このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
惣田紗希:1986年栃木県生まれ。桑沢デザイン研究所卒。グラフィックデザイナーとして、cero、ザ・なつやすみバンドなど数多くの音楽家のジャケットデザインを手掛けるほか、イラストレーターとして書籍や雑誌、国内外で活動中。
http://soudasaki.tumblr.com
4人組のバンド、ザ・なつやすみバンドの2ndアルバム「パラード」のジャケット。デザインとイラスト両方を手掛けていますが、今回はイラストの制作過程をお話していきます。
●構想
音楽家のイメージとラフ音源を聞き、歌詞を読み、どんなものを描いていくか相談していきます。1stアルバムからイラストを描いていて、イメージキャラクターになりつつある「女の子」をメインに、収録曲「鳥は舞い降りた」からイメージして「鳥」、メンバーが好きで、私自身もよく描いている「植物」を描くという方向に決定。
賑やかな雰囲気に合わせて、それらの要素をごちゃまぜに組み合わせていきつつ、タイトルの「パラード」という文字も絵の中の空間の1つの要素として描いていきます。
●使用ツール
ピグマグラフィックペン、アクリルガッシュ、水彩色鉛筆、Photoshop CC
●(1)ラフ(写真1)
CDジャケットの表1~背~表4のテンプレートに合わせて下描き。この時点でどの人がどうなっているのか自分でも分からなくなるので、下描きをスキャンしてPhotoshopでラフに色分けをしていきます。
●(2)線画(写真2)
ラフを音楽家に確認して、線画を描き始めます。ラフをプリントアウトしてトレース台に置き、それをトレースしてそれぞれの人の動きと線を決めていく作業を何度か繰り返し、最終的にペン入れをします。この時点で改めてテンプレートに当てはめて微調整をします。確認してOKが出たら彩色へ。
●(3)彩色(写真3)
今回は線画と色を分けて最終的にデジタルで統合していくので、線画とは別に、線画をイラストボードにトレースダウンして、色を置く部分だけアクリルガッシュで着彩していきます。
●(4)スキャニングと調整(写真4)
線画と彩色をそれぞれをスキャンします。線画は線を整えて、彩色はCMYK用に色味調整、トレースダウンで残った余分な線を消します。線画と彩色のレイヤーを重ねて、ズレをやはみだしをデジタルで調整。彩色に合わせて線画の色を決めていきます。色々な要素が組み合わさっていても、手前と奥を明確にして奥行きを出すため、それぞれが重なり合う部分に白ヌキのラインを入れていきます。最終的にレイヤーを統合してイラストデータ完成。
●(5)トリミングと完成(上の写真A、B)
テンプレートに合わせてトリミング、文字要素をデザインして完成。
ジャケット内側のイラスト(写真B)は、表1~表4の中でぎゅっと集まった要素が散らばっていくイメージで、イラストが配置されるページの歌詞に合わせて描いています。
手順は(1)~(5)+微調整の繰り返し。作業量は多いですが、曲を作り演奏している音楽家たちと直接やり取りをしてイメージを共有しながら制作していくのはとても面白いです。
次回は柳智之さんの予定です。
(2015年10月1日更新)