このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
大橋裕之:漫画家。1980年生まれ。愛知県蒲郡市出身。単行本「音楽と漫画」(太田出版)、「シティライツ」全3巻(講談社)、「夏の手」(幻冬舎)、「遠浅の部屋」(カンゼン)、「ザ・サッカー」(カンゼン)、「太郎は水になりたかった」第1巻(リイド社)。CDジャーナル、TV Bros.、EYESCREAM、トーチweb、LIVERARYなどに連載中。
http://blog.livedoor.jp/ohashihiroyuki/
●絵を決める
まず最初に自分に何が求められているのかを考えます。僕の場合、線やキャラクターの目が特徴ではあるので、それらを活かすことを念頭に置きます。
あとは、フライヤーが完成してライブハウスなどで他のフライヤーと一緒に並んだ時に、なるべく目立つものになることを意識します。
今回、絵に関しては依頼者から特に指定がなかったのですが、イベント名が「ファイトクラブ」、2組のロックバンドが対決するようなイメージだということもあって、「戦い」、「ケンカ」、「ヤンキー」、「バトル」、「少年ジャンプ」、「北斗の拳」などを思い浮かべながら、まずは適当にいらない紙の裏にボールペンでラフを描きました(図1)。
●文字情報を入れることを考える
今回は、わりと文字情報が多かったので、どのように文字をはめ込むのかを悩みながら絵を決めていきました(図2)。
●絵とデザインの決定
やはりどうしても文字数が多いので、絵はシンプルに、キャラクターをひとりだけ置くことに決めました。
北斗の拳が好きなのと、制作直前に映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観たこともあって、鎧的なコスチュームをまとわせることにしたのですが、基本的にアホっぽいものが好きなので、なるべく適当な鎧にしました。
絵だけインパクトがあってもイベントフライヤーの意味を成さないので、出演するバンド名を目立つ場所に配置することにしました(図3)。
ちなみに先程ラフで載せたボツ案は、いずれ別で使えたら使うかもしれないので一旦皆様の記憶から消してください。
●使用ツール
鉛筆、油性マジック
●ペン入れ
鉛筆で何となく下描きをしてから、細い油性マジックで線を描きます。
あくまでアホな感じにしたかったので、鎧に無駄な装飾は施さず、腰にひょうたんを1つ付けました。あと何を考えてるか分からない微笑みを浮かべさせました。
スキャンしてPhotoshopでゴミ取り、色調補正(図4)。
●文字情報を入れる
プリンタ用紙に油性マジックで文字を書いてスキャン。文字修正。Photoshopで配置。
一番目立たせたいバンド名は、絵と同じ細い油性マジックで書いて目立つ場所に配置します。
フライヤーを見た人は、そのバンドに興味があれば日程や場所などの他の情報は自然と目で追ってくれるはずなので(僕がそうなので)、他の文字は細い筆ペンで書きます。
何だか寂しかったので「来いよ」と喋らせました(図5)。
●色を付ける
着色は、やり過ぎて失敗しないかを念頭に置きながらPhotoshopでシンプルに着色して完成。
自分的には、ゆるいながらもインパクトは出せた気はしますが、手に取ってくださったお客さんがどう思ったのかは謎です(図6)。
次回は堀道広さんの予定です。
(2015年11月26日更新)