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Designデザイン

Interview

趣味・嗜好、流行、昔好きだったもの…
それらが無意識下に組み合わさり、
オリジナルになってくるのでは

Designer / Art Director

佐藤大介/株式会社サトウデザイン

大阪で主にグラフィックデザインの仕事を手がけるデザイナーの佐藤大介氏。多彩なクライアントへの対応、紙もWebも行うオールラウンドな活動だが、氏のベースには1970年台に活躍していたデザイナー、イラストレーター、ミュージシャンの影響が垣間見えた。

1982年鳥取県生まれ。2005年成安造形大学卒業。デザイン事務所、広告代理店勤務を経て2010年独立。2012年9月、株式会社サトウデザイン設立。全国カレンダー展(2014年)「金賞・国立印刷局理事長賞」受賞。Gregor international calendar award 2015「Bronze prize」受賞。社団法人日本グラフィックデザイナー協会会員。ポスター、CI、Webなどグラフィックデザイン全般を手がける。
http://www.sato-design.jp

10代の頃の興味、影響を受けたアーティストやミュージシャン
--佐藤さんは現在32歳とのことで、プロデザイナー歴約10年になりますが、まずはじめに10代の頃や学生時代に関心を持たれていたことを伺います。
佐藤 : 学校は滋賀県の成安造形大学です。もともと映像や舞台芸術に興味がありました。寺山修司さんの「書を捨てよ、町へ出よう」「田園に死す」などの映画を知って、映像、台詞、音楽いずれもカッコいいなと思いました。その流れで粟津潔さん、横尾忠則さんの作品からも影響を受けました。 それと藤子不二雄さんやガロ系のつげ義春さんとか、漫画も好きでした。小説では、江戸川乱歩も好きでしたね。
--いずれも1960〜70年代の若者、佐藤さんよりけっこう上の世代の人たちにとってのリアルタイムな表現ですね。アニメやゲームなど、佐藤さん世代のリアルタイムにはあまり関心がなかったのですか?
佐藤: 最初パンクやプログレ、ジャーマンロックなど70年代の音楽が好きだったんです。たぶんBSで昔の音楽特集を放映していて、それがきっかけだったと思います。それから調べはじめて、当時のいろいろな表現に触れていきました。
--そういった昔の表現に反応された佐藤さんの感性は意外と珍しいです。同世代の方にはあまりいなかったのではないですか?
佐藤: ノイズや音響系の音楽も好きで聴いていましたが、そういった音楽が好きな人は周りにいました。そういう人は昔の音楽も好きで、詳しかったので、周りからの影響もあったと思います。
--なるほど。温故知新的なスタンスなのでしょうか。現在はグラフィックデザイナーですが、もともと映像、音楽系のクリエイターを指向されていたのですか?
佐藤: それもあいまいでした。高校は特別進学クラスで、夏休みは大学受験のための勉強合宿があるようなクラスでした。具体的に行きたいと思う大学もなかったので、何のために勉強しているのか疑問を持つようになって、そんな時に横尾忠則さんや先に挙げたような方々の表現に触れ、自分はそういう世界に入れればいいのかなと思うようになりました。そこで、自分の興味のある世界に向かおうかと思いはじめました。
--自分の興味や資質のままに生きようと。子供の頃は絵を描くこととかは好きでしたか?
佐藤: そうでもなかったです。どちらかといえば好きでしたが、そんなに上手というわけでもなかったです。
--繰り返しになりますが、仕事面で影響を受けたクリエイターは具体的にどんな人たちですか?
佐藤: そうですね、やはり横尾忠則さん、杉浦幸平さん…工作舎の雑誌「遊」という雑誌がかっこいいなぁと思って影響は受けました。装丁やレイアウト、用紙なんかもすごく凝っていてびっくりしたのを覚えています。音楽でいえばピンクフロイド、ノイ!、パティ・スミス、日本のグループサウンズも好きでしたね。アートワークもかっこよかったです。
 
大学から社会人、独立まで
--成安造形大学に入学されてから、社会に出るまでを振り返っていただけますか。
佐藤: 大学のデザイン学科は、映像、写真、イラスト、グラフィックの4つを学ぶ機会がありましたが、自分はポスターを作るのが好きでしたので、そこでグラフィックを選びました。

大学卒業してすぐに講師の先生のデザインオフィスで約1年働かせていただきました。その後、印刷会社を経て、広告代理店で4年くらい勤務して、そして独立という流れですね。会社員時代は、フィットネスクラブ、写真館、学校関係、会社案内、飲食店といったクライアントのチラシや広告など制作物全般を経験させていただきました。
--広告の制作はクライアントありきですので、自分の世界観などはあまり出せないですよね。
佐藤: 広告制作で自分の趣味を投影したいという気持ちはあまりなかったですね。現在でも学校、企業などの仕事が中心ですが、クライアントのニーズや問題を解決していくのが仕事ですから、クライアントに対し自分がどんな答えを出せるか、それが面白い部分だと思っています。
--世代的には最初からIllustrator、Photoshopなどのデジタルツール世代ですよね。スケッチは手描きですか?
佐藤: そうですね。最初は自分のメモ程度に手で描きます、それをお見せしたりすることはあまりないです。そのスケッチからIllustratorなどで起こしてプレゼン資料を作るフローとなります。
--20代の頃は、デザイナーとしてどのようなトレーニングをされましたか?
佐藤: 杉浦幸平さんのデザインがかっこいいと思って、デザインをスキャンして、文字組を再現してみようと真似してみたんです。そうしたら、漢字、英語、かなの書体をそれぞれ変えて組み合わせていることが分かったり、いろいろな発見があり、勉強になりました。

また、普段行かないようなお店に入ってみて、店の雰囲気を見たり、そこで気になるグラフィックなどをストックしたりしています。仕事では、世代や性別などいろいろな方をターゲットにすることがありますから、それぞれ共有できるイメージや情報は知っておきたいと思っています。そういう意味でもいろいろなものを観察することは大切だと思います。 それと、新しいデザイン関連の書籍にはなるべく目を通すようにしています。今の時代感のようなものは持っていないといけないと思います。
--一般イメージからトレンドまで、いろいろなクライアントに対応するための引き出しを増やすということですね。
佐藤: そうですね。
--確かに佐藤さんのデザインはモダンですけれど、過去のクリエイターの遺産も埋め込まれていますね。
佐藤: 意識してはいませんが、そうなんですかね(笑)。
--杉浦幸平さんの文字組みの分析など面白いお話ですが、昔の活字や写植の書体と、今のコンピュータのフォントでは、けっこう違いますよね。思うように組めないとかはなかったですか?
佐藤: コンピュータでしか組んだことがないので、思うように組めないということはなかったですが、仕上がりが思った感じと違うなというのはありますね。昔の印刷物のようなイメージにするために、どうやってアナログ感を出していくかはいろいろやりました。
--佐藤さんのデザインは文字組み、色彩などでいうと、どういった点を重視されていますか?
佐藤: 基本的には全体のバランス見ながらですけれど、文字組は好きです。ロゴを作ることや、手描きで書いた文字を起こしたり、フォントをアレンジしたり、文字に関するところを一番意識しているかも知れません。
--自分からトレンドを作る、デザインで時代の先端を切り開くというお考えはありますか。
佐藤: 新しい表現をしてみたいとは思います。市場にすでにいろいろな情報がある中で”組み合わせ”によって新しいイメージになる場合があるのではないかとも思っています。自分の趣味・嗜好、今の流行、昔好きだったもの…そういったものが自分の中で意識しなくても出てくることがあると思います。そこから人それぞれ、オリジナルなものになってくるのではないかなと思います。何かを閃いた時も、実は自分の中にストックされているものの組み合わせの新しさなのかもしれません。

ライブのフライヤーなども手がける。

「幽霊・妖怪画大全集」展のポスター。

紙とWebのデザイン
--佐藤さんは、紙媒体とWebの両方をデザインされていますね。紙とWebはそれぞれ専門のデザイナーとなり、両方を手がけるデザイナーはあまり多くないと思います。
佐藤: 私も基本、紙ですね。Webのデザインも行いますが、自分で全部やるわけではなくて、コーディングや企画などは相談しながらチームで動くことが多いです。私の役割はWebデザインというよりグラフィックがメインです。最近ではWebの仕事や相談も増えてきています。
--Webはインタラクティブで重層的ですが、紙は基本1枚勝負ですよね。そういった違いはどのようにデザインされていますか?
佐藤: Webの場合、全体の世界観は考えますが、チームでの仕事になりますので、動きや構成に関しては、自分では詰めないで、チームで相談しながら一緒にやっていきます。スマートフォン用のサイトなども制作することがありますが、いろいろな条件に合わせてケースバイケースで判断していきます。
--なるほど。クライアントさんからはポスターもWebも込みでという仕事も少なくないのではないでしょうか?
佐藤: ありますね。逆に名刺デザインの仕事がきたらWebも勧めたりしています。
--Webと紙ですとどっちが好きですか?
佐藤: どちらかと言うと紙です。ただ全体のイメージを考えたりする際に、Webも必要不可欠な媒体と思うので、Webに関しても、ある程度分かっておかないとという気持ちはあります。

きっかけとなった3つのデザイン
--独立されて4年目ですが、これまでのお仕事のベスト3を伺えますか。
佐藤: ベストといいますか、自分の中で契機になった仕事をお話させていただきます。

まず「御舟かもめ」さんのお仕事です。大阪の川に浮かぶ、小さな家のような10人乗りの小さな遊覧船のパンフレットとホームページを作りました。船長さんから、「FLAT HOUSE LIFE」という本の著者のイラストレーター、アラタ・クールハンドさんのようなイラストを使って舟を紹介したいというご相談がありました。そこで、直接著者の方へ連絡をとって相談したところ、「御舟かもめ」さんに興味を持っていただけて、イラストを描いていただけることができたんです。それがとても嬉しかったです。人に響く仕事をされている方は、共感をもっていただけるということを経験させていただきました。4年くらい前になりますが、フリーのデザイナーになりたての頃の仕事で、著名な方とお仕事をご一緒できたことがとても印象深かったです。

「御舟かもめ」パンフレット中ページにあるアラタ・クールハンド氏によるイラスト。

「御舟かもめ」のWebサイト。

2つ目は「wind mill calendar」です。これは年賀状代わりにオリジナルのカレンダーを送ろうと、コースター型や三角形のタイプのカレンダーを作っていたのですが、2014年に桜ノ宮活版倉庫さんと一緒に協力いただき制作したものが、全国カレンダー展の賞をいただいたんです。今まで、賞などに応募したことがあまりなかったのと、賞をいただく機会もなかったので、とても嬉しかったです。

年賀状代わりに制作したカレンダー「wind mill calendar」

パッケージ状態の「wind mill calendar」

3つ目は、学生時代のことなんですが、大学の卒業制作展で作った「サイン計画」が印象に残っています。このとき、卒業制作の作品をお寺の境内やその近くの博物館に展示したのですが、来場者には道順が必要と考えました。そこで展覧会自体をプロデュースするような視点で会場までの案内を作り、それを自分の卒業制作としようと考えました。

具体的にはキューブの箱をたくさん作り、道順の目印代わりに置いていったのです。 こういった道順のサインは毎年地元の業者さんが作っていたのですが、大学と交渉してその予算を回してもらい、今まで看板でサインを作っていたものを、キューブサインに変更するということで、予算も回してもらうことができました。自分がデザインしたものが機能したことや、予算をいただけたことが、プレッシャーでもありましたが、印象的でした。

成安造形大学の卒業制作「サイン計画」

--アートディレクションの原点というか、佐藤さんはリーダー的なタイプですか?
佐藤: いや、そうでもないですね。コツコツやるほうだとは思っています(笑)。
 
現状と今後の展開
--得意なクリエイティブワークはなんですか?
佐藤: 今はほぼ1人で動いていますので、物理的に全部のデザイン作業をできない面もありますが、人をまとめたり動かすより、自分のデザインを詰めていく作業が好きですね。
--大阪を拠点にされている理由は何かありますか?
佐藤: 特にこだわってはいないのですが、鳥取出身で大学は滋賀県、就職は大阪という流れだったので、東京に行きたいとはあまり思わなかったです。大阪で仕事を始めたのでクライアントが大阪中心ということが大阪を拠点にしている理由でしょうか。場所はあまり気にしていません。地元の鳥取で仕事をできる機会があれば嬉しいとは思います。
--ネット時代ですからワークスペースはどこでもよいと思うのですが、地域社会、地場との関わりという点で鳥取なども面白そうですね。
佐藤: 学生の頃からそうなんですけれど、大手企業の広告をいつか手がけてみたい、芸能人を使って何かしたい、といった気持ちがあまりなくて、そういう意味で東京に行きたいという気持ちもあまりなかったのかもしれません。でも、東京はデザイン系の大規模イベントが多いので、それはいいですね(笑)。
--大阪はデザインの市場規模的にいかがですか?
佐藤: どうなんでしょう。大阪しか知らないので何とも。
--今後してみたいデザインなどありますか?
佐藤: 独立して5年、会社にして3期目なんですけれど、今ある仕事を必死にやっている状況なので、充実感はあります。これからの目標としては、今お付き合いいただいている仕事を一生懸命取り組むとともに、もう少しずつ幅を広げていきたいですね。ディレクション的な仕事も増やしていきたいです。何かに特化したいというより、まだまだなんでもやってみたいですね。 それと、自分が好きなものをデザインできる機会があればなお嬉しいですね。藤子不二雄とか水木しげる、音楽関係の仕事なんかができたら嬉しいですね。
--最後に若い人へ一言お願いします。
佐藤: 自分が若い時、デザインや業界のことをあまり知らなかったんです。就職の時もあまり調べたりせず、流れに身を任せていた面もあったのですが、独立してから特に、同業の人との出会いや話す機会が増えて、刺激になることが多いです。なので、学生さんは、イベントなど業界の方が集う場所などには積極的に参加するとよいと思います。逆にデザイナーも学生や若い世代の人に来てもらえると嬉しいと思います。自分がそうしてこなかったので、今になってそうしておけばよかったなと思います。
--ありがとうございました。

(2015年10月2日更新)

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