●月刊絵本の副読本『ワンダー通信』表紙絵
作品について
布絵もさまざまな表現や使い方(例えば一枚絵が基本とすると、一部を差し替えられるようなものにしたり、一部を半立体にしたりなど)ができます。私のスタンダードな描き方から、『ワンダー通信』表紙絵(世界文化社)の制作過程をご紹介します。
画像1:『ワンダー通信』(世界文化社) 表紙用作品(クリックで拡大) |
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ラフ~完成まで
・ラフ
ラフは紙に手描き(色鉛筆、水彩ペン)で作成することが多いですが、Photoshopで着彩することもありますし、実際にパーツのイメージを作った上で、ご提案することもあります。今回は、「秋の号(10月号)なので、秋の風景を子供や動物を交えて賑やかに描いてほしい」というご要望でした。月刊絵本の副読本であることから、お子さんから親御さんに親しまれるよう、秋の味覚を持ち寄ったパーティが開かれている森のワンシーンを描くことにしました。
画像2:手描きラフ(クリックで拡大) |
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・ラフチェック
ラフをご確認いただいた際、「テーブルと手前の方にもう少しアイテムを足して、少し賑やかにして本制作に入ってほしい」というご要望をいただきました。その点に気をつけながら、本制作に入ります。
・本制作
仕事絵では制作過程を撮影しないので、イメージ写真を撮りました。参考にご覧ください。原画は、掲載サイズより少し大きめに制作しています。まずは、森や地面の素材づくりから。
秋色のグラデーションに合う生地がなかったので、染色から始めました。
画像3:秋色に染色(クリックで拡大) |
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次に、切り絵や貼り絵と工程が似ているかも知れませんが、布で各パーツを切り出します。切り絵、貼り絵と違うのは、そのパーツを縫い留める点でしょうか。
画像4:パーツを切り出して縫い留めていく(クリックで拡大) |
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一番小さなパーツが落ち葉やドングリですが、そちらも布を切り出して描いています。
画像5:小さなパーツも手作業で切り出す(クリックで拡大) |
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そこから、私はほとんどの場合ミシンを利用して(駆使して)描きます。5mmくらいまでのパーツであればミシンで縫い留めることができます。そのため、大きなものから小さなものまで対応できますし、作業もアナログとはいえ、速いほうだと言われます。手刺繍を用いるのは主に質感で必要な時と、人物の表情入れ、ミシン針の穴が目立たないほうがいい繊細な作業のときです。
素材選びはいつも気を遣う部分です。布でも、布目が細かいものやざっくりしたもの、薄いもの、厚みのあるものと幅広いですし、色もさまざまで、この絵には何が一番合うのかを考えます。ラフの色味と手持ちの布のイメージが合わないこともあるので、毎回試行錯誤です。今回は、紅葉のグラデーションや素材感(クマにツイード生地、テーブルクロスにシワを寄せるなど)で、布絵だと感じていただけることを意識して描きました。 布で描いていても、表情や仕草は硬くならないよう、柔らかく描くことを常に心掛けています。
画像6:イメージに合う素材を探し出す(クリックで拡大) |
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・納品~完成
撮影以降の作業を世界文化社の方が行ってくださったので、原画提出で完了となりました。依頼内容によって、撮影を行い画像データで提出することもあれば、Photoshopで色の補正や文字入れなど行って提出する場合もあります。形になってくる時が、やはり嬉しいです。
画像7:完成した表紙(クリックで拡大) |
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・使用ツール
画材は布と糸、原画制作はミシンと手刺繍。データ納品が必要な場合は、撮影からPhotoshopの作業も行っています。
次回は亀山鶴子さんの予定です。
(2017年10月13日更新) |