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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のイラストレーターに旬のイラストを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Illustrator FILE 107

いぬま たま

千葉県在住。女の子の絵を描きます。個展、グループ展、ギャラリー主催の公募展にて作品の発表をしています。アクリル絵の具や透明水彩、ペンなどさまざまな画材で制作します。
Twitter:@inumatama
instagram:@inumatama

 


●ギャラリー主催の企画展に展示するイラスト制作

水彩画を募集する企画展へ展示する用の作品を制作しました。いつも描いている女の子のモチーフで、同サイズのポートレート風イラストを連作で制作中です。額装した女の子の絵を撮影した時、天井の光が反射して顔が隠れた写真が撮れたことから着想を得て、制作をしました。


完成イラスト。(クリックで拡大)

●使用ツール

シナベニヤパネル(仕上げ用+作業用)、水張りテープ、水彩紙、下地(チタニウムホワイト、膠液)、透明水彩、色鉛筆、和紙、メディウム、水彩画保護ワニス、絵の具は国内外のメーカーの透明水彩絵の具をいろいろ。


使用ツール。(クリックで拡大)

●ワークフロー

制作準備(水張り、下地塗り、枠線引き)

下描き

透明水彩で着色

和紙を貼る

透明水彩で仕上げ

パネルに貼る

(1)制作準備
・水張り
今回は側面まで着彩したパネル仕上げの作品にするため、まずは、完成サイズより大きなパネルに水張りをします。

水彩紙の裏面を水でテカるくらい塗り、テカリが消えてしっとり湿るまで待ちます。上下左右を水張りテープを貼って乾かします。このときしわができていたら、やり直します。

・下地塗り
下地は、陶器の皿にチタニウムホワイト(粉タイプの顔料)、膠液、水を1:1:1~3くらいで混ぜます。配合比率は正確に量っていないので自信がありませんが、たぶんこれくらいです。乾かして塗るを2~3回繰り返し、回を重ねるごとに液を少し薄くするといい感じです。

・枠線引き
シャーペンや鉛筆で側面の分まで展開図のように、完成サイズの枠線を引きます。線が消えても大丈夫なように端は印を濃く書きます。ガイド用に中心の十字線もうっすら引いておきます。

(2)下描き
書き溜めたメモを参考にして、鉛筆で下描きを描きます。連作となるので画面での顔の大きさが揃うように調整しつつ線を整えていきます。下描きはこの後消すので多少ぼさぼさしていても気にしません。


▲参考にしたメモ、トリミングして十字線を書き足した。(クリックで拡大)

▲下描き。(クリックで拡大)

(3)透明水彩で着色(下塗り)
完成の色味を目指して計画的に、着色していきます。鉛筆の線は水や絵の具を含んだ筆でなでると下地の効果で消えるので、この段階で不要な線は消します。目も水彩色鉛筆を併用しながら描きます。


▲着色する。(クリックで拡大)

(4)和紙を貼る
透明水彩が乾いたら、全面に和紙を貼ります。薄い細川紙を使用しています。水で溶いたアクリルメディウムを中心から十字を描いて放射状に広げるように塗り、貼り付けていきます。和紙はかなり伸びるのでメディウムを薄めすぎても張り付かず調整が難しいです。繊維に絵の具をしみこませるため、画面が濡れた状態で着色します。


▲和紙を貼って濡れたまま着色する。(クリックで拡大)

▲乾いた様子。(クリックで拡大)

(5)透明水彩で仕上げ
輪郭をはっきりさせるため背景を赤で塗ります。下の色が透けて複雑な色味に仕上がります。画面右下は、背景の色を髪の部分にもかぶせて塗ります。髪の部分は右下が濃く、左上が薄くなるよう水の量を調節しながら一気に塗ります。これまでの工程の効果でくっきりとした色面が作れます。最後に水彩画用ワニスで画面を保護しておきます。


▲背景を塗る。(クリックで拡大)

▲塗り終わり。(クリックで拡大)


▲仕上がりの質感。(クリックで拡大)

(6)パネル仕上げ
作業のパネルから紙をはがし、防カビ系ワニスを裏面に吹きます。このタイミングでスキャンして画像をデータ化しておきます。絵の端から1cmくらいのところで切り取って、紙の裏面を濡らしパネルに水張りします。パネルに沿って折り目を付けることと、パネルの表面もしっかり湿らせておくことがきれいに貼るコツです。


▲側面まで絵が続いている。(クリックで拡大)


●絵のポイント

色味と質感に特にこだわって制作しました。肌は和紙を貼った後はあまり手を加えず、和紙の質感が他の部分より出るようにしています。

●技法について

制作前の準備について工程を丁寧に書かせていただきました。少し変わった制作方法を紹介させていただきましたが、準備と仕上げを丁寧に行うことが作品の完成度を上げるポイントだと思います。

技法については、絵を描くたびに発見があり、未だ模索途中です。はじめは色の乗りにくい水彩紙に、さらに色をのせるために和紙を重ねてみたのがきっかけでこの技法にたどり着きました。少しでも制作の参考になればうれしいです。




次回は高橋梨紗さんの予定です。


(2023年9月6日更新)

 

 

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