このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
西村ツチカ:漫画家。2010年、短篇集「なかよし団の冒険」(徳間書店)でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞。他の作品に「かわいそうな真弓さん」「さよーならみなさん」がある。
http://tsuchika.exblog.jp/
小説「気障でけっこうです」のカバーイラストです。
最初に、打ち合わせをしました。
編集者さんとデザイナーさんが、お2人とも、自分の漫画やイラストを知ってくれていて、「アレみたいな感じで描いてください」と、ていねいに指定してくれました。
大事なポイントは4つありました。
・作品に登場する人物やアイテムをたくさん描く
・不思議な雰囲気
・表1表4にまたがった大きさ
・主人公の女の子がよく目立つ
それから、もういっこ付け足して
・でも、作品に登場してない物も、描いてもまあOK
と言ってくれました。
そこで木をど真ん中に描きました。作品には登場しませんが、自分が描くのが好きなので、描きました。
無事に本が出版されたあと、打ち上げの席で、編集者さんに「なんで木を描いたんですか?」と聞かれました。
木を描くのが好きなんです、と言いました。
・使用ツール
墨汁、Gペン、上質紙、Photoshop
・ワークフロー
Photoshop(下描きの下描き)→プリントアウト→下描き→ペン入れ→Photoshop(スキャン、着彩)。
・絵のポイントや使用したテクニック
作品に登場するアイテムをたくさん描くので、そのために、作品をちゃんと読みました。
本を読むスピードが遅いせいで、だいぶ時間がかかりました。
「不思議な雰囲気」を出すために、考えました。
以下のようなものを描きました。
・顔が大きい
・滑り台の階段が細かい
・遠くの物が大きい
・ブランコのチェーンが天へ伸びている
・女の子が持っている傘がアパートの屋根より上にある
・煙をはさんでブランコの右側と左側がずれている
・滑り台が長い
・木の枝が傘の骨にからまる部分がヘン
こうすると不思議な感じが出るかな? と思って、工夫しました。ところどころ、手作りっぽい質感を出したいと思って、また考えました。わら半紙をスキャンして貼り付けました。
そういう感じで、描き上げて、納品しました。すると「赤い傘を、もっと赤くしてください」と差し戻されました。赤い傘は、作品の中で、重要なアイテムだったのでした。
赤い傘をもっと赤くして、もう一度納品しました。それでOKをいただき、完成しました。
装丁では、デザイナーさんの提案で、ブランコのチェーン部分に銀の箔押しがなされました。
豪華な仕様となりました。
次回は高橋由季さんの予定です。
(2015年4月10日更新)