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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のイラストレーターに旬のイラストを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 94

冨田陽子

大阪府在住。嵯峨美術短期大学染織科卒業。テキスタイルデザイン工房、アパレル勤務後、イラストレーターに転向し、フリーランスになる。第5回、6回東京装画賞入賞。第18回ギャラリーハウスマヤ 装画コンペ入選。第210回、218回玄光社The Choice入選。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tomita-y

 


●「氷の中に閉ざされた物」を描く

物を好んで描く理由として、モチーフの組み合わせや、意図的に乱雑に扱かった物などを配置し、その物の向こう側にいる所有者の感情とか、物語を表現できないかと思っています。

遠回しな表現方法かもしれませんが、このように見て欲しいと強制するのではなく、見る人ごとの感じ方、想像の仕方に委ねることができるように、なるべく余計なものを削って表現できればと思います。氷の中に鍵が閉じ込められていたら何をどんな風に感じてもらえるでしょうか?


完成イラスト。(クリックで拡大)


・ラフを描く
まず写真を撮ります。氷の中に鍵があるような写真を撮り、それを見ながらラフを描きます。大雑把にアタリをつける感じです。使用するのはクロッキー帳と青い芯のホルダー。青い芯を使うのは何故かやる気スイッチが入るからです。

写真を見ながらラフを描く。(クリックで拡大)

・支持体作り
ベニヤパネルにキャンバスを張って胡粉ジェッソを塗っておきます。胡粉ジェッソは貝殻の粉が混じっている下地材で、普通のジェッソよりも少しグレーっぽく沈んだ感じがします。後で氷のハイライトなどを入れたいので意図的にこれを使います。


下地に胡粉ジェッソを塗っておく。(クリックで拡大)

・キャンバスにトレース
ラフを仕上げるサイズにコピーして、キャンバスにトレースダウンしていきます。ここで使うのが手芸店でも売っているチャコペーパーです。写した下絵を水を含ませたスポンジで消しゴムのように消すことができます。


チャコペーパーで下絵を写す。(クリックで拡大)

・まず鍵を描く
トレースができたら、鍵の部分から描いていきます。下描きの線はアタリなので、写真を見ながら描きます。使用画材はリキッテックスレギュラーで、グレーの色を何段階か梅皿に作っておきます。結局それらも画面上で混ぜながら描いてます。


鍵を氷は分けて描く。(クリックで拡大)

・次に氷部分
下地の胡粉ジェッソの色とハイライト部分の白の色の違いは分かるでしょうか?


氷の表現を加える。(クリックで拡大)

・仕上げ
最後に背景部分をアクリルガッシュの白で塗っていきます。3回ほど塗り重ねたら完成です。


これで完成です。(クリックで拡大)


これで完成です。でき上がったイラストはすぐにパネルから剥がし、スキャンしてデータとしても保管し、イラスト自体もファイルに保管します。油画をしている人からすればキャンバスをパネルから外してしまうのは考えられないのかもしれません。あくまで我流なやり方です。

パネルにはすぐに新しいキャンバスを張っておき、いつでもイラストを描けるように準備しておきます。


次回はよしおかアコさんの予定です。
(2022年8月8日更新)

 

 

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