●海外書籍の表紙カバーイラストを描く
・ルーシー・モード・モンゴメリ著『アンの青春』装画プロセス
フランスの出版社Monsieur Toussaint Louvertureより刊行のルーシー・モード・モンゴメリ著『アンの青春』の装画を担当いたしました。その制作過程をお話しいたします。
完成した『アンの青春』装画カバー。(クリックで拡大) |
|
|
・使用ツール
iMac、ペンタブレット(Wacom)、Photoshop、ケント紙、アクリルガッシュ。
・まずは契約書にサイン
海外とのお仕事の場合は先に契約書に同意するところから始まります。仕事内容、ギャランティ、著作権など、英語で書かれた書類に目を通し、問題がなければサインをしてメールで送ります。
・ラフ提出
「自由にラフを描いて」とのことだったので、まずは日本語版『アンの青春』を読んだ後、Photoshopでカラーラフを作成して提出。小説全体から漂う幸福感を表現するため、グリーン・ゲイブルズに向って歩くアンを明るい配色で描きました。
最初に提出したカラーラフ。(クリックで拡大)
|
|
|
「子供っぽすぎる、もっと大人のイメージで」とのフィードバックをいただいたので、それをふまえて再ラフを提出。アンとダイアナが話をしながら森の小道を歩いているシーンです。
2度目に提出したカラーラフ。(クリックで拡大)
|
|
|
このシーンはOKをいただいて、さらに細かい修正のやりとりを何度かしてブラッシュアップを重ね、本番作業に入ります(ダイアナは必要なし、アンの服装をもっと現代風になど)。
こちらが本番前のラフ。(クリックで拡大)
|
|
|
・メールの言語について
最初はGoogle翻訳を使って英語でメールをしていたのですが、細かい修正内容がきた時、お互い母国語ではないため解読が難しくなりました。そのためフランス語でのメールをご提案して、フランス語でのやりとりに切り替えました。
同時に、細かいニュアンスまでは分からないので、翻訳家の方にアウトソーシングしてお手伝いしていただきました。先方からの言葉の意味が理解できただけなく、こちらの言葉もきちんと伝えることができて心底安心できました◎
・本番作業
ケント紙にアクリルガッシュでパーツを描き、スキャンで取り込みます。
パーツ描きしたアナログデータをすべてスキャンで取り込む。(クリックで拡大)
|
|
|
それぞれのパーツをPhotoshop上で合成していきます。「光」「地面」「木」など、自分で分かるフォルダ名をつけて、大きなパーツごとに分けて制作します。繰り返し使うモチーフは「スマートオブジェクト」という機能を使って個別で編集できるようにしておきます。
例えばこの「木」というスマートオブジェクトのいずれかをダブルクリックすると。
Photoshopのスマートオブジェクト機能。(クリックで拡大)
|
|
|
このように「木」自体を編集できる別ウィンドウが開きます。
これを編集すると…。
木のディテールを編集。(クリックで拡大)
|
|
|
下記3箇所の「木」がすべて差し変わります。
個別に1つ1つ修正しなくてよいので便利です。(クリックで拡大)
|
|
|
アナログのパーツを元に、Photoshopのブラシツールで形を整えたり色を調整していきます。今回は文字の場所がおおよそ決まっていたので、仮のデザインレイヤーを上から被せて、バランスをとりながら仕上げていきました。
仮のデザインを被せて、重要なモチーフが重ならないように仕上げていく。(クリックで拡大)
|
|
|
・納品後
日本だと請求書をお送りしておしまいなのですが、今回のギャランティはユーロでのお振込みだったので、外貨預金(ユーロ)の口座開設をし、振込先を記述した英語の請求書を作りました。
・最後に
海外でのお仕事はとても嬉しいのですが、言葉の壁でやりとりに時間がかかります。外国語が苦手な方は、翻訳を手伝ってくれる方をみつけるとかなり心に余裕ができてオススメです☆
次回はやがわまきさんの予定です。
(2021年10月9日更新) |