●PCJ Interview
・File10 酒匂オサム
・File09 P.M.Ken

・File08 高木こずえ
・File07 太田拓実
・File06 鈴木心
・File05 青山裕企
・File04 小山泰介
・File03 奥本昭久
・File02 常盤響
・File01 辻佐織

●Company File
・File08 アドビ システムズ
・File07 富士フイルム
・File06 駒村商会
・File05 ジナー
・File04 ハッセルブラッド
・File03 シグマ
・File02 フェーズワン
・File01 ライカ

●Overseas Photographers
・File08 Michael Kenna
・File07 Todd McLellan
・File06 Mona Kuhn
・File05 Diana Scheunemann
・File04 Albert Watson
・File03 Nick Meek
・File02 Rankin
・File01 Ron van Dongen

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Digital Tools




●震災をきっかけにフィルムという手段を捨てる

−−まずハードの話ですが、今までどんなカメラを使ってこられましたか。大学を卒業される頃は、もうデジタルカメラの時代ですよね。

鈴木:学生の初期は、ほとんどコンパクトフィルムのカメラでした。コニカのヘキサー、リコーGR1v、コンタックスT3などを使っていました。中でも一番使ったのはヘキサーです。大学1年の頃にはコンパクトデジカメを使っていて、その時すでに自分でHTMLでWebを組んで、カレンダーにその日撮った写真がスライドで入るというページを作っていました。

大学にはトヨフィールドがあったので、4×5かコンパクトかという極端な環境でした。中判カメラがなかったのですが、当時、夜の工事現場を長時間露光で撮っていて、4×5だとどうしても風や振動で撮れないのでペンタックスの67IIを学校から借り、、、(笑)。それからは4×5とPENTAX 67IIをメインで使っていました。大学3年の頃です。とにかく自分では買わないで学校にあるものは借りていました。

会社に入社して、初めてPhase Oneとキヤノン1Dsに触れました。当時はすでに9割がデジタル撮影でした。入社してからようやくローンでPENTAX 67IIを購入しましたが、今度はロケに行くときに重かったので、Makina67を買って、独立するときに自分への独立祝いとして国産の木製大判カメラEBONYを買いました。デジタル一眼は、独立した時に1Ds Mark IIを買いました。

1年半くらい前に5D Mark II、そしてつい最近Phase Oneを購入しました。311の震災後にフィルムのカメラを全部処分して、デジタルに切り替えました。そのとき、外部資源や環境に依存して撮っていくのが嫌になって。もう、地球が崩壊する直前までラボのこともフィルムのことも気にしないで撮影できる環境を作ろうと根本的な整備もしました。パソコンもラップトップをメイン機にしました。

−−震災が銀塩を止めるきっかけになったのですね。

鈴木:マチエールに依存した表現というのは撮るという本質とは別の段階の話だと思います。撮るという写真の本質にはむしろ制限や趣向性などは必然的ではなく、純粋「撮る」ための環境はむしろデジタルにあるのではないかと思います。

−−中判デジタルにPhase Oneを選んだのは何故ですか。

鈴木:一番の理由は、現像ソフトだったんです。アマナでは5Dや1DsもCapture OneとPhotoshopの組み合わせで使っていたので一番慣れていて、その流れでPhase Oneを選びました。

−−ちなみにPhotoshopはいつ頃からお使いでした。

鈴木:僕が小学生の頃に父がMacを持っていて、僕に使わせてたんですよ。だからみんながファミコンでテトリスやってるときに、僕はMacでテトリスやっていたんです(笑)。それで、高校に入って自分のMacを買ってもらって、そこにPhotoshopがバンドルされていた記憶があります。

大学では、写真はフィルムを使っていたので、スキャンした写真のゴミ取りにPhotoshopを使っていました。その頃はまだレイヤーの存在すら知りませんでした(笑)。

−−Photoshopで主に使う機能はなんですか。

鈴木:当時はレベル補正、トーンカーブくらいでした。スキャンした写真が全然違う色味になったときに、自動カラー補正を適用すると、自分が予期しなかったくらい良くなるんですよ(笑)。それで「うわ、かっこいい」って思って。フィルムのデータなのにホワイトバランスを調整してくれるので、この機能、使えるなって思いました。

あとは自分でいろいろ補正したり。実は写真集に反射原稿で入稿したものもあるのです。ネガがもうなくて、当時自分でPhotoshopで保存したJPEGの写真も入れているんです。あと写真集の原稿を作るときも色見本はPhotoshopで作ってインクジェット出力のものです。それを見本に印画紙で焼いてもらいフィルムの色に近づけていきました。

−−写真集表紙の公園の親子の写真がありますが、いつ頃の写真なのですか。

鈴木:あれは、大学4年ですね。浜辺の水着撮影会もその頃で、今振り返ると、あそこは福島の浜辺です。

−−たしかご出身も福島なんですよね。

鈴木:そうです、郡山です。福島出身というと、観光資源の豊な県ではないので、前まで説明が難しかったのですが、今では海外の空港でも入国審査などで「FUKUSHIMA」と書いてあるが大丈夫なのか?」と言うくらい有名になってしまったのが複雑ですね。




▲2011年の震災は福島出身者として他人事ではない。桜の咲き乱れる宮城県気仙沼市(クリックで拡大)

▲見渡す限りの更地。手前には父が写っている。岩手県陸前高田市(クリックで拡大)

▲自然は無関心にいつも通りの姿を繰り返す。夕焼け。宮城県気仙沼市(クリックで拡大)



●Photoshop Lightroomを使って

−−今回、Lightroomをお使いいただいたのですけれども、まずインプレッションをお聞かせください。

鈴木:Lightroomを使ってみて一番感じたのは、現場で使うというよりは落ち着いてじっくり使うツールという印象を持ちました。なぜならば大きなメニューが3つに分かれていて、さらにそれを開いた各パラメータにアクセスするにもツールバーになっていたりショートカットがなかったりしていたので。

そういう意味ではCapture Oneはカメラの領域なんです。現場でカメラと一体となって操作するので、ショートカットの多さや、パラメータの配置もカメラのコントロールパネルのように直感的で、もはやソフトもカメラの領域になってしまったのです。

−−Lightroomでも連結撮影ができますが、まだそういう風には使われていないのですね。

鈴木:そうですね、一番大きな問題はメインマシンであるPhaseOneのテザー撮影がサポートされていない点です。ツールの配置など操作性はメーカーによって個性があるじゃないですか。そういう点でLightroomはまだ使い慣れていないので、撮影現場での評価はできていない状況です。

それと、みなさんおっしゃると思うのですが、Lightroomはコンタクトシートを直感的に配置出力できる点がよいですね。さらに過酷な状態で撮影されたデータなどを広告写真などに使用する場合、Lightroomのノイズリダクションはとても助かる点です。僕がLightroomを使っているところを見て、一緒に仕事をしているレタッチャーが、ここまでノイズ消せるのはすごいと衝撃を受けていました。

−−鈴木さんのデジタルカメラにおけるワークフローは、Photoshopで仕上げるのですか。

青鈴木:そこの役割はしっかり分けています。撮影データの補正はカメラをドライブするソフトの仕事だと考えています。傾きや色温度などの補正は本来であれば現場の撮影の段階でできることだからです。なのでPhotoshopで行うのはその補正されたデータの合成と修正、と役割は分けて考えています。

−−合成と修正はPhotoshopで、補正はキャプチャーソフトで行うという役割分担は分かりやすいですね。Photoshopを使う場合は作品より、仕事メインですか。

鈴木:そうですね。作品制作においては、Photoshopもキャプチャーソフトも、自分の中では使っちゃダメって感じですね(笑)。撮る瞬間に全部終わらせないと、後で補正や修正を始めたると切りがないです。そこはフォトグラファーとして、現場での自分のポテンシャルを最大限に引き出すようにしています。仕事で合成や修正を行う場合、仮組みは自分でPhotoshopを使って検証のためにやりますけれど、仕上げはプロのレタッチャーにすべて任せています。

−−合成に使う機能は、具体的に何を使っていますか。

鈴木:ペンタブレットを用いて、マスクしてブラシで抜いて合わせてという方法が一番多いですね。あまり細かい作業をすると、写真っぽくなくなってしまうので、ブラシでムラを残して、それをラフとして渡します。暗室では手で作業していたので、ムラ感が損なわれるのがもったいない気がして、Photoshopでも暗室の延長線上でできるところまでしか詰めません。

−−Photoshop CS5では「スポット修復ブラシツール」や「コンテンツに応じた塗り」などの機能がありますが、そういった自動機能はお使いになっていますか。

鈴木:そういった機能を活用しなければいけない作業というのは、もはや一回性の写真の域を超えているので、クライアントにとって邪魔な電線を消したり、肌の修正をしたりするのはレタッチャーの作業と考えています。レタッチャー曰く、自動機能はあれば便利だけれど、それに完全に任せるのではなくて最終的に自分が判断すると聞きました。

−−なるほど。レタッチャーが入ることで、作家とは別の視点が写真に入りますが、そのあたりは気になりませんか

鈴木:信頼できるレタッチャーといままで一緒にやってきているので、彼らでしたら任せて問題ありません。僕はデッサンができる人じゃないとレタッチはお願いしないようにしています。合成や修正を行う際、写真上の整合性を保つためには光の方向性を理解できないと絵が破綻してしまいます。特に僕のような、絵ではなく写真という範疇内にできるだけ仕上げを収めたいと考えている場合、ちょっとでも違う方向からの光が混在したり、陰の濃度が矛盾していたりすると、整合性がとれなくなってしまいます。あと暗室作業をしたことがある方だと自分の思っているラフさを想像してもらえるので助かります。

今は2人のレタッチャーにお願いしています。自分の特性を分かる人と出会うのはある意味運命の人を探すくらい大変だと思います。フォトグラファーとレタッチャーは撮影から仕上げにおいて一心同体です。

−−やはり餅は餅屋でPhotoshopを使うならレタッチャーということですね。

鈴木:それぐらい精度を上げると時間がかかり専門性の高い仕事です。撮影はカメラマン、レタッチはレタッチャー。広告のビジュアルなど、合成や修正がある仕事は、フォトグラファーとレタッチャーはチームを組み取り組みます。

−−カメラマンはレタッチャーにはなれない?

青鈴木:なれるとは思います。ただ時間がものすごくかかるので、撮影数は減ってしまうのではないでしょうか? 僕はそういう画面に向かう作業が不得手なので自分でレタッチしようとは毛頭思いませんが、カメラマンでもシャッターを押さずにデスクに座って、キャプチャーソフトを見ながら「もっとライトこうして」と現場に指示するだけの方もいらっしゃると聞きます。将来的にこういったフォトディレクターになっていくのかもしれませんね。




▲代表的な仕事より、キャンディーズの解散ライブをモチーフにしたTOTOBIG(2011年)(クリックで拡大)

▲家から出れない状況を徹底的に作り出しネットショッピングを勧めるiLUMUNE(2008年)(クリックで拡大)

▲絵画「最後の晩餐」を彷彿とさせる、密室の殺人劇、映画「インシテミル」(クリックで拡大)



●ソフトが拓く写真表現の可能性




▲現状ではLightroomの稼働はさまざまな写真データをセレクトする時(クリックで拡大)

▲Photoshopでレタッチャーが作業している画像(クリックで拡大)



−−最後に、PhotoshopやLightroomでこういった機能が欲しいというのはありますか。

鈴木:今、一眼レフにマウントをかませて、ヴィンテージのレンズなどで撮影するのという手段があるようですが、Lightroomに昔のレンズのパラメータを持たせて、それをプラグインで呼び出せてレンズ描写や特性をRAWデータに乗せることができる機能があるといいですね。ひいては引き延ばし機の周辺光量の落ちや引き延ばしレンズの描写などもシュミレーションできれば、もはや暗室はいらないという次元になるでしょう。

これまでは実機を買わないとできなかったことがソフトウェアで補われていくということは、僕はもっとっ進めるべきだと思います。貧富の差関係なく、いろいろ人が同じ道具を使えて、フラットな勝負ができるようになっていきますから。

−−確かにiPhone用アプリにインスタグラムなどがありますが、実機を買うと数万円のインスタントカメラの風合いがiPhoneでは数百円ですよね。ソフトウェアでできてしまうことを象徴しています。カメラの世界も、ハードウェアの進化とは別にソフトウェアでいけてしまう時代になってきています。

鈴木:音楽は結構前にパソコンの中で物理演算して、ピアノの音をその空間とともに設計できたり、入手困難になったアナログのビンテージ機材をかなり安価にシミュレーションできるようになっています。

写真もデジタルカメラという道具が一般化したので、ソフトウェアはそういう方向に一気に走っていいと思うんですよね。Lightroomも名前どおり暗室の再定義なのですが、新しい概念とともにシミュレーションまで突き詰めていってもらえると、写真表現の可能性はさらに広がると思います。


−−ありがとうございました。


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