●レンズシャッターと中判デジタル
レンズシャッターは645DFの時代から採用された機能です。古くはフィルムの時代、35ミリタイプはフォーカルプレーンシャッター、中判以上はレンズシャッターというのがほぼ当たり前の機能でした。ただ、6×4.5のフィルムカメラに限っては35ミリと同じようにフォーカルプレーンシャッターを採用しているカメラが多かったのです。
デジタルになって、撮像素子の大きさが最大のものでも6×4.5のフィルムサイズよりも小さかったので、必然的に645のフィルムカメラに取り付けてデジタルカメラとした、というのが中判デジタルの始まりです。
マミヤ645は元々はフォーカルプレーンシャッターカメラです。フィルムの時代でも一部レンズシャッター付きレンズを付けることにより、レンズシャッターが可能になりました。
さて、レンズシャッターがこれほどまでに中判カメラに採用されていた理由はなんでしょうか? 主な原因は、フォーカルプレーンシャッターだとフィルムの直前にフィルムと同じ大きさのシャッター機能を持たないとならないため、フィルムの判型が大きくなればなるほど、難しく、そして大型のものになってしまうと言うことがありました。
その点、レンズシャッターはレンズ内に収まるので、どんなに大判のフィルムでも小型で済みます。8×10のカメラでも大判レンズのシャッターで露光は可能でした。ただ、レンズシャッターには弱点もあります。レンズシャッターはレンズ1本1本にシャッターを組み込むため、レンズ自体が大きく、重くなります。シャッターの分、値段も当然高くなります。機動性を重視するような35タイプがフォーカルプレーンシャッターを使っているのはこのためです。
●モデル撮影に威力を発揮
弱点のあるレンズシャッターですが、あえて今の時代、中判デジタルカメラが採用するのはなぜでしょうか?
中判カメラのメインターゲットはプロのフォトグラファーか、かなりのハイアマチュアに限られます。プロフォトグラファーでは仕事でストロボを使ったライティングをするのが一般的です。その際、ストロボとのシンクロスピードに自由度があるレンズシャッターは非常にメリットがある機能なのです。今回取り上げているマミヤ645DF+ではレンズシャッター付きレンズを付けた場合、シンクロスピードは1/1600secまでストロボと同調します。一般的な35タイプのデジタル一眼レフカメラでは1/250secでしょう。この差がレンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターの違いです。
ストロボ以外の光が入ってこない専用スタジオならシンクロスピードが1/1600secでも、1/250secでも差はありません。レンズシャッターの必要もないでしょう。ですが、アウトドアでのロケーションでモデルをストロボを使って撮影するとなると、この違いは大きく、しかも決定的な差になります。
モデルに対してのライティングはストロボですが、背景は自然光になり、その照明比がどれだけ自由になるか? というのがこのシンクロスピードに掛かってきます。晴れた日を想像してみてください。だいたいF8.0で1/125secくらいで風景は撮影できるでしょう(ISO100)。その前に立ったモデルには自然光が当たっていないとして、背景と同じ明るさにするにはF8.0まで照射できるストロボパワーが必要になります。
さて、一般的にモデル撮影するときに使用する絞りはいくつくらいでしょうか? 自然光だけでモデルと撮る時は基本的に絞りを開けて撮りたいでしょう。それは背景をぼかすためです。
ここでF8.0では絞りすぎてぼかせないとなった時、どうしますか? ストロボのパワーを落としてF2.8にすることは可能です。が、F2.8で自然光の背景は1/1000secが適正露出です。フォーカルプレーンシャッターではその速度ではストロボとシンクロしませんから、撮影はできません。この理由が、アウトドアでのロケーションではストロボを使っての撮影はレンズシャッターでないと自由度がないということなのです。
下の写真をご覧いただきましょう。夕方の撮影でしたが、夏の空はまだまだ明るく、普通に撮ったのでは単に白の空になってしまいます。シャッタースピードを上げることにより、空を落とし、主役であるモデルに目がいく写真になります。
モデル:永野里美
F3.2 1/250sec |
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F2.8 1/200sec |
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F4.0 1/500sec |
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F4.0 1/800sec
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使ったカメラはマミヤ645DF+ V-Grip
レンズはAF80mmF2.8LS-D |
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ストロボはProPhotoD1Air 250
バッテリーはバガボンド |
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