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「Capture One 5 Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。
Capture One 6 PROにバージョンアップされてから、新機能の紹介も絡めて使いこなしを書いているが、今回もバージョン6から加わった新機能、「キーストーン」について書いてみたい。
「キーストーン」と言う名前はフォトグラファーにとって馴染みのない名前だが、簡単に言うと「ゆがみ補正」または「遠近補正」などの補正と同じだ。建築物を下から撮影する時、上すぼまりに写るのを補正するというように、建築写真では古くから使われてきた技術だが、デジタルカメラで撮影するようになって、撮影時にアオリで補正する以外に、PCのアプリケーション上で形を補正するという方法論が加わった。このジャンルでの補正、修正はAdobe 「Photoshop」の独壇場だったが、この数年、他のアプリケーションでも補正が可能になってきた。その機能が今回、C1バージョン6にも入った。
さて早速、使い方を解説しよう。
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◀今回の作例はPhase One P65+、マミヤ645D、マミヤ35mmを使用している。
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◀キーストーンにいく前に、今回のように使用しているカメラ、レンズがC1にレンズ補正としてプリセットがある時は「レンズ補正」を掛けておこう。これによりレンズ個体の収差補正がされる。
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◀キーストーン機能を使うにはツールバー、もしくは左側のツールからクロップの項目に入っている。ショートカットではキーボードの「K」になる。
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◀このケースでは「キーストーン垂直」を選択。建築写真など垂直方向の形を補正する時は垂直を選ぶ。
それぞれにポイントが2個ある天地方向のラインが2本出てくる。
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◀使い方は簡単。補正したい建物の外側に沿ってラインを動かす。動かし方はライン上にあるポイント、ストーンと言うが、ストーンをマウスでドラッグしていけばラインが動く。
補正はこのラインの置き方次第なので、何回かの試行錯誤が必要かもしれない。
たとえばこの作例のようにビル群がある場合、一番手前のビルに沿ってラインを2本とも置いてしまうと、補正はおかしくなる。目的は一番手前のビルだけなのだが、写真的には写っているビルすべてがバランスを保っていないとおかしなものになる。こういうときはビル群の一番右と一番左にラインを持っていくのが正解。手前のビル単体の右と左にラインを持ってくると、そのビルだけは補正されてよいのだが、他のビルがまっすぐではなくなるのでおかしくなるのだ。
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◀できるだけ精密な補正を目指す時は部分拡大してストーンを動かそう。メインビューワーの拡大率は右上のスライダーで動く。
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◀ビル群左端にストーンを動かす。この時も拡大率を上げておくと楽。
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◀ストーンが決まったらビューワーの真ん中に出ている「適用」ボタンを押すと補正された表示になる。
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◀Photoshopなどの補正でも同じように画面上部を拡大し、下部を縮小するというやり方なので、このように下の方に黒い部分が出てくる。デフォルトではオリジナルと同じ縦横比で黒が出ないように自動的にトリミングされる。
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◀補正の具合を確認するためにグリッドを表示させてみよう。メニューバーからグリッド表示ボタンを押すか、キーボードショートカットで「コマンド+G」でグリッドが出る。
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◀ここでちょっとおさらい。
作例のような写真だとグリッドが区別しにくいということもあるだろう。その時は環境設定から「クロップ」で設定を変えられる。左がデフォルト状態だが、自分の使いやすいように変えておこう。
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◀僕の場合、グリッド表示は「グリッドおよびガイドがオンの時」にしている。
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◀色をクリックするとグリッドの色も変えられる。絵柄によって何色がよいかは変化する。基本的には背景と反対色を選んだ方が見やすい。
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◀グリッドの数も好きに変えられる。このあたりの使い勝手の良さはC1ならでは。
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◀さて、戻るが、補正はしてみたものの、どうも垂直が補正し切れていない、と思う人が多いだろう。
これはキーストーンの基本姿勢が「自然な見栄え」を重視しているからだ。4×5で建築写真をやっていたフォトグラファーなら誰しもが経験があると思うが、建築写真の場合、完全に建物の上と下の幅を同じにしてしまうと、人間の目で見て上が大きく見えてしまうということがある。これは錯覚なのだが、フォトグラファーはそこでほんの少しアオリを弱めて少しだけ上が小さく写るように手加減していた。
C1ではこのあたりのことを機能に含め、補正の量をデフォルトで80%にしてある。これでは足りないと言う時はこの「量」スライダーを動かせば自分の好み通りになる。
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◀補正を行うと、よほど余白を多く撮っておかないと画面上で足りなくなる時が多い。
まさに今回のケースがそうだ。
左のようにビルは切れていないが、周りの環境が切れてしまった。こういった外での撮影では現場で補正した状態までのチェックはしないので、PC作業中に「あ!足りない・・」と気がつくことが多い。
デジタルなので少しくらいの修正で救えることがあるはずだ。
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◀多少のトリミング変更、さらにレタッチ修正までして写真を作りたい時、そんな今回のようなケースでは、「イメージの外をクロップ」にチェック入れる。これにより、撮影時はない周辺の黒の部分まで含めてトリミングができるようになる。
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◀写真の下部、左右に余黒が入ってしまったが、手前の庭園は切れずに入れられた。余黒部分は小さいので簡単にレタッチできるだろう。
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◀仕上がりはこんな感じ。
これはテストケースなので垂直線はまっすぐにしてみた。
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◀補正前後の比較。
左が補正前、右が補正後。
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◀C1ならではの小技をもう1つ。
キーストーンでアスペクトも変えられるのだ。垂直線を直した後に、全体的なイメージがどうも違う、と言う時がよくある。縦横比が変わってしまったためだ。これを修正するために「アスペクト」量が変えられる。このスライダーを動かすことで画像を縦に伸ばしたり、横に伸ばしたりできるのだ。
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◀左の画像が5%アスペクトを修正したもの。右の写真と比べて自然な見栄えになる。
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◀さて、C1でここまで補正できるのなら、もう撮影時に補正しなくてもよいんじゃないか? と思われるフォトグラファーも多いかもしれない。
撮影時にアオリで補正した画像と、C1で補正した画像、同じになるのかどうか、ちょっと試してみた。
左の写真はキヤノン1Ds-mark3、EF17mmTS-Eで垂直線を補正して撮影したもの。
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◀左の写真はキヤノン1Ds-mark3、シグマ12〜24mmで撮影した画像をC1のキーストーンで補正したものだ。
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◀オリジナル画像はこんな感じ。(左)
補正量はこのくらい。(右)
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◀レンズの金額的にもまったく違うものの比較なので当たり前だが、見た目は同じに補正できるが、拡大しての細部の描写はやはりTSE17ミリがすばらしい。
ソフト上で補正を掛けるということは、どうしても画像劣化する。補正を掛けても大丈夫なくらい、良いレンズを使っていかないと最終画像が良いものにならないということを頭に入れておこう。
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◀最後にもう1つ、キーストーンで水平、垂直を直す例を挙げておく。
左のように複写などの例で使える。
もちろん、撮影時に対象物に対してカメラをまっすぐに据えるのが基本だが、状況によってはそんな理想を言ってられないことも多々あるのが現実だ。
左の例では額に入っているガラスが外せない状況、さらにアオれるレンズを持っていないということを想定した。
額に対してガラスの映り込みを避けるために少し斜め方向から撮影になる。当然、額自体は歪むわけだ。
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◀ここでキーストーンの出番。キーストーンの井形を選択。ラインが4本出るので、ストーンを額の四隅に置くだけだ。
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◀適用を押せば補正される。簡単に終了。
だが、額の厚み部分までは隠しきれないので、その点だけ注意したい。
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◀上が補正後、下がオリジナル。
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◀複写など、同じ状況で何カットも撮ることが多いだろう。一度キーストーン補正データを作ればそのパラメータを他のカットにコピーペーストできる。キーストーンのメニューバーの上下矢印みたいなマークをクリックするとパラメータをコピーするためのウィンドウが開く。
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◀調整クリップボードのウィンドウで現在補正されているものがチェックされている。このままコピーをクリックすれば、このキーストーンのパラメーターのみコピーされる。
その後、他の画像に対してペーストすれば、同じ補正が他の画像にも掛けられる。
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◀1つだけ注意点がある。
左の画像はキヤノン7Dで撮影したものに同じキーストーンパラメータを掛けたものだ。3枚の画像は左上がフルサイズのRAWデータ、右が M-RAW、下がS-RAW。パラメータはフルサイズのRAWデータのものをコピーして他のRAWデータに掛けた。撮影はまったく同じ条件でやっていても、RAWのファイル形式が違うとパラメータは共用できない。その点だけ、頭に入れておこう。
また、今更になるが、キーストーンが使えるのはRAWデータだけだ。
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以上でキーストーンの解説は終わる。
新バージョンでは、キーストーンのように以前のC1からは考えられないような機能が加わった。現像ソフトだったC1から一歩踏み出たのがバージョン6だと思う。今まではPhotoshopの領域だった作業範囲をC1で行う。C1を使いこなすことでPhotoshopを使う機会が減ってくるのではないか? と思われる。たとえばロケ現場に持っていくノートPCにC1だけ入っていれば当座は間に合う、そんな立ち位置が今のC1なのだと思う。
次回はまた違った機能の使いこなしを書くつもりなのでお楽しみに。
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