このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
髙田茂和(Shigekazu Takada):1976年東京生まれ/東京都葛飾区在住/イラストレーション青山塾修了。フリーで広告、雑誌、Webなど各種媒体イラストレーション制作を行っております。
http://da-factory.com/
●作品について
2016年4月、初の個展を開催しました。
4月4日~9日「SPACE YUI」
4月18日~28日「YUI GARDEN」
この作品は展示作品の1つで、個展の案内状でも使用したものです。「日常の中にある小さな喜び、ささやかな幸せ、美しい情景」そんなテーマを込めた1枚です(画像A)。
個展の内容はこちらでもご覧いただけます。 http://spaceyui.com/schedule/takada_16.html
(画像B)
●ワークフロー
手描きの線画をスキャンしてPhotoshopで彩色するという方法です。
アイデアスケッチやラフの線を紙を重ねて何度も描き直し、ある程度コレという形が見えてきた時点で一度スキャンします。
今回は個展全体を1冊の絵本をつくるようなイメージで考えてみました。 まず大まかなプロットをつくり、本で言うところの表紙にあたる作品というイメージで構想を練りました。 絵を作るヒントは言葉から生まれることが多いと思います。
この作品には「心地よい風 読みかけの本 私のある日。」という言葉が先にあり、そこからビジュアルを想像していきました(画像C)。
ラフの段階で構図や大体の色味をかなりしっかり決めていきます。特に手や立ち姿のバランスは表情以上に人物の感情や雰囲気を伝えます。微妙なポージングなど自分のイメージに近いものを探っていきます。
構図やバランスなどがきまったら、ラフ画を元に清書していきます。この絵は比較的パーツが少ないですが、大体背景や人物、その他の小物などパーツごとに描き分け、PC上で微妙な調整ができるようにします(画像D、E)。
最終的な完成データでは使わないパーツも描いています。また別に地面と壁を分ける1本の線も追加しています。 単純にシンプルな表現を、ということではなく、絵の中で説明をしすぎないこと、見る人に想像する余地を残すような、作り手(自分)と見る人のちょうど真ん中あたりにポンと置くようなものが描けたらと思っています。
●使用ツール
油性ペン、コピー用紙、Photoshop、Mac mini
●ジークレープリントで出力
今回の個展はB2サイズ~B3サイズのポスターという形式で作品を制作しました。 展示作品の出力はMIKA製版株式会社さんのジークレープリントです。
DMやパンフレットはオフセット印刷で制作したので、それぞれまったく色の出方が違ってきます。 とくに展示会の「顔」にもなるこの作品の「青」はジークレーとオフセットの色の出方の差を最小限に抑えるため、MIKA製版株式会社さんの担当者さんと打ち合わせをしながらオフセットの色味と違和感のないよう、色味補正をしてもらい出力しました(画像F)。
●日常にある「小さなこと」を描く
また、1枚1枚の絵の色ということだけでなく個展会場全体のバランスという点にも注意を払いました。
そして全体を通して見た時に、たとえば1つの物語、あるいは1年の季節、そんなものを感じてもらえたらと考えました。
普段私たちの生活の中で何気なく見ているもの、当たり前のように過ごしている毎日の中にある「小さなこと」。
それは今回の個展だけでなく、これからも自分自身が描き続けていくテーマだと思っています(画像G)。
次回はコバヤシ麻衣子さんの予定です。
(2016年6月17日更新)