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▲書籍「ブスの瞳に恋してる1〜3」(マガジンハウス刊/鈴木おさむ著)(クリックで拡大)
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●Photoshopによって独自の世界観を創出
−−飯田さんの作品を拝見して思うのは、明るさとビビットな色調。それが特徴的なのかなと思ったんですけども、飯田さんの中で昔からこういう傾向はあったんですか。
飯田:モノクロプリントにハマっていた学生時代を除いては、ビビッドな色、大好きです。
−−飯田さんがPhotoshopでよく使う機能は何ですか。
飯田:やっぱり彩度(笑)。トーンカーブ、彩度ですかね。
−−フィルター系などはあまり使わないんですか。
飯田:使わないですね。ちゃんと使いこなせてなくて、決まったいくつかの機能だけ、一部しか使ってないです。
−−ちなみに今は、完全にデジタルカメラですよね。機材は何をお使いですか。
飯田:今はニコンD3です。それと、広告などではPhaseOneのP45を借りています。
−−現像はどうされていますか。
飯田:ニコン、PhaseOneそれぞれの専用ソフトを使っています。
−−作業的には、RAWデータを現像してTIFFデータなどをPhotoshopに入れるという流れですか。
飯田:はい。
−−それぞれ専用の現像ソフトを使われていて、色味など自分なりの表現に落とし込む上で何かありますか。
飯田:ニコンはどうしても少し黄色っぽくなっちゃうんですけど、それも好きなので、生かしつつ使っていますね。広告などでPhaseOneを使うときは、レタッチャーさんが入る場合も多いので、その場合はレタッチャーさんが作業しやすいようなかたちで現像したり、そのままRAWで渡すこともあります。
−−撮影のときに、最終的にはPhotoshopでここまでもっていこうみたいなところで、頭の中にはイメージはすでにあるんですか。
飯田:そうですね。だいたいラフを描いて、それをもとに打ち合わせで決め込んで、撮影に向かう場合が多いです。だから撮影ではあれもこれも一応撮っておこうとはならずに、決めうちですぐ終わることが多いです。
−−最初にラフイメージを共有して撮るんですね。
飯田:雑誌や書籍などで任されるときは自分でラフを描くんですけど、広告などアートディレクターがいらっしゃる仕事はアートディレクターによるラフに合わせて撮ります。
−−飯田さんの写真は、世界観が特徴的ですけれど、モデルさんの表情を作るときとかは話しながらもっていくんですか。
飯田:だいたいこの顔表情をしてくださいって自分がやってみせて、それを真似してもらいます。ポーズもとりあえず自分でやって、鏡だと思って、同じようにしてくださいという場合が多いですね。でもモデルの撮影など自分で動ける人の場合は、自由にお任せしています。
−−Photoshopでよく使われる機能は彩度やトーンカーブというお話でしたが、今ご利用のPhotoshopは何ですか。
飯田:CS5です。
−−CS5になると、いろいろな自動機能も出てきていますが、そういうのをお使いになっていますか。
飯田:いいえ。CS6の体験版もダウンロードして、チュートリアルのビデオを見ながら試したのですが(笑)。CS6のボカシ機能は、使ってみたいとは思っています。
−−何か代表的な作品を例に、合成などの説明をお願いします。
飯田:例えば、鈴木おさむさん著書の「ブスの瞳に恋してる」の4巻が最近出たのですが、この表紙はガッツリ合成ワークしたものです。テーマ的には世界のお姫様シリーズなんですけれど(笑)、今回はオードリー・ヘップバーン。白ホリで人物を撮って。後ろの背景は布バックのありもの別で撮って合成。そこに花やスワロフスキーをどんどん合成していきます。あとは頬を赤くしたりとかですね。
−−お化粧も後からPhotoshopで施してるんですか。
飯田:基本的にメイクは撮影時にしてもらってるんですけど、より、目をキラキラさせたりとか、肌をツルツルにしたり、頬の赤みをより強調するとかは後からやってます。
−−基本は白ホリで撮って、後で処理ですね。だいたい同じ手法ですか。
飯田:このシリーズは、毎回テイストも一緒にしてやっているので。基本的に人物を切り抜きで撮って、バックを作り込む感じですね。
−−周りのモノは別撮りですか。
飯田:はい。ブス恋3の場合だと、アクセサリーのパーツなどを買ってきて撮って。5、6個組み合わせて使っています。
−−そうしてこれをレイヤーに乗せていく感じですね。
飯田:そうですね、はい。
−−「ブスの瞳に恋してる」はアートディレクションも飯田さんがご自分で手掛けられたのですか。
飯田:はい、写真に関してはそうです。
−−今は、どこまでが写真の仕事なのかという観点もあると思うんですけど、合成を自分で行うフォトグラファーは、世界観が確立していないとできないんですよね。
飯田:そうですね。ゴール決めとかないと多分エンドレスになっちゃいますよね(笑)。
−−そういう意味ではアートディレクション的な、デザイナー的な発想も求められますよね。画面構成や色の使い方など。
飯田:そうですね。撮影時に文字を入れるスペースなども考えたり。右ページなのか左ページなのかとか。
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▲書籍「ブスの瞳に恋してる4」(マガジンハウス刊/鈴木おさむ著)9月27日発売(クリックで拡大)
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▲映画「ラブ☆コン」。飯田が本編のアートディレクションも手掛けた映画。(c)2006年「ラブ★コン」製作委員会(クリックで拡大)
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▲映画「ハンサム☆スーツ」。同じく飯田が本編のアートディレクションも手掛けた映画。(c)2008年「ハンサム★スーツ」製作委員会(クリックで拡大)
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●切り抜きが課題
−−フィルムからデジタルに移行して、自分の頭の中にあるイメージというのは、表現しやすくなってきていますか。
飯田:フィルムの時代って、作り込みたい作品の場合は実際にセットを作らなければならなくて、背景のセットなどを美術さんに発注するとものすごく莫大なお金がかかって、なかなか実現が難しかった。デジタルはミニマムな中でイメージを実現できるので、表現はしやすくなりましたね。
−−実際のセットと合成と比べて、仕上がり的にやはりセットの方が豪華に見えるとかそういうことはありますか。
飯田:どうなんですかね。セットで撮ったことはあまりないので、比べようがないんですけど。でも、合成の方が、よりオリジナルの世界観も出せると思いますけれど。
−−Photoshopの中は自由ですもんね。
飯田:はい。ジオラマと合成することも、実物大のパーツと合成することもできますし、色を変えたり、位置を変えたり、要素を増やしたり減らしたり。すべてが自分でハンドリングできる分、世界観が作りやすいので個人的にはデジタルの方が好きです。
−−1つの作品を最終的な納品物に仕上げるのに、撮影してからPhotoshopで仕上げるまでどれくらいの時間が掛かりますか。
飯田:早ければ1日でできるものもありますが、レイヤーを何重にも重ねた凝った作品だと1週間かかるものも。
−−Photoshopを用いるのは、イメージをどう表現するかということですよね。そういう意味でPhotoshopに対して、こういった機能がもっとあればいいとか、リクエストはありますか。
飯田:うーん。切り抜きがやっぱりとにかく面倒くさいです(笑)。
−−そこは永遠のテーマですよね。
飯田:そうですね。それが一発でできる機能があったら、もっと早くできるのになとか、きれいにできるのにな、とかはありますね。
−−切り抜きが面倒だから髪の毛をツルッとして撮るとかそういうことはやってしまったりしません?
飯田:そうですね。急ぎの納品の場合など特に、フワフワの髪の毛やめてくださいとか(笑)。髪の毛が一番こだわっちゃいますね。
−−切り抜きもご自分でされるんですか。
飯田:レタッチャーが入らない雑誌などの仕事はほぼ自分でやるので、多分切り抜きに一番時間を取られていますね。
−−今は広告と雑誌の仕事の比率はいかがですか。
飯田:半々ぐらいですね。書籍やチラシ、CDジャケットなどもありますので、本当いろいろなジャンルで、広く浅く(笑)撮らせていただいています。
−−雑誌は女性誌が多いですか。
飯田:はい、10代20代のファッション誌、最近だとギャル雑誌とか美容雑誌。男性グラビア雑誌もやっています。基本はタレントさんの撮影が多いです。
−−グラビアなどですと、後工程をあまり施さない写真もけっこう撮られているんですか。それともほぼご自分の世界観で納品するんでしょうか。
飯田:基本、色の調整と肌のレタッチは絶対行って納品するのがポリシーですけれど、合成などの作り込みはないときもありますね。
−−でも、飯田さんの写真は、少し非日常的な作品に仕上げていらっしゃると思うので、合成したくなっちゃいますよね。
飯田:そうですね。例えばロケなどで、ここに雲がひとつあるといいんだけどなぁ、とかよく思ったりしています(笑)。
−−今ギャル雑誌は表紙がすごく派手ですよね。キンキラキンで。あそこまで作業されているんですか。
飯田:キラキラは基本的にデザイナーさんが盛るんです(笑)。納品するときもある程度盛って納品するんですけど、また盛られちゃうので、もっとキンキラキンになっちゃうという(笑)。
−−すごく派手ですもんね(笑)。
飯田:そうなんですよね。だから自分以上にもっと、頭の中がキラキラした人たちが作っているんだと思います。
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▲劇団ひとりさんとの共著「幸福論と。」より。2012年主婦の友社より発売(クリックで拡大)
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●コラボレーションの面白さ
−−飯田さんはすでに世界観を確立されていますよね。作家的な立場と商業的な立場の両面あると思うんですけど、今後どんなことをやっていきたいと思われますか。
飯田:作家的な立場だと、最近、劇団ひとりさんと一緒に写真詩集「幸福論と。」という本を出したんです。作品で人とコラボレーションしたのが初めてで、すごく新鮮で面白くって、とても良い経験でした。これからもそういう形で誰かと一緒に何か発信できるような作品作りを、これを機に続けたいなと思っています。
−−それはコラボレーションする相手が、また自分の別の側面を引き出してくれるとか、そういう効果を感じられたということですか。
飯田:写真だけだとなかなか伝えきれないこともありますが、言葉があるとよりメッセージを強く発信できたり、受け手にも世界を広げて見ていただけたりするので、本当に新鮮でしたね。
−−世界観がぶつかってしまったりすることはなかったんですか。
飯田:今回は写真が先にありきで、劇団ひとりさんが文章を書かれたので、ぶつかることはありませんでしたが、逆に、劇団ひとりさんが作業的に大変だったかと思います。
−−今後は別の方ともどんどんこういう形でお仕事をされたいですか。
飯田:そうですね。文化人でもアーティストでも、フィーリングが合う人と一緒にやれたら面白いですね。
商業的な立場では毎回楽しい仕事をさせてもらっていますが、いつか演歌歌手の方を撮ってみたいです(笑)。北島先生とか。わりと公言すると叶ったりするんです(笑)。さかなクンも撮りたいなと言ってたら機会をいただいたりして。
−−逆に、暗いキャラの人は撮りにくいですか。
飯田:いや、そんなことはないですよ。陰のあるイメージでも撮っています。明るくて合成した写真ばかりが目立っていますが、クールな写真も好きですし、合成しない一発撮りも撮ってるんですよ。
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▲いずれも作品「水中庭園」(2010年)のPhotoshopによる編集画面(クリックで拡大) |
−−好きな写真家とかアーティストとかミュージシャンの方はいらっしゃいますか。
飯田:写真家は、植田正治さん。鳥取砂丘を舞台にした砂丘シリーズが有名です。学生時代に見て、すごいドキドキして。モノクロフィルムで一発撮りなんですけど1枚の中で物語ができ上がっていて。絵のような写真なんですよね。とても美しい。ちょっと共通する面も僭越ながら勝手に感じたり。
−−いろいろなものが1枚絵の中に込められてるんですね。
飯田:はい。あとデビット・ラシャペルさん。それこそ本当にすごい有名人のポートレートばかり撮っていて、合成もしてるんですけど、世界観がアメリカ級というかダイナミックで、カッコいいんです。あと、フランスのピエール&ジルも夢があって好きです。
−−なるほど。植田正治さんもデビット・ラシャペルさんも、飯田さんがお好きな理由が分かる気がします(笑)。子供の頃の切り抜き、コラージュ。ある意味三つ子の魂百までみたいな感じですよね(笑)。それが、どんどん高度になっていったんでしょうか。
飯田:そうですね。幼少のときに影響を受けていた淡い記憶がPhotoshopというツールのお陰で鮮明に、一層華やかに成長しているのかもしれません。
−−どうもありがとうございました。
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