このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
オカヤイヅミ:イラストレーター/漫画家。1978年生まれ。漫画家として歌人/作家の加藤千恵さんとの共著『ごはんの時間割1・2』単著に『すきまめし』『続・すきまめし』『いろちがい』。イラストレーターとしては小説の装画や雑誌のカットなど。趣味は自炊。
http://www.hasumukai.jp/
●イラストの依頼内容
角川書店の月刊PR誌「本の旅人」にて連載されている群ようこさんの「うちのご近所さん」という各話ごとに主人公の個性的なご近所さんが出てくる小説の第1話用の扉絵です。
1話目なので主人公の姿は大きめにしてご近所さんをチラリと、という依頼でした。主人公は親しみのわく人に、登場する「ヤマカワさん」という好奇心旺盛な(というかまあ物見高い)中年女性の遠くからでも分かる視線を描こうと思いました。
●使用ツール
2B鉛筆、アクリルガッシュ、Photoshop
●制作手順
(1)ラフ
コピー用紙に芯ホルダーに2Bの芯を入れ構図やキャラクターの造形を考えながら紙を変えて何枚か描きます。だいたいの構図が決まったら、ライトボックスでラフを何度かトレースしながら細部まで決めます。
(2)ラフチェック
編集者さんにチェックしてもらいます。基本的にはOKが出て、「ヤマカワさんには『ピンクの大きな格子の上に、クマちゃんの柄がついた、毛布みたいなガウン』を着せてほしい」というリクエストが来ました。
(3)彩色
ラフをトレース台に置き、画用紙にアクリルガッシュで色を置いていきます。
色ははじめに絵の具を見てこの場合5色に決めました。基本的に混色はしません。
全体の色のバランスを見たいので広い面積・強い色(この場合コートの黄色、髪の毛・バッグ・靴のオリーブグリーン)から塗ります。背景と人物は同時に描き進めます。細部の形などは資料を見ながら調節しつつホワイトで修正したりもします。ある程度広い面積を塗ってから漬けペンにカラーインクで線を描く作業と絵の具で細部を描く作業を何度か行き来し、ピンクの格子とクマちゃん柄もここで入れます。
(4)スキャニングと調整
Photoshopからスキャニングし、データ化します。細かいゴミは取りますが、絵の具の風合いを損なわないようにします。絵の具の鮮やかさはスキャニングからCMYKへの変換で薄れたり色相が変わってしまうことが多いので彩度・色相・カラーバランスをいじったりトーンカーブで調整してヤマカワさんの濃いめの化粧が際立つようにくっきりさせました。。
(5)トリミング・入稿
実寸よりも少し大きめの画面に描いており、さらに解像度を高めにスキャニングしているので、ここで入稿用の画面サイズの新規書類を作り、調整した画像をペーストして大きさと構図の微調整をします。手前の主人公マサミと奥のヤマカワさんの位置がわかりやすいように、マサミの足先を少し切りました。
(6)掲載
ロゴやクレジットを入れて掲載されます。印刷されるのはやっぱり嬉しいものです。
次回は森泉岳土さんの予定です。
(2015年7月30日更新)