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第1回 ムービー撮影のための道具



カメラマンは、取材に際して、スチルだけではなくムービーも一緒に撮影依頼される場合が増えてきている。例えばインタビューなど、雑誌やWebでインタビュー記事を載せるだけではなく、今やインタビューそのものをWebなどで公開するケースが少なくない。
そこで、本連載では、スチルカメラマンでもムービー撮影に対応できるように、必要最低限の道具の準備、そして撮影・編集テクニックについて、解説していく。





▲ムービー仕様の7Dを構える著者のヤギシタ氏

著者:
ヤギシタヨシカズ
http://www.yagishita.org/

グラビア、広告撮影からムービーの撮影、編集まで幅広く対応する、マルチカメラマン。



●ビデオカメラについて

まず、一般のスチルカメラマンが、インタビューなどの仕事でムービーも依頼された場合、どんな装備、道具を用意しておけばいいのか考えてみましょう。
キヤノンのEOS 5D Mark II以降、ムービーも撮れるデジタル一眼レフカメラ(以下DSLR:Digital Single Lens Reflex camera)が一般的になってきましたが、映像を撮るのであれば、やはり本来はビデオカメラの方が楽だと思います。私の使っているビデオカメラ、パナソニックの「AG- AC160」やキヤノンの「XA10」は、AVCHDフォーマットなどで撮れます。もちろん、フォトグラファーが手元に持っているキヤノンやニコンのDSLRを用いたい場合は、それはそれでOKだと思います。

ビデオカメラの利点としては、手ブレ補正などがありますが、DSLRに比べると、センサーが小さいので被写界深度が深いという点が一番の違いです。フォーカス合わせが非常に楽になります。

それと、DSLRは、長時間撮影していると熱暴走する機種があると聞きます。どちらかというとCM撮影のように短いカットを重ねていくような撮影に適していると思います。

ビデオカメラを選ぶ場合、例えばWeb掲載用のインタビュー撮影であれば、本格的なタイプではなく民生用のビデオカメラでも問題ないでしょう。ただ、例えばキヤノンXA10などは、民生機の延長的な業務機ですが、音声入力にキャノンマイク端子が用意されています。これにより、外部マイクをつなぐことができ、高音質での録音が可能です。もっと大きなAG- AC160などと比べると、ズームの倍率ですとか、マニュアルでの操作性に差が出てきますが、画質的には大差ありません。

▲パナソニックのビデオカメラ「AG- AC160」(クリックで拡大)

▲キヤノンのコンパクトなビデオカメラ「XA10」(クリックで拡大)



●DSLRよりビデオカメラを選ぶ理由

DSLRには、被写界深度が浅く撮れるDSLRらしい映像に魅力があると思います。5D Mark II、1DXなどはセンサーが大きいので、多めに絞らないと深度が浅すぎて映像的には違和感があるかもしれません。被写界深度が浅い分フォーカスも合わせにくいです。

同じキヤノンのDSLR、7DはセンサーサイズがAPS-Cなので、ムービーを撮るにはちょうどいいと思います。フィルムの35mmムービーと非常に近いセンサーサイズなので、元々フィルムの撮影部の人からすると5D Mark IIより、7Dの方が違和感なく使えると思います。私が実際に参加した現場で、メインはEOSの業務用ビデオカメラC300で撮って、サブカメラ数台に7Dを利用している現場もありました。
DSLRで映像を撮る場合は、外部ファインダーを付けてフォーカスを確認することをお勧めします。ピーキングという機能があるファインダーでは、フォーカスが合っていればそこが強くコントラストがついたり、赤くなってフォーカスが合っていることが確認できます。機種にもよるでしょうが、ムービーの場合はフォーカスをマニュアルで合わせることが多いと思いますので、このような周辺機器が頼りになります。

▲外部ファインダーを取り付けたキヤノンの7D(クリックで拡大)

▲外部ファインダーに映る被写体(クリックで拡大)



●レンズでスチル同様の効果を

私はEOSでムービーを撮るときは、時間が許す限り単焦点レンズを使います。同じ絞りまで絞って撮るとしても、開放が暗いズームレンズで撮った場合と、開放が明るい単焦点レンズで撮った場合では、フォーカスへの安心感が違います。

ズームと単玉での開放F値の違いはスチル同様、映像にも出ます。やはり被写界深度の浅さが全然違います。シャッタースピードを変えることで印象も変わります。そういうDSLRではの絵作りも可能です。


●外部マイクの必要性

特にインタビューをムービー撮影するときは、外部マイクを使うことをお勧めします。一番よいのは外部マイクをキャノンケーブルでつなぎ、画面の上ぎりぎりのところにぶら下げておくセッティングです。テレビの音声さんはこうして人の声などを録っています。指向性の狭いマイクであっても、なるべく話す人(音源)の近くで録った方が、周囲の雑音を拾わないので人の声のみをクリアに録ることができます。

インタビュアーと話す人の2人の声を録りたい場合は、マイクを2本用意してそれぞれに置くか、あるいは2人の中間に置くようにします。私の場合は、インタビュアーの質問は映像ごとカットしてしまい、話す人の声しか生かさない場合が多いです。インタビュアーの質問は後からスーパーに置き換えることもできます。


●ヘッドフォンは必須

音声の録音に関しては、ヘッドフォンは必須です。実際にどういう音が録れているのかが確認できないと怖いです。ですから撮影時は、生の声ではなくマイクから入力された音を常にモニターして聞いています。

ちなみに私はソニーミュージックが作ったヘッドフォン「CD900ST」を使っています。価格は1万円台だったと思います。レコーディングスタジオ内などよく用いられていて、音声さんもよく使っています。試しにCDをこれで聞くと、いままで聞こえてこなかった音がいろいろ聞こえてきます。

▲ソニーのヘッドホン「MDR-CD900ST」市場価格は15,000円前後(クリックで拡大)



●ムービー撮影用の三脚

三脚に関してですが、フィックス(カメラを固定)で撮るのであればスチル用の三脚で問題ありません。ただ、パン、ティルトなどで、動きのある映像を撮りたいのであれば、ムービー用の三脚が必要になります。ちなみに私は10万円台の三脚を使っていたのですが、腕が良くないのでちょっと不満があって(笑)、30万円くらいのsachtler(ザハトラー)の三脚に買い替えました。ヘッド(雲台)は「FSB6」です。パンとかティルトのスムーズさが違いますし、動作の最後もちゃんとすーっと自然に止まってくれます。脚はカーボン製なので軽く、持ち運びも楽です。

▲ヤギシタ氏愛用のsachtlerの三脚(クリックで拡大)

▲三脚に取り付けられたムービー仕様の7D(クリックで拡大)


●2台のカメラで撮る場合

2カメで撮影し編集した場合、それぞれのカメラの色が合わないと映像が不自然になりますから、色合わせの問題が出てきます。

色調は同一メーカーの製品であれば、ちゃんと調整すれば合います。両方とも業務機のレベルであれば色が合うと思います。ただコンシューマ機と業務機の組み合わせは難しいかもしれません。サブカメラの場合も同一メーカーの同レベルのモデルにしたほうが無難だと思います。

色合わせは編集ソフトで最終的にカラー調整もできますが、やはり撮影時に調整しておきたいです。編集時の色調整は、スチルのRAWデータやネガフィルムから比べると、色を変えられる範囲が狭いです。編集時は微調整くらいに考えておいたほうがいいです。また色合わせは、編集ソフトで色調整するよりも、カラーグレーディング専用のソフトの方がよいかもしれません。アップルの「Color」や、「DaVinci Resolve」などの専用ソフトで行えば、はるかに色合わせが自然になります。


これだけでOK! インタビュー用簡単セット
◀デジタル一眼とICレコーダーだけでもムービー取材は可能(クリックで拡大)


インタビューのムービー撮影で一番楽なのは、DSLRあるいはビデオカメラ1台と録音機(ICレコーダー)のみのセットです。録音機はなるべく被写体の近く、かつ周りの振動などが伝わらないように、隣のテーブルや何かの台に乗せるなど気をつけましょう。録音は、MP3などの圧縮フォーマットより、AIFFなどがいいでしょう。

このセットの場合、あとで映像と音声をシンクロさせる必要があります。詳細は編集の項で解説しますが、編集ソフトで映像に入っている音と、録音器の音とを同時に鳴らし、ずれを1フレームずつ前後させていくことでピタっと合う位置を見つけます。あるいは、映画の撮影でカチンコ鳴らしていたのと同じように、画面に映るところで手を叩きます、このパンと鳴っているところで絵と音を合わせれば簡単です。ビデオカメラに接続できる外部マイクを使えば、こういった手間も不要です。

DSLRで撮ったような絵が必要でない場合、DSLRはスチル専用にして、やはりビデオカメラを用意するのがベストだと思います。ビデオカメラは動画撮影用に作られていますから、ズームやフォーカスが使いやすいのです。




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