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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のイラストレーターに旬のイラストを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 82

上島カンナ

かみしまかんな:大阪生まれ。マンガ家。『父を訪ねてだいたい三千匹』(双葉社)、『でしにっき』『アテンド』(comico)、『マンガでわかる文楽』(誠文堂新光社)。現在『機械技術』(日刊工業新聞)にて和文化紹介マンガ「伝統X」連載中。
http://k-kanna.com/

 


●テレビ番組用紙芝居風マンガの作成

人形浄瑠璃文楽の演目『近頃河原の達引』「堀川猿廻しの段」を紹介する番組内で、あらすじマンガの制作をご依頼いただきました。


完成したイラスト。(クリックで拡大)

・使用ツール
ComicStudio Pro 4.0、Photoshop CC、ワコム液晶タブレット。

・アイデア・構想
番組ではナレーションに合わせてイラストを多少動かしたいということで、背景とキャラのレイヤーを分けて動かしやすくしました。予算に対して点数が定まらなかったため、なるべく効率的に背景が使いまわせる場面を選び、制作枚数を抑えました。

・ワークフロー
打ち合わせと下調べのラフスケッチはアナログです。
→ComicStudioで作画
→Photoshopで仕上げます

・制作の流れ
(1) 打ち合わせ&下調べ
打ち合わせでどのシーンをイラストにするかを決め、資料を集め「堀川猿廻しの段」の舞台美術や人形、衣裳を調べます。

(2) ラフ・下描き
ラフ(薄い水色)の後、人形(濃い青)と背景(赤)を下描きし、いったん提出します。ここでサイズと枚数を確認し、調整をして進めます。


下描きの段階で一度提出。確認後、作業を進める。(クリックで拡大)



(3)線画
背景とそれぞれの人形を分けて描きます。この1枚で、冒頭の三味線を教えるシーンとその後兄妹で話し合うシーンに分けられます。個人的に三味線のシーンで手首を動かしてほしくて、手を別レイヤーにしました。背景の線は黒を使わず、目立たない色味に抑えます。


人形を線画にしていく。(クリックで拡大)

手首は動かせるように別レイヤーで。(クリックで拡大)


背景の線画。(クリックで拡大)


(4)色塗り
人形はデフォルメしていますが、芝居に合わせた衣裳の色と模様にします。「猿廻し」の背景は文楽随一の汚さ! ということで、うるさくならない程度に最大限ボロ屋感を出します。


衣装は芝居に合わせて色塗り。(クリックで拡大)

手首にも色を着ける。(クリックで拡大)


背景はボロ屋感が出るように色塗り。(クリックで拡大)


(5)仕上げ
背景、人形、小物を別々に書き出し、Photoshopでレイヤー別にして合わせます。

これで完成。(クリックで拡大)


・絵のポイント
キャラクターはあくまで人間でなく文楽人形―表情は少なく胴は長め、足は薄めのプロポーションーで描きました。舞台の雰囲気を壊さないよう気を付けつつ、せっかくマンガで紹介するなら実写よりかわゆく分かりやすくなるよう心がけています。

・最後に
デフォルメな画風で解説マンガを描く時、どこをどう省くかはとても重要です。「雰囲気がざっくり伝われば良し! とはいえ、知ってる人が違和感を覚えない程度には正しく」を心がけてます。

難しいですが、私にとっては一番おもしろい工程なので毎回楽しんでます。


次回は村本ちひろさんの予定です。
(2021年8月20日更新)

 

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