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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

Designer FILE 07:小玉 文

「日本酒のパッケージデザイン」

小玉 文(こだま あや):アートディレクター/グラフィックデザイナー。1983年大阪生まれ。東京造形大学グラフィックデザイン専攻領域卒業。株式会社粟辻デザインへの7年間の在籍を経て、2013年、株式会社BULLET(バレット)を設立。ブランディング、パッケージデザインのディレクション・デザインを中心に紙媒体からWeb媒体まで幅広く手がける。東京造形大学非常勤講師。
http://www.bullet-inc.jp/

●「錦鯉 NISHIKIGOI ボトル・箱のデザイン」

●アイデア・世界観
新潟にある酒蔵「今代司酒造株式会社」の日本酒のパッケージデザインです。

かつて、まだ日本酒が樽で出荷されていた時代、酒蔵は酒を酒屋に売る時に水で薄めて出荷し、酒屋も消費者に売る際さらに水で薄めていたそうです。金魚が泳げるほどに水で薄められた酒という揶揄を込め、世間ではそれを「金魚酒」と呼んでいました。

しかしそのような時代でも、今代司酒造は薄めずに出荷していたため、酒屋から大変喜ばれたという話が伝わっています。

【今代司は「金魚酒」ならず 威風堂々たる「錦鯉」】

今代司酒造の在り方を体現するような、威風堂々たるお酒を造ろうということからこの企画は始まりました。

白磁の瓶の形をそのまま錦鯉の形に見立て、瓶というキャンバス上に錦鯉の模様をグラフィカルに配置するというアイデアは、企画当初から一貫していました。それに加え、箱に錦鯉のシルエットの窓を設けることで、さらに魅力的なパッケージにすることができたといえます。

今代司酒造オフィシャルサイト
http://www.imayotsukasa.com/

●デザイン作業

錦鯉の模様のリサーチ・検討(写真上)、錦鯉の模様をデザイン化(写真下)

●ラフスケッチ
錦鯉の模様をデザインするにあたり、実際に品評会で高い評価を受けた錦鯉の模様をリサーチ。それをもとに、模様の配置バランスを検討しました。

●デザインのポイント
新潟県で養殖された錦鯉は海外での評価も高く、この商品も日本を代表するお土産になることを意識し「毛筆の書のディテール」を組み合わせて模様を表現。威風堂々とした、凛とした印象を感じさせることに成功しています。

「錦鯉」の書は、書家の華雪さんによるもの。
http://www.kasetsu.info/index.html

外箱には、この書を大胆に大きく配置しています。

●使用した技法・テクニック
瓶の曲面への直接印刷は、通常のシルクスクリーン印刷ではなく、転写シートに印刷したものを水で貼り、釜で焼くという方法で実現しています。

外箱の紙は、手触りのよい「気包紙C ディープラフ」を採用し、4面すべてに金の箔押しを施しました。

●パッケージデザインにできること
パッケージデザインとは、その商品に込められた作り手の思い・気概を目に見える形で伝わるように表現する仕事だと思います。第一印象で素敵だなと思って手に取った商品が、飲んでみるととても美味しかった。だから、誰かに贈りたくなる。そうして、商品がどんどん広まっていく。そんな感情連鎖の橋渡しの実現が、デザインの可能性であると考えています。

 



次回はタキ加奈子さんの予定です。

(2015年5月13日更新)

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