● 書籍『幸福な水夫』の装画
2017年12月13日(水)から2018年3月11日(日)まで、青森県の八戸ブックセンター開設1周年記念のギャラリー企画にて「紙から本ができるまで展」が開催されていました。今回の展示は、八戸出身作家木村友祐さんの最新刊『幸福な水夫』が出来上がるまでの過程を体感できる内容となっていて、こちらの書籍の装画を担当させていただきました。装幀は佐藤亜沙美さん。会期中は併せて原画やラフスケッチの展示もされ、完成までのフローが視覚化されています。
・イラストの構想
決して華やかではないけれど、黙々と地に足をつけ誇りを持って生きる主人公の凜とした姿を、本作の舞台、青森の自然と併せて表現したいと思いました。
・使用画材
アクリルガッシュ
・制作過程
作品のゲラを読み、打ち合わせにてイメージのすり合わせをしました。まず、舞台である青森とタイトルの‟水夫”から海のイメージと、老人、猫やウミネコというモチーフが挙がりました。
初案ラフ(クリックで拡大) |
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キャラクターがやや具体的過ぎてしまうので、顔をモチーフで覆うイメージへ変更。
変更後ラフ(クリックで拡大) |
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彩色し、イメージを固めていく(クリックで拡大) |
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モチーフの位置や、老人の肌質や姿勢など、顔を覆うからこそ分かりづらくなってしまうので凛とした老人像を出すのにやや苦労しました。彩色もトレペに印刷されることなども考慮し、色合いや濃淡を気をつけました。
完成図(クリックで拡大) |
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表紙(クリックで拡大) |
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カバー裏(クリックで拡大) |
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裏表紙(クリックで拡大) |
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カバーはトレペの裏から印刷し、表紙の芯紙に印刷された海の絵を浮き立たせ、人物と重なり合うというすごくこだわりのある作品になっています。本文も展示内容である、『紙から本ができるまで』に沿って、短編ごとに紙やフォント、文字組みに変化をだし、本自体が芸術作品のような仕上がりになりました。
世界観をあぶり出すのはものすごく大変な作業ですが、デザイナーさんや作家さんの思いや意見を交えて1つの作品を作り出すのは、すごく勉強になり充実したものとなりました。
次回は北村佳奈さんの予定です。
(2018年3月13日更新) |