●体型の記録、YELLOWS
正直に言えば、写真について語ることも、撮るという行為そのものも、それほど好んでいるわけではない。写真をアートと捉えておらず、あくまで生計を立てるための職業として続けてきた。
1983年に帰国後、ファッション関連の撮影を中心に活動を開始。1989年に第一子が生まれたことを機に、彼女に残すものはないかと考えた。
当時、実家は原宿にあり、母親が小さな居酒屋を営んでいた。店の客層にはファッション業界や広告代理店関係者が多く、撮影した雑誌の新刊を毎号置かせてもらっていた。ある日、母から「どうして外人しか撮らないんだい? 竹下通りの女の子たちは足も長くて背も高いじゃないか」と言われた。
日本人の体型の記録として彼女たちを撮ることにした。タイトルは、日本人が黄色人種であることから『YELLOWS』とした。写真集として出版するにあたり、複数の出版社をあたった結果、刊行に応じるところが見つかった。

『YELLOWS』より。(クリックで再生) |
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同じく『YELLOWS』より。(クリックで拡大)
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同書は予想を超える反響を得た。その後、被写体をアメリカ人に広げた『AMERICANS』、さらに中国人女性を対象とした『YELLOWS 3.0』を発表し、日本から他国へと視覚的アプローチを広げていった。

『AMERICANS』より。(クリックで再生) |
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『YELLOWS 3.0』より。(クリックで拡大)
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●何を、何故扱うのか?
2022年、ディープラーニング(深層学習)を用いたtext-to-imageモデル「Stable Diffusion」が公開された。写真でもっとも重要なのはモデルである。『YELLOWS』は日本人の体型を記録することが主目的であり、モデルの選別を行わず、できる限り多くのサンプルを集めたことで、100人の撮影が実現した。
一方で、刺青を入れた妊婦の黒人女性を100人集めることは現実的に不可能だが、AIならそれが可能になる。ロケーションも、世界中どこでも設定でき、宇宙空間での撮影すら成立する。物理的な制約を受けずに視覚構成を展開できる点で、AIは新たな撮影手法として有効である。
「どのように撮るか」ではなく、「何を、なぜ扱うのか」が重要だと考えている。カメラであれAIであれ、技術はあくまで手段に過ぎない。何を見て、どこに焦点を当てるのか。その視点と構想こそが、あらゆる表現の起点であり、すべての根幹となると考えている。

AIによる作例。(クリックで拡大) |
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(2025年7月28日更新)
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