●演劇のポスター、フライヤーを作る
・劇団5周年を記念した公演「熱海殺人事件」の宣伝美術
毎年宣伝美術を担当している、北区AKTSTAGE劇団5周年公演のためのポスターとフライヤーの仕事を紹介します(画像1)。
画像1:完成したフライヤー(クリックで拡大) |
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・構想を練る前に
公演の脚本に目を通してから、原作の「熱海殺人事件」(つかこうへい著)を読みます。また、登場人物を演じる役者の方たちについても調べますが、クライアントから特に要望のない限り、絵は役者の方たちに似せることはなく、原作と脚本からイメージを膨らませていきます。
・アイデア
原作中での物語は、ほぼ警察署内の一室で繰り広げられる会話劇のため、室内の窓越しから見える夕暮れ時の海を背景に、主要の登場人物3人のキャラクターを踏まえて描いていきました。
●ラフスケッチ
ラフスケッチは細かく描かず、清書として何枚か描いたうちから、一番良い線や形になったものを使用しています。スケッチを簡単にする代わりに、文章で手順や方法を細かく書き、作業の工程を整理しています。
ラフスケッチをクライアントに提出する場合は、色の指定もしています。演劇の場合、公演までの日数が短いため、ラフスケッチを何度も修正することは少ないですが、映画の宣伝美術は公開まで数ヶ月あるので、ラフスケッチのやり取りをする枚数や、打ち合わせの時間を多くとっています(画像2)。
画像2:ラフスケッチ(クリックで拡大) |
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・使用ツール
線画を描く際にはサジペンとインクを使用し、ペン先の太さを2~3種分けて使い、線に強弱をつけています。紙は古紙や画用紙など、厚さ・色味・素材を含め、ペンとの相性を実験しながら選んでいます。今回は白いテクスチャーの少ない紙を使用しています(画像3)
画像3:画材。(クリックで拡大) |
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展示会などで原画を発表する機会がある場合は、色面は水彩絵の具で塗り、その後に絵を切り取ってコラージュしていますが、仕事で描く場合はその作業をパソコンに置き換えています。限られた時間の中で、色の調整や配置などの変更に早い対応ができるよう、線画と色面を別に分けて描いてスキャンし、Photoshopで画像の明度やコントラストを調整します。完成した絵をIllustrator上で配置し、色をつけています。今回は線画と色面の重なりやズレに気を配り、透明効果を利用しています(画像4、5)。
画像4:線画。(クリックで拡大) |
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画像5:線画と面。(クリックで拡大) |
・Photoshopで仕上げ
ポスターなどの宣伝美術を担当する際には、作品のタイトルも同時に作成しています。普段から紙を大量にストックし、切れ端などから面白い形を見つけ作品のイメージに合う文字を作り、紙に貼っていきます。
絵の時と同じように、完成した文字をスキャンしIllustrator上で配置します。白ぬきにした文字と、オレンジ色の文字を動きをつけながら組み合わせていきます。
完成直前まで細かい調整に対応しなければならない大変さはありますが、映画や演劇を制作する方たちと、時間をかけて話し合いながら作品に関わる過程はとても勉強になり、やりがいがあります。
次回は平木元さんの予定です。
(2016年12月9日更新) |