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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のイラストレーターに旬のイラストを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 21

コバヤシ麻衣子

1977年神奈川県生まれ、東京都在住。武蔵野美術大学短期大学部空間演出デザイン科を卒業後、企業やフリーランスでデザイナーとして活動しながら2002年より作家活動を開始、2007年に渡英。翌年、英国国立ノーザンブリア大学大学院より修士号取得。現在は主に国内での展示を中心に活動している。
http://maikok.com

●個展「Living in the city」より

開催告知用のメインビジュアルとなった作品について

・作品について
この作品は、2016年3月11日から4月3日まで六本木ヒルズ・A/Dギャラリーで開催された個展「Living in the city」に出品されたものです。開催告知用のメインビジュアルとして案内状やWebサイトでの告知などに使用されました。また、個展のテーマや他に制作された新作群も、この作品をきっかけに展開させていきました(画像1:案内状完成品)。

ヒルズフォトニュース」から、個展の紹介記事がご覧になれます。


・使用画材について
絵具は、ターナー色彩さんのゴールデンアクリリックスで、伸びも発色も色数も気に入っていて、作家活動を始めた当初より使い続けています。下地材のホワイトジェッソは、今回は主に描画用として使っています。 支持体には木パネルを使用し、その上に和紙をランダムに割いたものをコラージュするように全面に貼っています。使用した和紙は佐賀県の肥前名尾和紙という手漉き和紙です。原料に楮ではなく梶の木の皮を使っていることから紙の厚さによらず非常に丈夫なため、硬毛の筆やハケを好んで使い、絵具の層をいくつも重ねながら時に荒々しく絵具を乗せていく描画スタイルの私には相性が良いようです。

また、アクリル絵具の発色に特徴があって、独特の半ツヤ消し効果と絵具の生々しさが抑えられるような色の沈み方をします。それと筆跡が割と鮮明に残るので、それらの効果が造形表現として最終的に成立するようにコントロールが必要でした。ビビッドな色は独自の鮮やかさを保つことができますし、黒色などのダークな色を使って闇のような空間を画面上に表す場合には、早い段階でそれを感じることができます。私にとって、和紙は非常に興味深く研究しがいのある画材のひとつです。 その他、色鉛筆を使っています。画面上の線表現において、微妙な色合いや立体感を出したいところ、キワの処理などに使用しています。


画像1:完成した案内状(クリックで拡大)
 


●下絵やラフは描かないワークフロー

・制作工程
できあがった支持体に、下地材を塗らず直接アクリル絵具で描いていきます。和紙の質感や漂白されていない生成りの色から感じるインスピレーションを大切にしたかったからです。そして今回は、私にとっての「新たな造形表現に出会う」ということが1つテーマとしてあったので、事前のラフスケッチは特に描きませんでした。ちなみに下絵についても、本作品では描いていません。まずは直感に従って、筆が止まるまで画面から見えてくる色を置いていきます。その色面の中から、私がメインモチーフとして描き続けている「動物ような人のような生き物」の形を見つけ、ざっくりと存在させます(画像2:画面の変化)。


画像2:直感に従って色を置いていく(クリックで拡大)
 


メインモチーフの形や表情をさらに探っていきながら、同時に背景にも色や形を置いていく、という工程を繰り返します。このあたりから、モチーフをどのような存在として描いていくのかなど、制作テーマへの意識と画面との対話や直感といった感覚的なものとの間を行き来しながらの長い作業が続きました。画面がどんどん変化していく段階であり、一番苦しい時期でもあります(画像3、4:画面の変化)。


画像3:画像がどんどん変化していく。右も同じ。(クリックで拡大)

画像4:(クリックで拡大)


最終的に、梯子のような形態はグレーの色面下に収め、そのグレートーンの調整と周辺にあるビビッドな色との対比、花モチーフの処理、メインモチーフの表情や形態の修正を中心に完成へと進んでいきました(画像5:完成作品)。


画像5:ビジュアルの完成(クリックで拡大)
 

・制作テーマ
事前のラフスケッチを描かず、直感を多用し色を大胆に使うこと、グレーの色面を画面上で大きく扱うことなど、これまでの作品にはない要素を持つ本作品が生まれた背景には、上記工程の説明内にもあるように「新たな造形表現に出会う」ということと、自身の生活環境の変化がきっかけで、いつもの街並みを構成するグレートーンの建物のなかにある人々の気配やそれぞれの生活について思いを巡らせるようになったことなどが挙げられます。私自身や私を取り巻く環境の変化とともに、作品も変化し成長していくのだと思います。

・おわりに
個展「Living in the city」の終了後は、都内の建物の壁や自身が住むマンションのベランダの壁を、クレヨンを使って和紙の上にフロッタージュしたものとメインモチーフとを絡めて再構成するという実験的な作品を制作しました。また、グレートーンを大きく扱う新たな平面作品に取り組む等、同じ制作テーマで引き続き制作しています。今後もしばらくはこのテーマで制作をしつつ、いろいろな変化を柔軟に取り入れながら、表現の幅を広げていけたらと考えています。

2016年の11月30日から12月6日まで、日本橋高島屋の美術画廊Aにて開催予定の「春待の月 現代女流作家展」というグループ展に参加させていただきます。新作2点を出品予定です。点数は少ないですが、ぜひ会場に足を運んでいただけたら嬉しいです。



次回は本田 亮さんの予定です。
(2016年7月28日更新)

 

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