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「Capture One Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。


No.11


Local Adjustment(部分調整)の使いこなし





文:湯浅立志
1961年、群馬県生まれ。東京写真専門学校卒業後、広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、Web媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。デジタル集団「電塾」の運営委員としてデジタルフォトの啓蒙活動にもつとめる。
有限会社Y2代表。(社)日本広告写真家協会会員。


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「Capture One Pro 6 Box」 49,800円
対応OS:Windows XP/Vista/7、
Mac OS X 10.5.8〜10.6

日本総代理店:DNPフォトルシオ
http://www.fotolusio.jp/business/
captureone/index.html

Phase One
http://www.phaseone.com/




今回はLocal Adjustment(部分調整)について解説していくつもりだが、その前にバージョンアップのお知らせ。



C1本体も着実にマイナーバージョンアップされている。バグフィックスもそうだが、新しいカメラに対応するタイミングが早いというのはありがたい。

もう1つのバージョンアップは前々回に解説した「キャプチャーパイロット」のiPhone、iPad用アプリだ。



これについて少し解説したい。



まず、よく使うサーバーを登録できるようになったこと。

サムネイルではバリアントの番号が表示されるようになった。


◀そしてなんといっても最大の変更点はこれ。

iPhone、iPadから写真に対してレーティングとカラータグを打てるようになった。


◀PCのC1画面への反映も瞬時だ。

フォトグラファーが撮影している間に、クライアントが写真のセレクトをやってしまう、、という夢のようなことが現実になった。昔気質のフォトグラファーにとってはある意味、悪夢かもしれないが。


◀こうなると、C1側でも表示に一工夫した方が良いだろう。

初めてインストールしたC1が6.1.1だという人はすでにデフォルトでセッションアルバムの中に「5スターイメージ」というスマートアルバムが入っている。これは星5つ以上を付けられた写真が自動的に入るというアルバムだ。

以前からのバージョンをお使いのユーザーはこのスマートアルバムは入っていないので、自分で作る必要がある。作り方は簡単。セッションアルバムのところで右クリックをすると左のようなメニューが出てくる。その中から「新規スマートアルバム...」を選択する。


◀左が設定画面。

「5Star」というスマートアルバムの名前を付けて、設定を「レーティング」「同等」星5という設定をする。

これで5つ星の写真だけが自動的に選ばれるスマートアルバムが出来る。


◀左の画面がそのスマートアルバムを使って表示させたところ。

これでフォトグラファーの知らない間にレーティングをされても、一発でその写真の確認が出来るようになる。




第9回の「キャプチャーパイロット」については多くのフォトグラファーに興味を持っていただいたようだ。同じようにやってはみたが、うまく繋がらないという人もいるようだ。僕の過去の経験では、無線LANを使った機能は現場の状況に左右されることが多いと感じている。100%うまく繋がり、快適にブラウズできるということはない。事前にテストしていったが、撮影現場でダメだったということも多々ある。安定した環境のスタジオ使用ならトラブルも少ないと思うが、イベント会場のようないろいろな電波が飛び交っているような場所では難しいことも多い。その点をよく理解し、本来の目的である撮影に集中した方がよいだろう。

また、スタジオ使用だからといって、1つのPCに何台ものiPhone、iPadからアクセスするのは無理だ。複数台でアクセスするととたんに表示が遅くなる。基本的は1台のiPhone、iPadで使うのがストレスがなくてよいと思う。

さて、前置きが長くなったが、今回の本題、Local Adjustment(部分調整)について。

Local Adjustmentは日本語では部分調整と訳されているように、部分的な調整をする機能だ。

ツールはブラシのようなアイコンをクリックする。

「部分調整」のツール、下にある+ボタンを押すとレイヤーが作られる。元の画像は「バックグラウンド」となる。部分調整をしたい時はこのレイヤーを作ってから、そのレイヤー上でブラシを使って描くという方法になる。レイヤーはいくつも作れ、さらに名前も変更できる。


レイヤー上にブラシで描く時はブラシツールに変更する。ショートカットではBのキーを押す。

ちなみに消したい時はEのキーで描いたブラシを消せる。

BはBrush(ブラシ)のBで消す時はErase(消す)のEと覚えておこう。また、描いた場所の確認はMキーで表示できる。これもMask(マスク)のMと覚えておくと便利。


◀簡単な使い方の例としては左のように空の部分を落としたい時などに使う。



◀明るさの変更、コントラストの変更以外にいろいろな調整ができる。

左の例では空の青の部分を色相をシフトさせ、さらに彩度を最高に上げてみたところ。あり得ないが、こんなこともできる。

ただ、部分調整は全ての調整ができるわけではない。その点は注意が必要だ。たとえば色温度を変えるとか、彩度を変えるとかはできない。


レイヤーを複数作れるので、レイヤーの上にさらに重ねてみた例。

以上が簡単な使い方の例。

このあたりの方法論はなにもC1でなくても他のアプリケーションでも同じようなことはできる。

ちょっと変わった使い方を紹介しよう。



モデル撮影などではあまりシャープな画像は喜ばれないことが多い。肌のアラが目立つからだ。だが、甘いのも困る。全体的にはソフトでもよいが、肝心なところはシャープに、という要望がよくある。

そんな時に使えるのがこれだ。

まず、全体にかかる透明度をマイナスに。今回はマックスの-100にした。これで写真全体がソフトな感じなる。


次に部分調整でレイヤーを作成。シャープネスを上げておく。分かりやすいように今回はマックスの1000にした。これでシャープにしたいところだけブラシで塗る。

つまり、全体をソフトにしておき、ブラシで部分を元に戻すというやり方だ。

ただ、これは透明度でソフトにして、シャープネスでシャープにするので、厳密には同じにはならない。ただ、最終的な写真としてこれで十分目的を達するはずだ。


◀左が仕上がり。右が部分調整をしていない。目元と唇にシャープなブラシを掛けている。


もう1つ、実際の仕事で使える部分調整をお見せしよう。

お困りのフォトグラファーも多いと思うが、モアレだ。

左の例ではスーツの裏地に出ている。


◀拡大したところ。



もちろん、C1には強力なモアレを取るツールが装備されている。これを使えばだいたいのモアレは何とかなる。

が、かけ過ぎるとこうなる。下の画像がモアレ処理をしたものだ。


◀ソフト的にモアレ処理をするということはどういうことか? カラーチャートにモアレ処理してみればよく分かるだろう。左のようにモアレを起こしている特定の波長域をぼかす、にじますような処理をするようだ。

だから、上のように紺色のスーツの表地にまで裏地のえんじ色がにじみ混んでしまうわけだ。


◀そこで部分調整が威力を発揮する。部分調整はすべての調整ができるわけではない。がモアレのツールは使えるのだ。

モアレを起こしているところだけブラシで塗る。


◀こういう正確に部分を塗りたい時はこまめにブラシサイズ、硬さを変えながら塗りたい。ブラシのまま右クリック、もしくはコントロールキーを押すとブラシ設定のウィンドウが出るので、そのまま大きさ変更などする。

下のチェックボックスはタブレットを使う時の筆圧に対応するかどうかのチェックだ。タブレットでペンを使う時はチェックしておくと使いやすい。

余談だが、C1は6になって、タブレットを使った方がよい場面が多くなった。Photoshopでタブレットを使う人は多かったが、これからはC1でも使用者が増えるだろう。


◀上が部分調整でモアレを起こしているところだけ消したもの。下が全体的にモアレ処理をした画像だ。

どうだろうか、この便利さがお分かりいただけただろうか?

今まで、このようなモアレを起こしているところだけ掛けたい時は、元画像と、モアレ処理した画像の2枚を作り、それをPhotoshopでレイヤーで重ね、マスクを切って部分的に合成していた。それがこれからはC1だけで完成まで持って行けるのだ。アパレルを撮っている、またはポートレートが主体のフォトグラファーには、これだけでもアップグレードの価値は十分あると言えるだろう。


今回はここまで。


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