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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 59

紙谷俊平

かみやしゅんぺい:東京都在住。テキスタイル・デザインの仕事の傍ら、イラストレーションを描いています。青山塾19期~21期。ペーターズギャラリーコンペ2018、五月女ケイ子賞受賞。

 


●一枚の絵を描く

昨今、注目されるグラフィックといえば、動画やゲームのことなのかもしれません。美術(アート)の世界は言葉のゲームと化しているとも聞きます。そもそも一枚の絵(絵画)を描くことは時代遅れな行為なのかもしれません。しかし私はイラストレーションの名を借りることで、ただ絵を描くことを楽しみたいと思っています。一枚の絵には一枚の絵ならではの面白さがあると思っています。


完成したイラスト作品。(クリックで拡大)


・何を描くか(構想)について

まずは何を描くか。できれば見る人をエンパワーするような、肯定的なモチーフを描きたいものです。私の場合は人物を描くことが多いので、まずはどんな人物を描きたいかを思い浮かべます。そしてどんな背景や状況が相応しいか、構図はどうするか、色はどうするか、まで想像します。ある程度完成に近い、統一的なイメージが頭の中に浮かんでから、初めて描くことに着手します。
もちろん後からいくらでも修正するのですが、統一的なイメージが浮かばない段階ではまだアイデアが散漫であり、図像としての力が弱い気がするからです。イメージが浮かんだら、すぐにメモを取るようにして、スケッチを描き留めます。


イメージが浮かんだらメモを取るようにスケッチする。(クリックで拡大)


・資料(写真)について
イメージを具現化するために資料を用意します。


資料となる写真を集める。(クリックで拡大)

人・モノ・風景の姿、かたち、構造、はなるべく正確に捉えたいものです。服のしわや動物の体型、建築物などなかなか記憶や想像で描くことは難しいです。絵に説得力を持たせるために写真を資料として絵を組み立てます。
しかし、どんな写真もその写真自体がすでに視点や構図を持っているため、描きたい絵と組み合わせることはなかなか難しいものです。写真に依拠し、写真を主体にし過ぎると絵が写真に似てしまい、自分なりのかたちを表現することが難しくなってしまいます。
自分の絵と組み合わせながら、資料の不適合を、想像力とごまかし力で補うことが必要となります。


・ラフ(かたちと構図)について
ラフで、かたちと構図を決めます。かたち(造形)は、手グセによるゆがみを個性と思って、あまり修正しないようにしています。構図は、カメラアングルを決めることと、画角の中のモノとモノを適切に配置することです。


ラフを描き、構図を決めていく。(クリックで拡大)

鉛筆と消しゴムで何度も描き直します。絵の見せたいところを、しっかり見せるための工夫をすることが、構図を作ることだと思います。

・着彩について
着彩は、私の場合、良いと思える配色イメージを下絵とは別に用意しておき、塗り絵のように色を割り当てていきます。色相はだいたい3系統色くらいで全体を構成して、全体のまとまりを損なわないようにします。


配色イメージを別に用意し、色を割り当てていく。(クリックで拡大)

明度も大切です。濃淡の色をバランスよく画面の全体に配することができれば、それは構図を設計することにもなります。濃淡差をつけて色のメリハリをつけるか、逆にぼんやりさせるか、全体の雰囲気を決めることもできます。
筆触を意識しながら、かたちに逆らわず筆を運び、塗りながらかたちを整えていきます。


・異化するということ
以上のように、さまざまな要素を選択し、組み合わせることのプロセスが、絵を描くことの面白さそのものだと思います。正解はなく、あくまでも私のやり方ですが、それがゆえに私の絵の個性なのでしょう。

絵の面白さ、に関して付け加えるとすれば、「異化」ということです。 日常的に見慣れて素通りしている現実を、いつもとは異なる、ハッとするような新鮮な視点をもって見る、その感覚を絵で表現すること。私は絵を通して、そのような視点やアイデアを問いたいのかもしれません。

昼寝をした後や、おやつ休憩をした後のような、新鮮な眼差しとスッキリした脳で、絵を描いていければよいのかな、と思っています。


次回はしらこさんの予定です。
(2019年9月9日更新)

 

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