このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
水鳥雅文:武蔵野美術大学卒。広告代理店を経て、1999年にエレファントコミュニケーションズを設立。2008年に水鳥デザイン:株式会社を設立。2011年にタイのバンコクへ移住。
http://mizutori.jp
●ASEAN諸国がマーケット
デザインのご相談をいただいた「HAKUHODO Institute of life and living ASEAN」とは、博報堂グループのASEAN 6カ国(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の生活者の意識と行動を調査するシンクタンクです。今回はロゴデザインとWebサイト、冊子のデザインを手がけました。
●「らしさ」を残し、新規マーケットへアプローチ
もともとある博報堂「らしさ」をトーン&マナーとして残しつつも、ターゲットであるASEANの経済成長の勢いや時代背景、その土地に刺さる表現を試みました。
ロゴは、箱組みをメインに単語どおしの極端な余白や、一部を欠けさせることでフックをつくり「生活者」の多様性を動きとリズムで表現しています。
また、Webサイトのデザインは、トップページは視覚的に情報をキャッチしやすいよう整理し、スクロールするごとにASEANの生活者の活気ある風景が伝わるダイナミック流れと勢いを意識した構成にしています。
●2014年は「家族」がテーマ
立ち上げの2014年から2015年、そして2016年と、年に一度のフォーラムでのテーマにより、キービジュアル、リーフレットデザインを手がけています。2014年はフォーラムのテーマが「THE CONNECTED FAMILY」。
ASEANのインフレンサーは個人ではなく家族、家族を通してのソーシャルネットワークが強く、家族内から親族や他の家族へと伝播していくという流れをテーマに、家族を象徴するものとして家の形のアイコンを使い、それが広がっていくイメージをデザインしています。
●2015年は「ミドル層」を表現
2015年のテーマは、「THE SEAMLESS MIDDLE」。ASEANではミドル層の数的な多さに加え、ビジネスの多様性にも富んでいるのが特徴。そのミドル層をとらえる新しい視点をテーマにMIDDLEのMが連なり、多様性を表すカラフルな色を使ってデザインしました。また、表紙の上にはアッパー層、下にはロワー層を表現するUとLをデザイン要素として入れることで、ミドル層の多様性と層の厚さを表現しています。
私自身もバンコクで暮らす生活者として、日々体感している生活を本プロジェクトのデザインに活かし、新しい視点とアウトプットにつなげることができました。
次回は坂元美奈子さんの予定です。
(2016年4月18日更新)