●アートコンペ出展用の作品制作
今回は、2024年5月にコンペに出展した作品の制作過程を紹介させていただきます。
タイトル「根のにわ底のにわ」。(クリックで拡大) |
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●使用ツール
木製キャンバス(F50号)、ジェッソ、アクリル絵具、オイルパステル(サクラクレパス)、ニス(水溶性、ツヤ出しとツヤ消しの2種類)。
●構想など…
「原風景」をテーマに「わたしのおにわ」というシリーズを描いています。私が生まれ育った富山県の古い家や庭の思い出を元にしたシリーズです。
●ラフスケッチ
常に持ち歩いているノートに思いついたら描き付けています。
ラフ画。(クリックで拡大) |
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●ワークフロー
(1)木製パネルにジェッソを二度塗り、乾燥後、青い色鉛筆でざっくりと線を引いています。かなりラフ。
下絵。(クリックで拡大) |
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(2)アクリル絵具でいったんすべて塗ります。
下塗りは紺色の絵の具で下絵の線を拾っています。(クリックで拡大) |
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アクリル塗りの途中。人物以外はこの後の工程でスクラッチをするので、絵の具の段階ではかなりおおらかなタッチで描いています。(クリックで拡大)
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アクリル塗りの過程終了。クレパスで暗めの色を掛けることを念頭に置いて、敢えて鮮やかで強めの色で塗っています。(クリックで拡大) |
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(3)保護用のツヤ出しニスを掛けます。人物のみマスキングをして保護します。
(4)半透明ビニールを掛け、マジックで元の絵の輪郭を取ります。これがないと次の工程でなんにも分からなくなるので私は「地図」と呼んでます。
「地図」(ガイドライン)。油性マジックで輪郭を拾っています。(クリックで拡大) |
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「地図」(ガイドライン)全体図。被せているビニールは半透明ゴミ袋を切り開いたものです。クレパスの乾燥防止も兼ねています。トレーシングペーパーなども試しましたがゴミ袋が今のところ一番扱いやすいです。(クリックで拡大)
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(5)全体をオイルパステルで塗りつぶします。今回は黒、青を中心に、光を表現したい部分には白、黄色、虹色を入れました。色の境目は指で直接混ぜたり、かなり自由です。
クレパスで塗りつぶした状態。(クリックで拡大) |
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(6)(4)の輪郭を頼りにスパチュラで削り出します。
スクラッチ過程のアップ。(クリックで拡大) |
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スクラッチ過程のうち、白系の部分。被せる色の濃淡・明暗によって削りの効果が逆に働くので、淡色については今も試行錯誤中です。(クリックで拡大)
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スクラッチ過程の全体図。クレパスが作業中に擦れるのを防ぐために、左から右へ、上から下への順番で削ります。(クリックで拡大) |
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(7)(3)のマスキングを剥がします。
マスキング剥がし。この作業が終わると全体が見えるようになります。(クリックで拡大) |
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(8)保護用のニスを掛けます。オイルパステルは触ると手が汚れるのでかなり厚く被せます。ツヤ出し2回→ツヤ消し2回。ツヤ消しニスは、展示の際にスポットライトが当たると反射で光ってしまうのを避けるために掛けています。
完成図。(クリックで拡大) |
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※制作は基本アナログですが、途中で修正したり構図を確認したりする時は、スマホの描画アプリ(無料のSketchBook)に画像を取り込んで修正箇所を確認したりします。
今回は、完成してから画面中央の白梅の花の数が多すぎて雑多な印象だったので、消す花をどれにするか、描画アプリで決めました。(クリックで拡大) |
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●絵のポイント、技法、テクニックなど
スクラッチ画は、下の色をランダムに塗って、上にかぶせた濃い色を引っ掻くことで、線が虹色になる「線で描く」ものも多いかと思うのですが、いろいろ試してみて私は「下の絵もしっかり描く」という方法を取っています。
描いた絵をあえていったん埋めて、もう一度掘り起こすことで見えてくる過程は、頭の中で思い出す記憶や、夢に見る光景、生々しく辛かった出来事を一度心の隅にしまって、時を経てもう一度取り出した時の見え方にも似ているように感じています。
私がテーマとしている「原風景」―過去の記憶という意味でもあり、今の私を形づくる根幹―を表現するためには、今のところこの方法がベターかなと思い、描き続けているところです。
「わたしのおにわ」は、年1回ペースで行っている個展を中心に発表しております。
今年は「秋」をテーマに、10月25日(金)より大阪市北区中津のカフェギャラリーきのね様にて開催予定です。ご都合がよろしければぜひ遊びに来ていただけましたら幸いです。
次回は岡本健作さんの予定です。
(2024年8月5日更新) |