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このコラムでは、毎回1人のイラストレーター、絵師の皆様に旬の作品を見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Illustrator FILE 02:ひな姫

神吉
「コミック『愛・リンカー』のカバーイラスト」

ひな姫(ひなき): 奈良県出身。漫画家&イラストレーター。「月刊少年マガジンGREAT」でデビュー&連載。カプコン、モンスターハンター・アンソロジー・シリーズ。竹書房「月刊キスカ」連載。単行本に「あまはら君+(あまはらくんたす)」「愛・リンカー(らぶりんかー)」。その他、版権物のSDイラストなども制作している。
http://hinaki.wix.com/blue-biosphere

●今回とりあげる作品と制作ツール

制作ツールは以下のとおりです。
Windows 7 (64bit)、液晶タブレット+キーボード(コントローラーではキーが足りないので)。ソフトは「CLIP PAINT STUDIO EX」 (ラフから彩色まで)
「Photoshop CS5.1」(最終的な色味の調整)。
このイラストは完成形です。

●描くきっかけ

竹書房「月刊キスカ」で連載された漫画が、2014年夏にコミックになりました。夏発売ということで、白を基調とした爽やかな印象を持つ表紙にしたいと考えました。

●制作のワークフロー

1. ラフ作り
まず”初見の読者の方に与えたいメージ”を決めます。 今回のキーワードは”夏、白、水、可愛らしい”にしました。コミックカバーに必要なイラストは4点ですが、それぞれにつき数点ラフを用意します(この時点でロゴデザインなどは仮置きです)。

2. 下描き
編集さんと打ち合わせてラフを絞込み、決定したものを下描きします。 この段階で再度チェックしてもらうので、丁寧に描きます。


3. 清書と彩色
デザイン時に取り回ししやすいように、キャラクターの全身を描きます(重なりあって隠れてしまうところもすべて描きます)。線画はパーツごとに色を変えたり、ガウスをかけたりするので、それぞれ別レイヤーにし、キャラごとにフォルダにまとめます。

 

4. 着色
そして、黙々と色を塗ります。最後にデータをPhotoshopに移し、CMYKでの色味を調整。それぞれが独立した、シール状態の素材ができました。実はこの段階では”水”のイメージが、緑のイメージに変わりました。

5. デザイン
次にデザイナーさんと装丁の打ち合わせ。できた素材を元に、ロゴの方向性(書体の太い細い、縦書き横書きなど)やカバー の色味について打ち合わせをします。色味については、特に肌色がくすまないように自分の好きな印刷物をサンプルとしてお見せしました。また、この段階でピンクの色合いを足して、ポップな可愛らしさを強調しようという方向になりました。


6. 仕上げ
その後、デザイナーさんがロゴ等を作成し‥ 初稿がこちらです。タイトルロゴが沈んで見えるので、目立つように修正していただきました(完成形では白く光らせています。基調とした白を増やすことによって、より爽 やかなイメージが強まったと思います)。さらに細部の微調整もしていただいて完成です。




●仕事の進め方のポイント

私の場合、特にテクニック的に突出したものはないので、仕事の進め方において気をつけたことをまとめます。コミックのカバー作成は漫画家、編集者、デザイン事務所、印刷所などの共同作業なので、なるべく自分のイメージが共有できるよう、作業がスムーズに進むようにと考えました。

具体的には、
・デザイナーさんには最初に直接会いに行って方向性を綿密に話し合う(ここを曖昧にすると、後々大きなズレが出てしまいます)。

・素材をデータでやりとりする際に、ファイル名に日付・担当者名・内容などを入れ分かりやすくする。
例:20141025to(担当者名)様_愛リンカー_単行本表1.zip

・複数画像がある場合は、PDFでまとめて全体を把握しやすくする。

・ メールの返信はなるべく早く、1~2時間以内を理想とする(返信に時間がかかるようなら、その旨を一報入れる)。

デジタル機器の普及によって、プロならば誰でもある程度のクオリティが保てる状況になりましたが、その分「締切を守る(スケジュール管理をきちんとする)」「音信不通にならない」など、基本的なことがより重要視されるようになっていると感じています。

この業界に入って分かったのは”絵が上手くても、人と仕事ができない→故に 仕事が続かない”という方が意外に多いということでした。自分もそういう人間だったのですが、きちんとするように心がけてからは、徐々に仕事が回るようになってきたと思います。 最近はスマホがあれば、外出先でも簡単なデータの確認ならできますし、長文 メールも書けます。そういうツールを使いこなして、各担当の無駄な待ち時間を省くのも大事だと思いました。

余談ですが、私は仕事でお会いする方には必ずイラスト入りの名刺をお渡ししています。ポートフォリオを見てもらうにはそれなりの段階が必要ですが、名刺は会って最初に必ずお渡しするものなので、自然と目に入るようです。そして「裏に略歴があります」と一言添えると良いかと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。



次回はあずまよしおさんの予定です。

(2015年1月5日更新)

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