このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
堀 道広:うるし漫画家。1975年富山県生まれ。単行本「青春うるはし!うるし部」「耳かき仕事人サミュエル」「部屋干しぺっとり君」(青林工藝舎)「パンの漫画」(ガイドワークス)。「アックス」(青林工藝舎)を中心に「POPEYE」「北日本新聞」などで連載。都内近郊で「金継ぎ部」という金継ぎ(陶磁器のつくろい)ワークショップの部長も務める。
http://michihiro.holy.jp
●打ち合わせ
まず打ち合わせでクライアントの希望を伺います。
今回は清水ミチコさんの事務所サイド(ご本人も同席)が、「お任せ」ということで、特に指定はありませんでした。個人事務所なので、意外とご本人も直々に立ち会ってくれるんですね。緊張して気がつくとなにも喋ってなかったので、家に帰ってから数日落ち込みます。
ポスターの印刷・デザインも込みで頼まれましたが、自分には印刷、制作の知識がないので、友人のデザイナーの力を借りることにしました。
●ラフをたくさん描く
机に向かってラフを考えます。念頭に置いたのは、「え、こんなのが武道館のポスター? 笑」というギャップ感というか、より情報としてパンチのある絵、口伝でも話題になって宣伝になるような絵を思索します。
漫画だと数ページを費やし伝えられる情報を、1つの絵で伝えるためにどのくらいのものを出せば良いのかも、ちょっと考えます。公民館のチラシをイメージしたり、「一人フェス」の公演名だけは決まっていたので、「一人祭り」的なイメージを描きました。
私はできるだけたくさんラフを先方に投げて、選んでもらうやり方です。通常は3案くらいでいいと思うんですが、今回は頑張って描いてしまいました(図1)。
最後の方はアイデアに困ってわけのわからない混沌とした感じのラフもあります。
●使用ツール
鉛筆、コピック
●ラフの決定、清書
ラフ11点のうちから選んでもらって「8」が良いとのことなので、清書します(他のものも、ツアーグッズのクリアファイルになったり、お土産の手ぬぐいの絵柄になったりしました)。
清水さん直々に「ラフのヒョウ柄が良い」と言われたような気がしたので、その部分を拡張して「ヒョウ柄」「野生」の部分を拡げることにしました。
けっこう、ラフと全然違ってこうなってしまいました(笑)(図2)。全然違うので怒られることもあります。私は、清書も何回も描き換えをするので、清書も鉛筆で描いています。
色はトレーシングペーパーをかけた上からコピックで塗っています(図3)。
手描きの線画とトレペの色画をphotoshopで合成します。
デザイナーの友人との話し合いで、文字まわりにいくつか絵が入りました。
ポスターはB2の大きさで大きいのでバランス的に、小さい遊びのある絵も入れました。
文字情報は、デザイナーの友人頼みでいい感じに配置してもらいました。細かい修正をして完成です(図4)。
次回は川崎タカオさんの予定です。
(2015年12月24日更新)