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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Designer FILE 17:木村陽一

尾道市御調町「まるみデパート」のWebデザイン

木村陽一(Le-in Inc.):アートディレクター。NPO法人CANVASフェロー。1977年生まれ。愛知県清須生まれ、東京都世田谷区在住。8年のフリーランスデザイナーを経て2007年 株式会社レ・イン設立。設立後はアートディレクターとして音楽からアート&エデュテインメントをフィールドにさまざまなブランディング・プロモーションに従事。 http://le-in.net

●フィールドワークを通して見えてくること

●地域連携型プロジェクト「まるみデパート」
相談者は「まるみデパート」運営の一般社団法人みつぎさいこう代表の梶高慎輔さんです。 梶高さんは、過疎化問題を抱える尾道市御調町(みつぎちょう)で、数年前から古民家を再生し地場名産を使用したカフェを運営。雑貨販売からイベントなど、まちづくりに必要なサービスや活動を、「まるみデパート」を拠点に行っているコミュニティデザイナーです。http://marumidept.jp

●まちを元気にしたい!
数年の活動でまちの信頼を得ることにより、梶高さんにはさまざまな相談がやってきます。しかしアウトプット可能な人材が不足しており相談は山積み状態です。 まちには需要はあるが供給が追いつかない。供給が追いつくのであればこのまちにも光がある。「まるみデパート」の目標は仕事を作り、移住者を募り、まちを元気にするということです。

課題
1:若く特殊技能を持つ人材の育成と不足
2:ビジネスとして自立できる収益化の問題
3:需要、供給を効率的にマッチングするITツールの活用不足
4:制作費用は潤沢ではない

●フィールドワークから始める
プロジェクトはまち奥の限界集落、また行政とも連携しさまざまな人々を巻き込み広がっています。全体像をつかむ方法として、梶高さんが拠点を作る前にやっていた「フィールドワーク」を実施してみることにしました。 スチール、動画カメラ、音声レコーダーを持ち込み、2泊3日の滞在合宿です。メンバーは、インタビューアーとカメラマンと僕。そしてまち案内をドアマン梶高さんに。

道の駅から文化資料館、山頂にある美術館、農家さん、行政の方、古民家をセルフ・リノベーションした方の家、最近御調町に移住してきたお米作りの方、まちのお菓子屋さん、古びた商店のおばあちゃん、空き野原、図書館。そして合間に梶高さんへのインタビュー。もちろんまるみデパートも。

●まち全体を「デパート」と捉える
取材した素材をマインドマップ化してどのようにプロモーションに活用できるかを滞在中に議論しました。

このフィールドワークで浮き上がってきたのは、さまざまな要素を持つまち全体を「デパート」と捉えられるのでは! ということです。 まちの図書館を本棚と呼び、田んぼをお米売り場、空き野原を庭と。

都市、駅前にあるデパートと同様に、地下の食品売り場から屋上までさまざまなサービスを提供しているように。デパートにわくわくして連れて行ってもらった時のように、まちに行くことにわくわくすることができれば。

●えいやっと広げてしまえ!
フィールドワークにより「活動はさまざまなんだから、そのさまざまを見せること」が魅力につながるのではと1つの予測を立てることができました。

しかし移住者を募ることにより「まちを元気に!」という課題への道のりは険しく、最終目標へのロードマップは作りつつもステップに別け、最初の1年の目標を「まずは、まるみデパートに1時間でも2時間でもふらっと寄ってもらう」に設定することにしました。


尾道の先、御調町。地域連携型プロジェクト「まるみデパート」Webサイトデザイン


田園広がる御調町風景と、大正7年に建てられた医院を再生して作られたまるみデパート


週末、まるみデパートにはさまざまなお客さんたちがやってくる


3日間に渡るフィールドワーク


まるみデパートが提供するさまざまなサービスをピクトグラム化



●きっかけはInstagram

日々投稿される活動風景


ハッシュタグリストを活用してカテゴリーを自動振り分け


御調町空き家バンクサイトWebサイト


●最初のきっかけをどう作るのか
Webサイトのプロモーションで確実に効果があるのは、ブログを毎週数回書くことです。これによりキーワードが貯まりロングテールの検索ヒットが積み重なっていきます。 しかしこれには落とし穴があり、そもそも運営が人手不足となると長続きすることはありません。更新されないWebサイトはプロモーションに何も役に立たないのです。

そこで着眼したのは、すでにひっそりと梶高さんが利用していたInstagramです。Instagramはブログ更新より格段に簡単で、早く情報を発信することができます。https://www.instagram.com/marumidept/

また御調町の活動写真は単純に絵になる! 魅力になると感じました。庭で繰り広げられるバーベキューの風景、冬は部屋の中で暖炉で暖まる、季節の野菜を使った美味しそうなランチメニュー。見ているだけでそこには、わくわくするような世界がありました。

●Instagramを魅力発信の軸にする
Instagramで投稿していても本筋の情報を知ってもらうことができません。なのでこのようなシステムを組んでみました。 Instagramで投稿した写真とハッシュタグとキャプションは、自動でWordPressに格納され、ハッシュタグによりさまざまなサービスカテゴリーに自動振り分けされ表示されます。

これにより、日々の断片的な配信も、Webサイト上ではさまざまなサービス、活動として集約され再編集され配信されていきます。またWordPressに自動投稿されることにより、検索エンジンにも効果的なキーワードの蓄積となります。

●活動はさまざまに変化していく
まだステップ1が始まったばかりで、ステップ2の御調町空き家バンクWebサイトもまるみデパートのサポートにより立ち上がりました。
http://mitsugiakiya.jp
そして2016年春にはキャンプ場もスタートします。

さまざまに変化していく「まるみデパート」。このWebサイトも柔軟に変化させ、引き続きサポートを継続していきます。



次回は平野聡子さんの予定です。

(2016年2月22日更新)

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