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Designデザイン

Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Designer FILE 12:神崎奈津子

名刺の制作

神崎奈津子:グラフィックデザイナー。佐賀生まれ神戸在住。大阪芸術大学環境計画学科卒業、造園会社、広告制作会社を経て2011年よりフリーランスのデザイナーとして活動。2009年より描いている植物デッサンも公開中。
http://kanzakinatsuko.com/

●名刺をデザインすること

●なぜ名刺?

1人ひとりの大切な時に立ち会う名刺を特別に思っています。文字や紙や印刷を使ってどんなコミニケーションを作りだすのか、名刺は私にとってはデザインの芯のようなお仕事です。次の一歩を踏み出す時にデザインが、その名刺が、道を照らすことができたらと思って制作しています。

今回は1人の方の名刺ができるまでの、出会いからその後の展開をお話しさせていただきます。



●出会いから完成まで

写真1:依頼原稿。名前より大きな文字が印象的でした。




写真2、3:版画のような仕上がりに。


●その他の名刺デザイン

やわらかなお人柄を伝えるため、裏面はふわふわの紙を合紙しています。


1枚1枚色が違います。海外で使うので言葉が通じなくとも色でコミニケーションできるデザインです。


手の美しい方なので、渡す時も美しく見えるよう紙のサイズにも配慮しています。


●出会い
塩見直紀さんの名刺をここではご紹介します。塩見さんは半農半X(はんのうはんえっくす)というコンセプトでこれからの生き方、働き方を提案されている方です。各地で講演やワークショップをしながら、ご自身で農業も営まれています。2012年に著書を拝読したご縁で、京都の綾部市にてお会いすることが叶いました。

●依頼
お会いしてから半年後、塩見さんから名刺のデザインを依頼するメールをいただきました。明治時代の思想家 内村鑑三の言葉を前面に出し、文字は岡本太郎さんの本「強く生きる言葉」のようにお願いしますとのこと。印象的な依頼原稿とともにお受けさせていただくことになりました。(写真1)

●設計
この名刺は誰にどんなことを伝えるものなのか? をまず確認することが多いのですが、塩見さんの場合はその部分が明白でした。「この名刺は内村鑑三の言葉が伝われば、残りの部分は切り取られてもいいぐらいです(笑)」とおっしゃっていたので、文字がより魅力的に伝わるように注力していきました。

まず目指す方向やキーワードを書き出し、実際に手を動かす時の指針にしています。例えば、、手の跡が残るように、強さ、ゆがみ、堂々とした、味のある、密度…など思いつくままイメージする言葉を書き出し、その中から重要だと思う言葉を選び、その方向にそって表現方法を選んでいきます。

●造形
方向性が決まるとコピー用紙にたくさん文字を書いていきます。筆記具を変えたり1文字ずつ組み合わせてみて、文章としてのバランスを整えます。初回の提案で「強さが足りないかな」というご指摘をいただき、さらに微調整を重ねました。

●完成
紙や印刷を検証して手触りのある仕上がりにしています。ご活躍とともに使っていただけたらありがたいです。(写真2、3)

●展開
塩見さんの名刺は毎年増刷を重ね3,000枚を制作しました。これをきっかけに名刺のデザインを依頼されることも多くなりました。現在塩見さんとは「綾部ローカルビジネスデザイン研究所」というプロジェクトでもご一緒させていただいています。

●これから
1人ひとりに丁寧にデザインしたいと思っています。名刺のデザインはいつもそのことを再確認させてくれます。



次回は町田美紀さんの予定です。

(2015年10月5日更新)

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