとトーンカーブではRGBそれぞれのチャンネルで個別に調整できるなど、まだまだ語り足りないほど、使い方が多くある。

だが、使い方は人それぞれ、撮影の目的によるし、仕事や最終形にも寄る。C1の機能を良く覚えた上で、それをよく考え、自分の作品のクォリティを上げていっていただければうれしい。


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