このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
石黒篤史(OUWN):
1983年、東京生まれ。MR_DESIGNを経て、’13年「OUWN」を設立。グラフィック、web、サインからファッションなど多角的に企画立案製作に携わる。’15年、主な仕事にSTARBUCKS Frappuccino(R) 2015、SHIPS 40thのアートディレクション、アパレルブランド「SONO」のディレクション、また「ボンカレー」のディレクション・キャラクター制作など。「NOTEBOOK#2」プロジェクトにて、日本では初のスタジオとして選出。
受賞歴:ONEShow design2012 [ GOLD Pencil ] , TDC2015・JAGDA2015 [ Prizeget ]。
http://ouwn.jp/
https://jp.pinterest.com/atsushiishiguro/
●アイデア、世界観
みなさんご存知でしたか? フラペチーノ(R)と聞くと、「あぁ、冷たい美味しい飲み物ね!」と意識なく思うかもしれません。すでにたくさんの方に知られている言葉だと思いますが、実はSTARBUCKSがオリジナルで制作した言葉なんです。
なので、フラペチーノ(R)といえばSTARBUCKSの商品でしか存在しません。それだけ広く浸透している商品ですし、その築いてきた世界観は揺るぎないモノで、ブランドの持つオールドアメリカンな暖かさ、フラペチーノ(R)の持つ高揚感、ファッション性、Funなイメージは既に皆さんの中にあると思います。
それらをふまえた上で、2015年の代表となるようなフラペチーノの世界観を作りたい。そして2015年のフラペチーノ(R)「フルーツ-オン-トップ-ヨーグルト フラペチーノ(R) with クラッシュ ナッツ」の素材が織りなすコンビネーション感も表現したい。そのような要望のもとスタートしました。
ヨーグルト、フルーツジェリー、クラッシュ ナッツ、ホイップクリームのコンビネーションを表現するために、アイコンにはそのまま4つの要素を盛り込んでいます。ヨーグルトとフルーツジェリーのカラーを使用し、クラッシュされたナッツを散りばめ、ホイップ型のアイコンデザインです。フラペチーノ(R)の持つFunなイメージは光や書体の流れで表現し、オールドアメリカンという部分は、水彩で描くことによって生まれたアナログ感で担保しています。
そして、フラペチーノ(R)の持つファッション性をふまえて、「Starbucks Summer Party 2015」というフラペチーノ(R)ファッションイベントを開催しました。衣装はファッションデザイナーのTaroさん(Taro Horiuchi : http://tarohoriuchi.com/ )に参加いただき、4素材分のドレスを制作し、4人のゲストモデルに着ていただきました。ゲストモデルは満島みなみさんと、麻宮彩希さん、真間 玲奈さん、入夏さんです。
ランウェイ後に素材のドレスをまとったモデルさん達が集合すると、素材がコンビネーションされた演出と同時にフラペチーノ(R)ドレスを身にまとった、同じくゲストモデルの水原佑果さんが登場というシナリオです。音楽は蓮沼さん(Shuta Hasunuma : http://hasunumaphil.com/ )にお願いしました。生演奏という熱のこもった演出に加え、ゲストが登場するたびに使用楽器を順々に足した演出で、音楽でもコンビネーションを表現しています。イベント後半のトークショーではYOUさんにも参加いただきました。
また、イベント開場時に来場者にはワッペンを渡したのですが、あえて何か解らないワッペンにしています。実は4つの素材が混ざった有機的なワッペンなのですが、水原さんの登場時の映像演出で、映像内にワッペンが登場する仕掛けになっています。その映像によって、来場者は身につけているワッペンが各素材が組合わさったワッペンなんだと認識できるというモノです。
映像はプロデューサーに落合さん(Ambassa : http://ambassa.jp/)。制作に、伊勢さん(GEOGRAPH : http://geograph.jp/)に参加いただきました。イベント演出にはサンプロの松村さん! 撮影舞台もPR舞台もあげれば果てしなく、本当は全員あげたいところなのですが…
ごめんなさい。
このように、商品やロゴだけではなく、シナリオも音楽も、ファッション、アート、映像も、来場者まで巻き込んだ壮大なコンビネーション。すべてが合わさることで、今回のコンビネーションフラペチーノ(R)というものを表現しました。
商品もですが、携わったたくさんの方や協力してくださった方、すべてのコンビネーションで仕上げることができた作品です◎
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●ラフスケッチ
イベント構成やアイコン・映像制作で残されていたスケッチです。
●デザインのポイント
色彩構成は素材の色味から、メインカラーをシアンとマゼンタに決定。また、刺し色でフラペチーノ(R)の明るくFunな印象や、光や木漏れ日を連想するような軽やかな印象からイエローも使用しています。幼い時に絵の具と言ったら赤、青、黄色! そんな皆さんの想い出3原色を使用し、カラーだけをとっても強いコンビネーションを意識しました。
タイポグラフィは、ブランドと素材の持つ暖かさやホイップ感を表現するために、水彩絵の具で有機的に表現しています。
イベントやビジュアルは、Funな印象を残しつつも商品自体のクリアな凛とした印象を表現するため、都会の公園というイメージで白が効いた空間造りをしています。
●広がるデザイン、広い視野
純粋なグラフィックデザインという言葉だけでは難しく、映像やインタラクティブ、WebやUI、サインにプロダクト。デザインという幅も広がり続け、垣根もなくなっています。デザイナー泣かせな傾向のように思えますが、これはとっても素晴らしいことだと思いませんか?
デザインの幅が広がるということは、たくさんの方がさまざまなカタチでデザインに触れられるコトだと思います。
ただ、細分化して考えると範囲が広がった場合、1つひとつの質が落ちてしまうという可能性も考えられます。そこは分野ごとに特化しているクリエイターの方もいますし、そのような方に目を向け協力していただいたり、自分に知識をつけるなどで対応ができるかもしれません。
今後は、そのように広い視野を持ち、見極められるような思考が必要になってくる方も多くなるのではと思います。どこの世界にも足の引っ張り合いなどはあるかもしれませんが、そのような人こそ、臆せずに純粋な気持ちでさまざまなジャンルに進んでほしいです。
広い視野をもち、クロスオーバーしながら手を取り合うことで、たくさんの方に新しいデザインが届けられる。
そんな日が毎日なら、きっと素敵な季節なんだと思います。
次回は小玉文さんの予定です。
(2015年4月22日更新)