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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 61

大宮いお

大宮いお:埼玉県在住。デジタルツールでイラストレーションを制作しています。小説の装画を中心にお仕事をさせていただいています。
https://omiyaio.tumblr.com/

 


●個人作品の制作工程

個人作品の制作工程をご紹介します。この作品は、「夕暮れ時、濡れた砂浜に佇む2人の子供」というモチーフで制作しました。過去作を再構成した改作になります。

イラスト制作では、風景の中に佇んでいる人物をモチーフにすることが多いです。日常生活の中のふとした瞬間に感じる非日常感を込めていけたらよいなと思っています。締切のない個人制作では、なるべく今まで使ったことのないツールのテストや何らかの実験・模索を兼ねることにしていて、この作品では以下の目標を設定しました。

・3D CGを使った被写界深度(光ボケ)表現
・グレースケール画像をグラデーションマップで着色する手法のテスト


完成したイラスト。(クリックで拡大)

・使用ツール
Huawei MateBook M5と純正スタイラス、Blender(3D CG制作ソフト)、Krita(画像編集ソフト)

・資料集め
着想を得たいときや資料を集めるとき、私は以下の写真投稿サイトをよく見ています。

・GANREF (https://ganref.jp/)
・PHOTOHITO (https://photohito.com/)
・Flickr (https://flickr.com/)
・Yourshot (https://yourshot.nationalgeographic.com/)
・Unsplash (https://unsplash.com/)

このうちUnsplashは投稿された写真を素材として使うことができ、写真の品質も高いので重宝しています。

・3Dシーンの作成
Blenderで地面となる平面を作成し、表面の質感の設定を練っているところです(番号は作成順)。子供のシルエットが引き立つように、また、砂地であることが見て取れるように光が粒状感を伴ってやわらかく拡散するような調整をしました。同時に構図やボケの大きさの設定もいろいろ試行しています(画像1)

最終的にレンダリングしたもの。縦長と横長のフォーマットで迷っていましたが、結局どちらも表現上の必要性を感じられなかったので間をとった正方形のフォーマットに落ち着きました。また、奥行き感が演出できるよう3D空間の奥の方に鳥の群れを追加しました。ボカしてしまいましたが種類としてはウミネコを想定しています。鳥は画面に動きが生まれるので好きなモチーフです(画像2)。


画像1:構図やボケの設定を考える。(クリックで拡大)

画像2:画面奥に鳥の群れを配置。(クリックで拡大)

砂浜の材質設定です(画像3)。

画像3:砂浜の材質設定。(クリックで拡大)


・人物の描き込み
3Dシーンを画像として出力して、Kritaで開き、Unsplashの写真素材(右)を参考にしつつ子供を描き加えました。イメージの段階では他に子供が砂浜を走っている案があったのですが、資料集めの際に見つけたこの写真の雰囲気がとても素晴らしかったので、ありがたく使わせていただくことにしました。

逆光のイラストを制作するときに人物を完全なシルエットにしてしまうと情報量が減りすぎる感じがするので、輪郭の内側も少し見える程度に描きこむようにしています。当初の予定では彩色をグラデーションマップだけで完結させるつもりでしたが、いったん完全なグレースケール画像で試してみたところ色数に若干物足りなさを感じたので、人物に少しだけ色を付けました(画像4)。


画像4:子どもを配置する。(クリックで拡大)


・着色

グラデーションマップで着色します。正確にはBlenderの画像加工機能である「コンポジットノード」で一般的な画像編集ソフトにおけるグラデーションマップに相当する加工をします。なぜ画像の加工をBlenderでしているのかを聞かれることがたまにあるのですが、実のところBlenderの習熟をついでに図りたいから…というのが主な理由です(画像5)。


画像5:Blenderでグラデーションマップを加工。(クリックで拡大)

今回使用したコンポジットノードのセットアップです。着色と併せてグロー効果の付加とトーンカーブによるコントラストの調整を行っています。前工程で人物に付けた色を活かすため、グラデーション適用前の画像を薄く合成しています(上図の(A)の部分)。

あとは画像を出力し、トリミングして完成です。


完成。(クリックで拡大)



次回は山月まりさんの予定です。
(2019年11月11日更新)

 

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