・カメラマンにとっての3D CG基礎知識

・スチルカメラマンにとってのムービー撮影を考える

・プロカメラマンのための撮影データ管理術

・3ds Maxを用いた新時代写真術

・Capture One 徹底使いこなし術

・PCJライティング講座





「Capture One Pro」 (以下C1Pro)はカメラマンがRAWファイルを最適化する際、色再現や画質のブラッシュアップなどの一連の作業を大幅に向上させるツールだ。ここでは実際の作業からC1Proの使いこなしを考えていこう。


No.09


Capture One 6 PROの
「キャプチャーパイロット」と現像スピード





文:湯浅立志
1961年、群馬県生まれ。東京写真専門学校卒業後、広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、Web媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。デジタル集団「電塾」の運営委員としてデジタルフォトの啓蒙活動にもつとめる。
有限会社Y2代表。(社)日本広告写真家協会会員。

http://homepage3.nifty.com/y2/
Flickr:http://www.flickr.com/photos/tatsphoto/
Facebook:http://www.facebook.com/tatsphoto
Twitter:http://twitter.com/#!/tatsphoto





「Capture One 5 Pro」 49,800円
「Capture One 5」   12,800円
対応OS:Windows XP/Vista/7、
Mac OS X 10.5.8〜10.6

日本総代理店:DNPフォトルシオ
http://www.fotolusio.jp/business/
captureone/index.html

Phase One
http://www.phaseone.com/




前回の冒頭、Capture One 6 PRO バージョンアップのお知らせを書いたが、その後、6をお使いの方も多いことだろう。

このバージョンアップはいろいろな意味で今までのバージョンとは一線を画すバージョンになったと思う。バージョンアップに関しては以下のサイトの解説が最も詳細で分かりやすいので参考にされたい。

ナショナルフォート



さて、バージョンアップの際の注意だが、普通の方法だとアプリケーションフォルダへアプリケーションのC1本体をドラッグ&ドロップするというやり方だが、この方法だと、古いバージョンを消してしまう上書き保存になる。新バージョンの6を取りあえず試用してみてからバージョンアップを決めたいというフォトグラファーも多いと思うが、その時は古いバージョンをアプリケーションフォルダの中で、新規に別フォルダを作って、その中に退避させてから新バージョンの6をドラッグ&ドロップした方がよいだろう。そうすればアプリケーションフォルダの中で新バージョンと旧バージョンが存在することになり、いつでも古いバージョンに戻すことが可能になる。

ただ、この方法で僕も行ったのだが、どうも調子が悪かった。バージョン6までは毎回このやり方で通してきた僕だが、今回はそういかなかった。バージョン6から新旧2つのバージョンが共存することができなくなったという可能性も否定できなくはないので、古いバージョンのユーザーで新バージョンを試用したいという人は、十分注意してほしい。できればシステムを完全に別なものを用意するくらいの用心深さが必要になるかもしれない。

さて、今回の解説から新バージョンの6で行う。

今回は6の新機能で最も目を引いた、「キャプチャーパイロット」機能を実践的に解説しよう。この機能はiPad、iPhone、iPod TouchでC1の画像を表示できるというものだ(注意! 無線LANのある環境が必要)。

文章で書くよりも以下の動画を見ていただいた方が早い。

 

この機能は元々はデジタルバックのLeafで実現されていた機能だ。あやふやな記憶だが、2008年のフォトキナ会場でデモされていたと思う。Leafはそれ以前からもハンドヘルドデバイスでキャプチャー画像を表示するという方法論に積極的だった。LeafがPhase One傘下に入ったと言うことで、この機能もC1に移植されたと推測される。数年前からある機能なのにC1に入ったとたんに各方面のプロカメラマンがブログやツィッターで書いているのは、いかにC1のユーザーが多いかの証だろう。

「キャプチャーパイロット」を解説する前に、基本的な無線LANのことを少し押さえておこう。「キャプチャーパイロット」は無線LANがないと使えないということを知らない人はいないと思うが。

まず、無線LANの規格について以下の規格がある。

規格 速度
802.11b 最大11Mbps
802.11a 最大54Mbps
802.11g 最大54Mbps
802.11n 最大600Mbps

当然、最も高速な11nを使った方が快適だろう。現在発売されているMacではすべて11nに対応済みだ。

次に無線LANを使った「キャプチャーパイロット」概念図。


◀普通のデスクトップPCをスタジオ内で使っている時はこのようになっていると思う。



◀ノートPCを使っているなど、PCからすでに無線LANに入っているとき。

上記のスタジオ内で使う時でも同じだが、「キャプチャーパイロット」を使う際にはインターネットにつながっている必要はない。もちろん、つながっていてもよいし、つながっていなくてもよい。



◀これがアドホックモードで接続しているとき。

ノートPCでのアドホックモードを設定すれば無線LANルーターなどの中間機器が必要なくなる。

アドホックモードの設定の方法は以下が参考になる。

Eye-Fi Japan


注意点としてはいずれの場合も、カメラとPCはUSBケーブル、もしくはIEEE1394ケーブルで接続されている必要がある。また、画像本体は接続されたPC内のHDに保存されている。よく誤解されるのはiPadなどの中に画像が保存されると思われる人も多いが、iPadは無線LANを通じて、PCにアクセスし、その画像を表示しているだけだ。


◀左の図は筆者の社内での模式図だ。

筆者のように小規模な会社でも社内にPCが複数台あるようなところではこんな感じで複雑にLANが張り巡らされているのではないかと思う。

実際にこの環境でC1のキャプチャーパイロットをテストしてみたが、非常に不安定だった。接続はされるものの、スクロール中に落ちてしまうなど、トラブルが多かった。これは使えないか、と一瞬思ったが、以下の方法で解決した。



◀C1を使っているPCの直近のハブに無線LANアクセスポイントを増設した。

言葉で言うと難しく聞こえるが、つながっているハブにアクセスポイントをつないだだけ。

たったこれだけで安定する。もし、やってはみたけど安定しないという人はぜひ試してほしい。




◀ちなみに僕が使っているのはプラネックスのMZK-SA150Nという機種だ。

4,000円程度で買えるので1つ持っておくと便利だろう。秋葉原にいくとバルク品なら2,000円を切っている。たったこれだけで安定するのなら安いものだ。



上記の基本的なことを押さえた上でキャプチャーパイロットのデモをしたので、それを見てほしい。




◀動画では細部が抜けているので、部分的に解説しよう。

まずPC側で無線LANを指定する。左の例では上記のプラネックスのアクセスポイントを使うのでその名前を選択する。

余談だが、このように一時的な画像を見るだけの無線LANなら、パスワードを設定しない方が楽だ。プラネックスのMZK-SA150Nはゲームモードと言って、パスワードのないアクセスポイントが設定済みで、買って来た状態のまま使える。



◀左の画面はiPadの無線LANの設定だ。

「設定」の中の「Wi-Fi」で上記で選んだ同じアクセスポイントを指定する。



◀ C1に戻り、キャプチャーパイロットの中、「スタートイメージサーバー」のボタンを押す。



◀iPadのアプリ、「CapturePilot」を起動させ、最初の画面でC1でのサーバー名を選択する。



◀接続されればC1で使用中のサムネイルが表示される。

使い方は簡単なので触っているうちになれるだろう。そういう意味でも、撮影立ち会いに来たクライアント、デザイナーなど、一般人でも使えるアプリになっている。



◀CapturePilotでの公開を止めたい時はストップボタンを押す。



◀便利な機能としては、キャプチャフォルダ以外も公開できる点だ。

たとえば撮影したすべての画像を見せたくない時、セレクトしたOK画像だけ見せたいということはよくあることだ。その際はフォルダでキャプチャフォルダ以外を選択する。そうすればiPadから見えるのはここで選択したフォルダだけになる。

また、パスワードも設定できる。少しでもセキュリティを高めたい時はパスワード設定しておくとよいだろう。

無線の基本は「誰が使っているか分からない」ことだ。新製品の撮影などでは使わないという使い分けも必要だろう。



◀使ってみれば便利なキャプチャーパイロットなので、ロケでも使いたいと思うフォトグラファーは多いだろう。

最初に解説したアドホックモードで使うと言うこともできるが、安定感とスピードでは別途アクセスポイントを設定した方がよい。アドホックモードは万一の時のバックアップくらいの位置づけだ。

外ロケでもプラネックスのMZK-SA150Nは便利だ



◀僕はC1以外でもロケ現場で無線LANを使うことが多いので、左のように改造している。

電源が必要なMZK-SA150Nだが、簡単な電池ボックスをつなげば動く。これで電源のないところでも快適になる。


以上でキャプチャーパイロットの解説は終わる。

一度使えばその便利さにknock outされるはずだ。今ならクライアントも見たことがないので、撮影現場で仰天してくれることだろう。そういう意味でも面白い機能だと思う。

さて、今回はもう1つ、テストした結果があるので、それを報告したい。

バージョン6になってから、いろいろなフォトグラファーが「動作が重くなったような気がする」と印象を語っている。実際にそうなのかどうか?僕はそれが気になっていた。バージョンアップするごとに多機能になっているアプリケーションの常として、動作が重くなるのは、ある意味仕方ないこと。ただ、その重くなる理由がどこにあるのかが問題だ。多機能になったその機能を使わなければ動作は同じなのではないか? というのが僕の推測だ。

以下が僕の環境下でのテスト結果だ。

使用機材
MacPro(2006)
3.0GhzDualCore×2
メモリー4GB

キヤノン1Ds-mk2
RAW(CR2)100コマを
JPEG(画質100)へ

Phase One P45+
RAW(IIQ-L)10コマを
TIFF(8bit)へ

C1 ver.6.0.0(Trialversion)

11分55秒 2分15秒
C1 ver.5.2.1  11分03秒 2分15秒
C1 ver.4.6.1   1分35秒
C1 ver.4.1.1   3分00秒
C1 ver.3.7.9   2分54秒

MacProは初代のものだ。35のRAWデータで旧型のmk2を使っているのは僕の現像テストのベンチマークがこのデータだと言うこと。過去のMacと比べるとき、イーブンの環境を作るため、古いデータをそのまま基準にしている。

同じマシンでのテスト結果だ。OSがその時代とともに変わっているので、必ずしも平等な環境とは言えない。が、今回のバージョン6がとりわけ遅いわけでもないといえるのではないだろうか。

念のため、最新の2010年モデルでも計測した。

使用機材
MacPro(2010)
2.4Ghz 4core×2
メモリー6GB

キヤノン1Ds-mk2
RAW(CR2)100コマを
JPEG(画質100)へ

Phase One P45+
RAW(IIQ-L)10コマを
TIFF(8bit)へ

C1 ver.6.0.2 6分34秒 0分55秒
C1 ver.5.2.1 6分54秒 0分56秒

6と直近の以前のバージョン5.2.1の比較ではほとんど差がないという結果に。

この数字は現像時間のテストだけなので、動作感すべてを言っているわけではない。バージョン6には多くの新機能があるので、その中にはマシンパワーが必要な機能もあるだろう。それを使っていると動作が遅く感じる・・・というのが「6が重い気がする」の理由ではないかと、個人的には推測している。

次に同じMacProでも機種に寄ってのスピードが違うというテスト。

使用機材

キヤノン1Ds-mk2
RAW(CR2)100コマを
JPEG(画質100)へ

Phase One P45+
RAW(IIQ-L)10コマを
TIFF(8bit)へ

MacPro(2006)
3.0GhzDualCore×2
メモリー4GB
C1 ver.6.0.0

11分55秒 2分15秒
MacPro(2008)
2.8Ghz 4core×2
メモリー6GB
C1 ver.4.1.1
13分46秒 3分00秒
MacPro(2008)
2.8Ghz 4core×2
メモリー10GB
C1 ver.6.0.2
7分26秒 1分22秒
MacPro(2010)
2.4Ghz 4core×2
メモリー6GB
C1 ver.6.0.2
6分34秒 0分55秒

上記のように、新しいMacは速い、という当然といえば当然の結果になった。

2年ごとにメインのMacProは買い換えているのだが、最新型のクロックスピードが遅い点が気になって、買い換えをためらっていた。が、C1に関して言えば、「最新のMacが最善のMacだ」ということになる。買ったままの状態でこれだけ速いのは驚異的だ。

今回はこれにて終了。

次回以降、6の新機能も含めて、使い方を解説していきたい。


↑Page Top

| ご利用について | 広告掲載のご案内 | プライバシーについて | 会社概要 | お問い合わせ |
Copyright (c)2010 colors ltd. All rights reserved