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「Capture One Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。
ここでの告知が遅くなってしまったが、先月(2011年7月)に僕の執筆した「CAPTURE ONE PRO 6公式ガイドブック」が発売になった。こちらに書いている内容と重複する部分もあるが、手元に置いてじっくりとC1と向き合いたいというフォトグラファーには、Webよりも本の方がよいだろう。内容的にはどうしても本という性格上、時間とともに古くなっていってしまうので、最新情報やアップデート後の使い方など、PCJの本連載「Capture One 徹底使いこなし術 」で随時ご紹介していくので、併せてお読みいただければうれしい。
話は変わるが、同じく7月にスタジオエビスにて「中判デジタルサミット2011」と言うイベントがあったが、その中でC1のセミナーを受け持った。その際に、ご来場いただいた方からご質問があった。内容は「撮影時にRAW+JPEGで撮影しているのだが、どうしてもJPEGとRAWで色が合わない。どうしたらよいか?」と言うご質問だった。
今回はこのご質問をテーマにして書いてみたい。
まず、RAW+JPEGの同時記録時、同じカメラ、同じ条件なのにもかかわらず、なぜ色が違うか? と言う点について。どれだけ色が違うか、いくつかの例をご覧に入れたい。
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◀カメラはキヤノン7DでRAW+JPEG撮影したファイル2枚をC1にて表示させている。
レシピのカラースペースはAdobeRGB。左がRAW、右がJPEG。
まず、明るさと彩度が違うのが見て取れる。これの理由としてはRAWはC1の現像パラメータによる表示、JPEGは7Dのカメラ内によるJPEG処理の違いからきている。特にJPEGはキヤノンのピクチャースタイルによって処理されているのでRAWとはかけ離れてしまう結果になる。この現象は当然ながらもカメラメーカー純正の現像ソフト(キヤノンではDPP)でも起こるのだが、ピクチャースタイルを掛けた状態で画面表示されるので、結果的は純正ソフトでは色の差が出にくいと言うことになる(ピクチャースタイルはスタンダード)。
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◀次の例では色相が違っているのが見て取れる。この紫色の花に関しては近赤外の問題もある。それにしてもRAWとJPEGでここまで色が違ってしまうのには驚く。
レシピのカラースペースはAdobeRGB。左がRAW、右がJPEG
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◀次の例では輝度が高いレンジでの描写の違い。RAWではハイライトが飛んでいるかのように見えるが、ここからリカバリーはできる。JPEGではそれを押さえた内部処理をされていると想像できる。
レシピのカラースペースはAdobeRGB。左がRAW,右がJPEG
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ご質問なさったフォトグラファーの方は、「JPEGに合わせようとしてRAWを調整するが、なかなか同じようにならない」と言うことだった。
僕の結論からすると、同じにすることはかなり難しい。もちろん、1点の写真を同じに調整することは時間を掛ければ近づけることは可能だろう。でもそれでは仕事にならない。大量のカットになればなるほど不可能というしかない。
このご質問に対しての僕の回答は「JPEGでの記録はしない」と言うものだった。
写真を調整する時、比較対象があるとやりやすい反面、同じにすることも困難になる。比較対象がなければ、その写真はなんの問題もないことになるケースが多いはずだ。
では、なぜRAWを撮った上で同時記録でJPEGが必要なのか? 僕が考えた理由は以下の通り。
(1) 画像の損傷、喪失などのリスクを減らすため。
(2) 撮影後にデザイナー、編集者などに見本としてすぐにデータを渡したい。その際に現像していたのでは遅いから。
以上の2点が考えられる。
まず、1の理由への 解決策。
リスクを減らすために同時記録でJPEGというのは同じフォトグラファーとしてよく分かる。ただ、そのリスクとは何か? を冷静に考えた時、同じハードディスクに記録していたのでは、根本的なリスク回避にはならないという点に気がつくと思う。ファイル1枚が壊れた時にはRAW+JPEGで助かるが、PCごと、あるいはハードディスクの物理的損傷にはどうにもならない。このリスクを回避するのは後半で書く。
次に2の理由への解決策。
僕も一時期、撮影後すぐに編集者に当たりデータを持ち帰ってもらうためにRAW+JPEG記録をしていた時期があった。撮影後にキャプチャーフォルダをファイル形式、種類、サイズなどでソートを掛ければRAWとJPEGを分けてJPEGだけ別フォルダに入れてUSBメモリ、CD-Rなどにコピー、お持ち帰りはスムーズだ。
なぜ今はやっていないかというと、C1のQuickProofを使っていることと、本番と色や明るさの違ったデータがクライアント側に渡って、ヘンな誤解を招かないためだ。納品された本番データと違うと言われたことがあり、そもそも、見本が違っているんですと言い訳するのは仕事としてよくないのではないか? と思ったので。また、QuickProofを使うと、現像にそれほどの時間が掛からないので、実質、ファイルを仕分けてコピーと、大差ない手間と時間でお持ち帰りができるからだ。
それでは具体的にこの解決策を解説していこう。
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◀根本的なリスク回避にはならないけど、それでも気分的にRAW+JPEGで記録しておきたい、と言うフォトグラファーもいらっしゃると思う。その時は余計なJPEGデータを見ないという方法論をご提案したい。
C1はさまざまなファイルを表示、調整することができるが、同じフォルダにあっても、特定のファイル形式だけを表示させないと言うことができる。
これをグローバルフィルター機能と呼んでいる。
左の画面はRAW+JPEGのフォルダを表示させたところだ。同じ写真がRAWとJPEGの2枚表示されているのが分かると思う。
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◀グローバルフィルターは 表示>グローバルフィルターから「常にJPEGファイルを隠す」にチェックを入れる。
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◀すると、ブラウザ画面からは、JPEGファイルだけが消えて、RAWデータだけが表示される。
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◀そのフォルダを見ると、フォルダの中には同時記録のJPEGはちゃんと存在している。
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◀次にQuickProofでの簡単、スピーディなJPEG作成法。
JPEGクィックプルーフという名前でレシピを作成。
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◀形式を「JPEGQuickProof」にするだけ。解像度以外の設定はグレーアウトして動かせない設定になる。解像度は好きに変更してもかまわない。PC画面上でのセレクトを想定するなら72DPIにしておくと親切だろう。
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◀このJPEGQuickProofで現像されたJPEGはどのくらいの大きさなのだろうか? と言うと、環境設定のプレビューサイズがそれになる。デフォルトでは1000ピクセル(長辺方向)になっている。
つまりはJPEGQuickProofはC1が画面表示するためにRAWから作ったプレビューデータだと推測できる。だから現像の時間が極端に短く書き出せるのだ。
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◀ちなみにこのプレビューサイズは最大で2400ピクセルまで作成できる。が、テストしてみた結果、2400ピクセルにしたところで、高解像度にはならなかった。単純に1000ピクセルの画像をそのまま大きくしたような、ジャギーのある2400ピクセル画像になるだけだ。
それでも大きい見本が早く欲しいと言うことなら、ここの解像度を上げておく。
参考までにQuickProofでの簡単現像はどれだけのスピードか、計ってみた。
キヤノンの1DsのRAWデータ100コマをC1で現像させた結果が以下だ。(MacPro 2010 8Core 2.4Ghz)
QuickProof 56秒
JPEG現像 6分37秒
このように圧倒的なスピードで見本画像を作れる。この速さなら撮影後に見本データを渡そうと言う時、クライアントを待たせることはないだろう。 |
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◀最後に理由1に上げた、撮影データ喪失から守るためのバックアップについて。
Macユーザーの場合、純正でTimeMachineというバックアップソフトが付いている。HDDに入っているデータ全てをバックアップするには、このTimeMachineを使うのが最も手軽で、追加費用もないので、一度試してみるとよいだろう。
デスクトップのMacProなら内蔵でHDDを4基入れることが可能なので、そのうち1基をTimeMachine用のHDDに指定するのが手間と時間が掛からない方法だ。
TimeMachineは想像以上にマシンパワーを食ってしまうので、作業時にはTimeMachine機能を停めた方がよいだろう。また、所詮はデータ転送なので、データ転送速度の速い方法を考えるべきだ。その点、内蔵させるのは最も速い転送レートになる。 |
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◀次にノートPCではどうするか? と言う点。
内蔵できるのはたいていの場合、1台のHDDだ。それをパーティションを切ってコピーすると言うことは根本的なリスク回避にならない。物理的に別のHDDにしない限りは失う時は同じだ。
ここでも速い転送レートということでFW800の外付けHDDをTimeMachineに指定することがよいかもしれない。ただ、これだとバックタイプをつないだ時に、ハブでも使わない限りは、FW800ポートが1つなので撮影と同時にバックアップはできない。撮影後に接続し直して単純コピーするなどの方法を取るのがローテクだが最も簡単確実かもしれない。このあたりは個人個人の仕事内容と価値観に寄るので、いくつかの方法を試しながら自分なりの最善の方法を探っていくしかない。
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今回はここまで。
C1の初めてのガイドブックが出たと言うこともあり、今までは違ったユーザーが入ってくるものと思われる。もし、「こういうときはどうしたらよいのだろう?」と疑問があったなら、編集部までメールをいただけると、多くの人にとって参考になる点なら、取り上げることもあるかもしれない。
今後ともこの連載は続いていくので、引き続きよろしくお願いいたします。
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