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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Designer FILE 09:関 翔吾

アパレルブランド「PAR ICI」のカタログ制作

関 翔吾:アートディレクター/グラフィックデザイナー。1984年熊本県生まれ。2006年東京工芸大学芸術学部デザイン学科卒業。福島デザインを経て、2011年からフリーランス。JAGDA新人賞、2010・2013・2015ノミネート。グラフィックデザインを中心とした、さまざまな媒体で活動している。
http://whoswho.jagda.jp/jp/member/2949.html

●PAR ICI 2014a/w 「SHYBOY YETI」

●イエティをキービジュアルに設定
3年程デザインを担当させていただいているアパレルブランドPARICI(パーリッシィ)の2014年の秋冬カタログを制作させていただきました。

クライアントさんから秋冬の服のテーマが「北欧のスキーヤー」というオリエンがあり、そこからアイデアを考え始めました。

服のテーマからあまり離れすぎない程度に、さらにカタログの世界観を広げ、引っ張ってもらえるようなキーになる言葉やモチーフ探しからスタートしました。今回は2案提案し、イエティ(雪男)というキャラクターをカタログのキービジュアルにする方向性で決定しました。 さらにイエティにキャラクター性をもたせるため、恥ずかしがりやのイエティという設定にし、ストーリー性をもたせるために絵本のようなページ構成にしました。

●イラスト(イエティ)とモデル(実写)を同じ世界観に
はじめに悩んだ問題として、アパレルカタログなので、スタイリングを見せるカットはどうしても必要なので、絵本のような世界観の中に実写のモデルをどう上手く登場させるかを考えました。

結果として出した答えは、モデルを物語りの中の登場人物にすることでした。次に実写(モデル)とイラスト(イエティ)を同一世界の登場人物に見せる方法を考え、プロジェクターでイラストを投影する手法を思いつきました。

さらに人物の生々しさを無くし、イラストとの一体感を出す効果として、基本モノクロページという思い切った提案になりました。 モノクロになると当然、洋服のディテールは分かりづらくなるため、後半ページをスタイリングをメインにしたカラーページにしました。

ここからイラストレーターの選定に入り、キャラクター&モノクロの世界観が魅力的なイラストレーターを考え、 fancomiさんを提案しました。だいたいここまでがプレゼンの内容です。

●1冊の絵本をつくるように
プレゼンが通ると、具体的なストーリー、ページネーションの作業に入りました。

こだわった点は、物語りの絵作りは当然のことですが、ストーリーも起承転結のあるしっかりとした内容にしようと、fancomiさんとストーリー設定から一緒になって考えていきました。あくまで、1冊の絵本を作るかの行程のようにカタログでは登場しないカットもすべて一度、マンガのコマ割りにし、物語りの全容を一度ビジュアルにしました。

そこから象徴的なシーンをいくつか切り出し、実際のカタログに使用しました。しかしながら、あくまでもアパレルのカタログなので、ストーリーを見てもらいたいわけではありません。

ストーリーはより興味をもってくれた人が、分かってくれれば良いくらいの気持ちで、大抵の人はパラパラとめくる程度なので、そこまでストーリー性は入ってこなくてもいいと割り切りました。それでもしっかりストーリーを考えたのは、1つひとつのカットに確実にビジュアルとしての強度がまし、より魅力的な世界観になると考えたからです。


表紙STAFF Art direction & design:SHOGO SEKI、Illustration:FANCOMI、Photo:YASUYUKI EMORI、Model:KASUMI、Hair&Make up:HIROKO、Retouch:YUZOISODA


イエティの部分は、浮き出し加工で立体的に。マットなシルバーゴールド系の箔


冒頭のページ。物語りが始まる期待感を演出


文字のようにみえるものは、読めない


プロジェクターで投影してのモデルカット。モデルのかかる線画の部分は、その場で消しながら調整した


左ページのベタ面の色が、ウォームグレー


●デザイン作業

ページ都合上、右ページからカラーページになるのを利用し、物語りの最終カットをカラーにしてハッピーエンドを演出した


モデルのカラーカット。ポーズは、その場での指示のものが多い


一度、物語りすべてを、マンガのコマ割りで描きだした冒頭の一部分


イラストページのラフ。コマ割りから象徴的なカットを切り出し、単調なページネーションにならないよう考慮した

●撮影について
撮影は、プロジェクターを使用するためテスト撮影を行い、本番に望みました。ボーイッシュなイメージの女性ブランドなので、あまり可愛くなりずぎないよう男っぽい力強い写真にしたいと考え、江森康之さんにお願いしました。

ポージングなどは、作り込みすぎず、大まかに考えておき、本番は江森さんに基本お任せしながら進行しました。 撮影中、プロジェクターの光でモデルさんが気持ち悪くなってしまい、休憩を挟みました。

このようなアクシデントは何かしら発生するものと考えて望んでいますが、逆に良い意味でのアクシデントも瞬時に取り込めるよう、 撮影は特に臨機応変に対応することを心がけています。

●印刷について
紙媒体の大きな特徴として、物が放つ「物質感」は、ディスプレイ上では発揮できない利点であることは明確ですが、その中でも特殊加工は、さらに「物質感」の強さを強調してくれるものであると思います。

特にPAR ICIとの仕事では、その力を積極的に取り込めるようにしており、今回は、表紙に箔押し加工と浮き出し加工を施し、イエティに少し立体感を与え、カタログ=使い捨てのメディアではなく、作品集のような取っておきたくなる物を目指しています。

だからといって毎回、箔押しをできるような予算があるわけではなく、今回で言えば本文のページのほとんどをモノクロページにすることで、色数を抑え、印刷費が抑えられた分を表紙の加工費にあてています。しかし、モノクロページが、ほとんどをしめる分、簡素な印象にならないようにブラックとウォームグレーの2色でモノクロを表現しています。そうすることで、ブラック単色にするよりも、快調や色味に幅ができ、豊かな印刷表現になります。デザイナーとして、様々な表現を定着できるよう、印刷・加工方法は、常に知識を得られるよに意識しています。

●紙媒体だからできる面白さを
インターネットが普及し紙媒体が少なくなっていく中、情報を伝える一媒体という意識から、紙媒体だからできる意味を考える機会は多くなってきました。アパレルの分野でもweb上で簡単に洋服を見れるようになり、拡大や色変えが自由にできたり、紙媒体よりもweb上の方が、服のディテールも分かりやすくなっていると思います。

だからこそ、アパレルのカタログはスペックなどの情報といった分野とは、違う次元で価値を見いだしていく必要があります。

直接手にとってもらえ、持ち帰ってもらえるカタログは、五感で楽しんでもらえ、手元にとっておきたくなる、より世界観を広げ、ブランド価値を高められるものであるべきだと考えます。

小さい頃、ワクワクしながら絵本を開いたように、これからもアパレルのカタログだからできる面白さを探求できればと思っています。
カタログの全ページは、こちらからweb上で見られます。
http://ambidex.co.jp/par_ici/collection.php

 



次回は瀬戸山雅彦さんの予定です。

(2015年7月22日更新)

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