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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 62

山月まり

山月まり(やまづきまり)。山形県在住。東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科卒業。イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活動しています。出羽の民話や山岳信仰、ニホンオオカミを中心に信仰と人の融和を描いています。
https://maripoleon.tumblr.com/

 


●民話を題材としたイラスト制作

・アイデア・構想
今回は山形県鶴岡市大山地区に残る、「めっけ犬伝説」を題材としたイラストを制作したいと思います。神社の裏山に棲み、毎年祭りの日に美しい娘を人身御供として要求していた化け物を、「めっけ犬」という犬が退治したお話です。

詳しくはコチラ
http://ooyama-kankou.jp/inumaturi.html

ここから、「娘」と「めっけ犬」をモチーフとして描いていきます。
使用ツールはAdobe Photoshop CCです。


・テクスチャを乗せる
まず、作品に質感を出すためのテクスチャを乗算で重ねていきます。ここではフリー素材サイトから持ってきた和紙っぽいテクスチャを使用。テクスチャが濃いかな? と思ったら、なんとなくトーンカーブで色を好みに調整します。


和紙っぽいテクスチャを用意。トーンカーブなし。(クリックで拡大)

こんな感じにトーンカーブを調整。(クリックで拡大)

・ラフスケッチ
ラフを描いていきます。「めっけ犬」と「娘」をそれぞれ別のレイヤーで描きます。


Photoshop上でラフを描いていく。(クリックで拡大)


・線画
ラフスケッチの上から線画を清書していきます。これもそれぞれ別レイヤーで描きます。


清書していく。(クリックで拡大)

・色を置く
それぞれのレイヤーの下に色レイヤーを作り、ざっくりと色を置いていきます。


色を付けていく。(クリックで拡大)


・描き込んでいく
衣服のシワ、毛並みを重点的に描き込んでいきます。着物の絵柄は乗算やハードライトのレイヤーを色レイヤーの上に作り、クリッピングマスクで描き込んでいきます。絵柄は「化け物(ムジナ)」と「血」にしました。

描き込みの途中から「線画」と「色」のレイヤーを結合します。ここで修正したいところがあればちょっと描き直したりします(髪飾りを修正しました)。


レイヤーごとに描き込んでいく。(クリックで拡大)

線画と色のレイヤーを結合。(クリックで拡大)


・仕上げ
描き込みが終わったら全体のバランスを見て、配置を若干変更します。物足りなかったので、駕籠から見える裏山をイメージした背景を描きました。最後にタイトル、サイン、日付を書いたら完成です。


完成イラスト。(クリックで拡大)


・ポイント

いろいろと技法を書いたのですが、個人的に一番大事だと思うのは、「描く題材に対してどこまで理解を深めることができるか」だと思います。

例えば、頭に題材の情報をたくさん入れておくと、描く途中で行き詰ってしまったときに役に立つことがあります。今回に関して言えば、「娘」の着物の絵柄を決める際に「ああ、そういえば裏山の化け物の正体は2匹のムジナだったな」とアイデアを出せたり、背景に困ったときに、「化け物が棲んでいたのは裏山だったな。娘やめっけ犬は駕籠で運ばれていたな」ということを思い出し描くことができました。

調べたものすべてを描き出すことは難しいですが、たくさん引き出しを持っておくと、描くモチーフの取捨選択が楽になるかもしれませんね。最後まで読んでいただきありがとうございます!



次回はホジョイさんの予定です。
(2019年12月9日更新)

 

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