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Designデザイン

Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Designer FILE 11:多々良直治

UR都市機構 落合団地のWebサイト制作

多々良直治:Web ディレクター/Webデザイナー。1980年福岡生まれ。大阪在住。印刷会社、Web制作会社を経て、2008年カイエ(株)を設立。主にWeb制作業務を行っています。
http://www.cahier-inc.com/

●コンセプトを固める

●プロジェクトのはじまり
はじめにお話しをいただいたのは、グラフィックデザイナーである神崎奈津子さんからの紹介でした。 クライアントがWebデザイナーを探しているから、私を紹介してもよいかという連絡をいただきました。

数週間後、初めて打ち合わせを行いました。 依頼の内容は、兵庫県神戸市須磨区にある落合団地のWebサイトの制作です。 クライアントは、すでに他社とプロジェクトを進められていた状況でしたが、長い時間かかってもプロジェクトが前に進んでいなかったり、デザインにあまり納得していないというお話しを伺いました。

このとき、Webサイトの目的・役割やターゲットがぼんやりしている印象を持ちました。 改めてWebサイトの目的・役割やターゲットを明確にしていく、交通整理していくことが自分の仕事かなと考えました。

●現地の見学
後日、落合団地に出向き、実際に歩いてみながら、落合団地の現状についてお聞きしました。落合団地は、神戸市の中心街にある三宮駅から電車で30分ほどの地域にあります。三宮で働く人たちにとって、とても良い立地です。実際に歩いてみると、自然が多く、歩いているだけで四季が感じられるようでした。

部屋も見せてもらいました。部屋によってロケーションが違うので部屋から見える景色が全然違ったり、リノベーションされて間取りが変わっていたり、建てられた当時の間取りを引き継いだものなどさまざまな種類があります。もう住んでしまいたい、ここ事務所にしたら気持ちいいだろうなぁと思わせる部屋もありました。

現地の見学と打ち合わせの中で、Webサイトの目的・役割は、新規客の獲得であること、ダーゲットとなる人は、子育て世代、近くの大学に通う大学生、神戸市の中心街にある三宮駅へ勤務の方、ということを改めて確認することができました。


オチアイグラシ(2015年9月現在のトップページ)
http://www.ur-net.go.jp/kansai/ochiai_danchi/


初期段階のワイヤーフレーム。今とページの構成が異なります。 ワイヤーフレームのラフは、たくさん書きます


●Webマガジンのデザイン作業

ロゴのスケッチ。手書きパターンも考えていました

●Webサイトのコンセプト・ネーミング
Webサイトの閲覧してくれる人に落合団地の良さをそのまま伝える、Webサイトを見て落合団地での生活が想像できたり暮らしの一部が感じられることができれば、興味を持つ人が必ずいるはず…と考えるようになり、コンセプトは「落合団地の暮らしが見えるWebマガジン」としました。

「Webマガジン」としたのは、「Webサイトの情報を見る」という行為より「Webサイトの記事を読んでいく」行為の方が良さが伝わるのではないかと考えました。また他に「暮らし」「温かみ・ぬくもり」「四季」「自然が多い」というキーワードも浮かび上がってきました。

Webサイトの名前は、コンセプトを表す言葉「落合団地暮らし」「オチアイグラシ」「おちあいくらし」など漢字を入れる、カタカナにする、平仮名にする文字を短縮するなど、さまざまなパターンが考えられます。プロジェクトを進めていく上でクライアントと相談しつつ、最終的に「オチアイグラシ」に決まりました。

●コンテンツの考察
「落合団地の暮らしが見えるWebマガジン」を実現するにはどんなコンテンツが良いのか? プロジェクトの初期段階では、クライアントが準備するとしていましたが、クライアントと意見交換していく中、具体的なコンテンツの中身の企画や制作も任せていただけるという話になっていきました。まず、どうやって実現するかは置いておいて、考えられるアイデアをどんどん書き出していきました。

・入居者インタビュー
・建築家によるDIY情報の発信
・MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの進む過程の情報の発信
・周辺のお店、施設、遊べるスポットを取材して紹介
・暮らし方、遊び方の提案…など。

また、どういったチームでコンテンツを制作していくかということも同時に考えました。どうしたらクオリティが上がるか? 面白くなるか? と考え、編集者であるインセクツの松村貴樹さんにお声がけしました。インセクツの松村さんは、大阪発ローカル・カルチャーマガジンIN/SECTS(インセクツ)を制作されています。他に雑誌編集やWebサイトのコンテンツ制作、イベントの企画・運営などもされています。コンテンツが面白くなる、仕事がしたいと思い、一緒にプロジェクトを進める編集者として参加していただくことになりました。

今までの経緯と自分なりに考えたコンテンツ案を共有しつつ、一緒にブレストを行うと、具体的に実現できるアイデアに昇華していただいたり、今までにやってきたプロジェクトの例を紹介していただいたり、面白くなりそうなアイデアが出て、格段に視野が広まりました。

それらのコンテンツ案をまとめ、企画として提案し、予算を調整し、実現できる案に昇華し、具体的に制作を進めていくことになりました。

●デザイン作業
フォトグラファーは、「暮らし」を感じる写真を多く撮られている片岡杏子さんにお声がけしました。 コンセプト「落合団地の暮らしが見えるWebマガジン」から、入居者の「暮らし」をインタビューで掘りおこし、写真で「暮らし」を切り取っています。Webデザインは、それらが主役になるように、心がけております。

 



次回は神崎奈津子さんの予定です。

(2015年9月10日更新)

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