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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のイラストレーターに旬のイラストを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 74

川野信彦

「可愛くない女の子」がテーマのガールズイラストレーター。絶対的な強者による搾取と愛をガーリーライクに描いています。普段は大阪での活動が中心です。
https://twitter.com/grandguignol96?s=21

●心の中のマスク姿の女性キャラ


完成イラスト。(クリックで拡大)

以前よりずっと描きたかったマスク姿の女性キャラを「違和感・無関心・傲慢」をキーワードに描いていきたいと思います。

・使用ツール

CLIP STUDIO PAINT EX。

・アイデア、構想
モチーフやテーマは写真や映像などの実写から思いつくことが多いです。顔や表情というのはそのキャラを知るための重要なパーツだと思います。そしてマスクというのはそんな重要なパーツである顔を隠すために作られたアイテムです。

わざわざ顔を隠すためにマスクを付けているキャラ。
→普通は隠す必要のない顔をわざわざ隠す
→外見の違和感
→自分を知られたくない、自分を出すだけの興味や価値を向けてきていない?
→無関心?
→興味があるないで他人を値踏みしてかつ、それを表(マスクをつけるという行為)に出す
→傲慢

という連想から、今回のテーマの「違和感・無関心・傲慢」を思いつきました。

・ワークフロー

人物・背景ラフ
→人物下描き
→人物ペン入れ
→人物下塗り(配色決定)
→人物影、ハイライト
→背景下描き
→背景ペン入れ
→背景下塗り(配色決定)
→背景影、ハイライト
→仕上げ(線画の色味変更・色味調整)
→完成
下絵の段階でモチーフや描きたい物語をすべてを決めるわけではなく、その場で考えながら描いていくので、仕上げ直前までデザインなどに修正や変更を加えながら描きます。そのため背景まで人物と一緒に一気に描くと後々デザインや方向性の整合性が取れなくなったりするので人物と背景は別々に描きます。

・下描き

下描きです。描きやすさ重視でCLIP STUDIO PAINTのデGペンで描いていきます。人物は比較的細かく、背景は変わる可能性が高いので、ざっくりと描いていきます。


CLIP STUDIO PAINTのデGペンで下描き。(クリックで拡大)

・ペン入れ
ペン入れをします。CLIP STUDIO PAINTのデフォルトのGペンでベクターレイヤーに黒色で描いていきます。


ペン入れはGペンでベクターレイヤーに黒色で。(クリックで拡大)


・下塗り+配色決定
パーツごとにレイヤーをわけて下塗りをします。ひたすらに気になる色を試していって一番しっくりくる組み合わせを考えていきます。

基本色は3色~4色で構成します(肌色を除く)。今回はパープルをメインカラーにすることで、背景の色味がどんな色になってもリカバリーできるようにしてみました(パープルはレッドとブルーを混ぜた色なのもあり、背景が寒色暖色どちらの色になったとしてもある程度の調和が取れるため、重宝してます)。


パーツごとにレイヤーをわけて下塗り。(クリックで拡大)

・影・ハイライト
影は人体をピンク、無機物をパープルで塗っていきます。パーツの境目(例:肌と服の境目)などの部分は影の上からまた濃い紫で塗っていきます。


人体をピンク、無機物をパープルで影を付ける。(クリックで拡大)

・背景
色塗りに関して行っていることは人物と変わりはないので省略します。女性キャラがマスクにラバースーツ衣装のセクシーよりのデザインだったので、背景デザインは少しギャップと違和感を出すために幼い少女趣味感を前面に出したかったのと、ハートのモチーフをたくさん描きたかったので、小物は柄物を多めにしました。


背景は幼い少女趣味感を前面に。(クリックで拡大)


・仕上げ
本来は線画の色味を変更し馴染ませた後に色味調整を行いますが、今回はあえて黒色1色にしたかったので線画の色味調整は飛ばします。線画の色味変更は線画を近い色にすることで背景と人物を馴染ませて違和感を軽減するといったメリットがありますが、今回のように画面にあえて違和感を残したい場合は線画を黒色のままにしておきます。

色味調整は新規レイヤーを乗算やオーバーレイなどで作り、絵のレイヤーの上に被せていく方法で変えていきます。

CLIP STUDIO PAINTには色調補正機能があるので、そちらを使って色味に統一感を持たせる方が本来は違和感なくバランスが取れる上にできることの範囲が広いのでベストなのですが、
(1)写真や実写の映像からインスピレーションを受けることが多いので、カラーフィルム越しのような色味にしたいから
(2)上からベタ塗りの色をテクスチャのように載せて統一感を出すというアプローチ自体がデウスエクスマキナのようなメタ的な無理矢理さがあって面白いから(メインテーマである「絶対的強者の搾取」との相性が良いアプローチだから)
(3)数値やグラフで調整する色調補正機能と違って、ベタ塗りレイヤーでの調整だと他の作品でもすぐに再現できるから

などの理由から、個人的にはこの方法で行うことが多いです。


色味調整を行い仕上げ。(クリックで拡大)

・最後に

イラストや漫画などの二次元的な作品の素晴らしいところは、その画面すべての物、つまりは線、影、デザイン、色など…が作者の意思を介して作られてるところにあると思います。なので「そのデザインはなぜそうしようと思ったのか?」「その人間はなぜそこにいるのか?」などの意味付けを一番重視して描いています。そうすることで目標(何を伝えたいか)が明確になるため、どういう描き方が、表現が効果的かが見えてくるかと思います。

長くなりましたが、最後まで見ていただきありがとうございました。説明があまり得意な方ではないのですが、不得意なりに頑張って製作工程と絵に対する考えを文章にしてみました。参考になれば幸いです。


イラスト解説。(クリックで拡大)



次回はまさかのさむかわさんの予定です。
(2020年12月10日更新)

 

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