このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。
大澤悠大(おおさわ ゆうだい):アートディレクター/グラフィックデザイナー。1984年生まれ。2006年多摩美術大学卒業。クリエイティブエージェンシーを経て、デザインスタジオ『Aroe』主催。2013年『Here is ZINE Bangkok』@Next to Normal(タイ・バンコク)を始め、国内外での展示多数。
http://www.osawayudai.com/(個人サイト)
和歌山県湯浅町の醤油屋・湯浅醤油さんの製品、「九曜むらさき」の限定ボトルのパッケージデザインをしました。
「九曜むらさき」という醤油は、醤油の起源とも言われています。古来から伝わる「金山寺味噌」という調味料があります。それはさまざまな野菜などをふんだんに使用して醸造する発酵味噌です。金山寺味噌を醸造する過程で樽に溜まりができます。味噌の分量に対してわずか3%しかとれない溜まりを、調味料として改良したものが、現在の醤油の起源とされています。
現在も、それらの過程を経て醸造される、唯一の醤油が湯浅醤油さんの「九曜むらさき」なのです。
その「九曜むらさき」をギフト用のミニボトルにデザインし直してほしいとの依頼をうけました。
デザインするにあたり、イメージしたのは神社のお供え物です。白い紙の上に整然と並べられる神饌。それらを引き締めるような神々しい飾り。さまざまな野菜などから作られ、醤油の起源を内包する「九曜むらさき」に
ぴったりだなと思いました。
・色彩のレイアウト
そのアイデアをデザインに落とし込んでいくために、特に気を使ったのは色彩のレイアウトです。平面上の色の面積がとてもセンシティブに見た目の印象を左右します。黒の面積が多いとしつこくなりすぎる。白の面積が多いとあっさりしすぎる。赤の面積が多いと辛くなりすぎる。とても微妙なバランスです。検証の結果、「白8:黒4:赤1」黄金比から、液色の分の黒を若干引いたものがベストな比率になりました。
・タイポグラフィ
タイポグラフィにも特に気を使いました。神社にあるさまざまなタイポグラフィは活版印刷以前から存在し、現在も残り続けています。それらは「上手」や「美しい」を超越して現在の社会に根付いているように感じます。神社のタイポグラフィのように、心にすっとなじむ絵のような文字を書きました。
それらは醤油で喜ぶ人の顔をイメージしています。あえて無為な印象の線を選ぶことで、文字の意味合い以上に伝わるタイポグラフィを目指しました。
・赤の発色
その他にもさまざまなアイデアのトライアンドエラーを繰り返した結果、現在の案を気に入っていただけました。
印刷も赤の発色にこだわりました。赤の発色がデザインの印象を決定づけます。ラベルは上質な和紙を使用し、手触りもよく仕上げました。
「九曜むらさき」の限定ボトルが入ったギフトはネットショップにも関わらず完売し、手に取っていただいた皆様にも好評いただきました。
醤油という、自分に根付いた食品のパッケージをデザインすることで、自分のルーツを意識できたのではないかなと思います。このパッケージを企画していただいた「dayz.」の皆様に感謝いたします。
「湯浅醤油」HP
http://www.yuasasyouyu.co.jp/
「dayz.」HP
http://dayz.today/
次回は 鈴木シゲルさんの予定です。
(2015年1月15日更新)