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「Capture One Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。
今回はバージョン7から新しくなったクラリティーツールについて解説しよう。
このクラリティーは、バージョン6までは「透明度」と呼ばれていた機能だ。英語版では以前から「Clarity」と同じ呼称だったが、バージョン7からは日本語訳をしないでそのままカタカナ表記にしたようだ。
なお、バージョン6の透明度については、すでに解説済みなので、そちらもお読みいただきたい。
No.24「透明度の使いこなし」
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◀左がバージョン6の透明度ツール
シンプルに量の調整のみだった。
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◀これがバージョン7からのクラリティーツール
クラリティーと構成の2つのスライダーが付いている。
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◀クラリティーを掛ける方法は3種類ある。デフォルトではパンチになっている。
方法の違いは作例を見本に説明していこう。
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◀まず、バージョン6の透明度の解説でも使ったが、風景の遠景写真、これにクラリティーツールを掛けるのが、もっとも一般的な使い方で、分かりやすいと思う。
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◀同じ画像ファイルに方法の違い3種類をクラリティーだけ100%、それぞれ掛けてみた。表示は100%表示にしてある。
なお、マウスクリックで100%表示のウィンドウが見られる。
クラリティーを掛けることによって、霞んでいた遠景がハッキリするのが分かるだろう。クラリティーとはトーンの中間域にコントラストを付ける感じで、写真をしゃっきり、ハッキリさせるツールだ。
パンチとニュートラルの違いはパンチは彩度も同時に上げている点だ。ニュートラルは彩度を上げずにコントラスト感を出している。
クラシックはバージョン6までの透明度と同等という解釈でよいだろう。
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◀次に同様に構成だけを100%掛けて見た。
構成はシャープネスを上げると思ってよい。シャープネスには強さ、半径、しきい値など面倒な要素があり、それに対しての知識が必要になる。だが、この構成ツールはそのあたりの知識を考えなくても、ほぼ自動的に見た目のシャープ感を上げてくれる。
パンチとニュートラルの構成ツールに関しては、その違いがないと考えてよいだろう。
ここで見ていただきたいのはクラシックの構成ツールだ。パンチとニュートラルとは違い、ノイズの荒れが少ない。効き目が弱いが、ノイズが荒れないというこの特徴を覚えておきたい。
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◀左がクラリティー、構成、両方とも100%掛けた状態。この両方を100%掛けることは滅多にしないと思うが、ツールの方向性を知るために一度はやってみてもよいだろう。
標準の何も掛けていない写真から比べると、ここまで遠景が見えるようになるのか! と驚く。
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◀このクラリティーツールがどんなものなのか? 自分でつかむために、いろいろな写真に掛けてみよう。使い道を覚えるのはそれがイチバンだ。
左の写真ではカラーチャートに注目して欲しい。
パンチのクラリティーがいかに彩度を上げているか、よく分かるだろう。パンチとはその名の通り、写真にパンチが効くと覚えておく。ニュートラルは自然な感じと覚えておこう。
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◀また、構成ツールでは上げすぎると黒い部分と隣接した部分に、縁取りのような明暗差が付く。
これも特徴の1つだ。
クラシックの構成ツールはこの縁取りが出ないという点も覚えておきたい。
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◀左は花の写真だが、花の彩度に注目したい。パンチはこれだけ彩度が上がってしまうと言うことだ。
また、ピントの合っているところ以外のボケ味も見ていただきたい。クラシックのクラリティーはボケ味がガサ付いた感じになってしまう。
上の写真のようにコントラストがあるところでは縁取りを出さないが、ボケのような柔らかいところでは、逆にがさがさした感じになってしまうのが、クラシックの特徴だろう。また、写真全体のコントラストもクラシックはフラットになる。たとえて言うならHDRのような、そんな感じが出るのがクラシックだ。
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◀クラリティーツールはマイナス方向にも動く。
それぞれの方法でクラリティーツールをマイナス100にしてみた。まるで撮影時にソフトフォーカスフィルターを掛けて撮影したかのような効果が得られるパンチのクラリティーは面白い。
これは結構使える機能だ。
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◀構成ツールをマイナス100にしてみた。
これの面白いところはピントがぼけたような効果が得られる点だ。
上の画像と比較して、クラリティーツールはピントの芯が残っているのに、構成ツールをマイナス100はピントの芯さえもぼけてくる。
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◀その構成ツールを使った画像救済Tipsを1つ。
構成ツールは見た目のシャープ感を上げるツールだが、それを利用して、ピントが今ひとつ合っていない部分に掛けることによって、ピントが合っているかのごとく見せかけることができる。
左のようにバッグの端はすでに被写界深度の外になっているが、構成ツールを使うことによって、ここまでピントをごまかすことが可能だ。この例では画像全部に掛けているが、No.24「透明度の使いこなし」でも解説したように、マスクを使って、ピントのぼけているところだけに構成ツールを掛けられる。
ナイショの話だが、これで僕は何度かピンぼけ写真を救済したことがある。
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◀クラリティーツールの面白い使い方としては、マイナス方向に動かすことによって、ハイライトのにじみ効果を写真に与えることが出来る点も覚えておいてほしい。
パンチのクラリティーをマイナスにすることでレンズ前にデュートフィルターを掛けたような、光のにじみが出る。
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◀花の輪郭に注目していただきたい。
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◀新しくなったクラリティーのパンチ、ニュートラルではノイズのような荒れが出てしまうと書いたが、どうしてもその効果を使いたいこともあるだろう。
左のようにパンチを効かせたい、が、ノイズも押さえたいという時もある。クラシックではご覧のように、コントラストがフラットになってしまい、意図した写真にならない。
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◀そんな時はクラリティーを掛けてから、ノイズ除去ツールでノイズを減らす。このツールは使いすぎると写真がのっぺりとしてしまうので、加減を自分で判断して使いたい。
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以上、今回はクラリティーツールについて解説した。
文中にも書いているが、このツールはとにかく使ってみること。これに尽きる。どういう写真に良いのか? 一概には言えない。とにかくスライダーを動かしてみる。
ただ、注意点としては、使いすぎないこと。何事もやり過ぎはよくない。日常的に使っていると、感覚が麻痺していき、これなしではイマイチに感じるようになる。それがこのクラリティーツールの最大の弱点だ。
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