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リレーコラム
カメラマンの独り言
-CG、生成AI時代の写真生活-


第4回:濱本観月/Photographer


2000年代に入り「写真」はデジタルテクノロジーにより大きく変貌した。そして最近では生成AIやCGレンダリングといった写真によく似た「新ビジュアル表現」が台頭してきている。そんな時代にカメラマン、フォトグラファーはどう対応していけばよいのか? そんな思いを語っていただくリレーコラムです。




Photographer's Murmur 04

濱本観月(Mizuki Hamamoto):1993年長崎生まれ。2016年東京でカメラマンとして活動開始。2018年株式会社スタジオエビス入社。2021年チーフ就任後スタジオエビス退社、独立。2022年JR西九州新幹線開業記念全国版ポスター長濱ねる撮影。2023年拠点を東京と長崎へ。2024年NHK災害から命と暮らしを守るポスター撮影、長崎県広報写真・フイルムなどデジタルデータ化業務89,000点撮影。
Instagram:@mizuki_beachbook

●進む広告写真の生成AI化

フォトグラファーとして私は完璧を嫌悪する。それでいてなお、今までよりもより良いものをより多くの人々の心に落とし込める写真を撮りたい。この二律背反する考えを元にシャッターを切っているカメラマンは少なくないと思う。このジレンマに1つの答えを出したのが、生成AIの登場だと私は考える。

今回このAIと写真についてのコラムのお話をいただいた時、真っ先に思い付いたのがAIの登場以降の広告写真の減少である。ただでさえ消費されるスピードの速い広告写真。駅張りポスターやCM、新聞はもちろんのこと、スマートフォンの中にでも広告写真は溢れている。SNSの普及により、今までよりも多彩なバリエーションの広告写真に触れることができるようになった。

実際にすべてがAIで制作された広告にも触れたが、一見違和感なく作られており、それらは今後、さらに加速度的に世の中に落とし込まれ消費されていくのだろう。


ラグジュアリーは、反射するカメラの映り込みをレタッチで消した。(クリックで拡大)。

 

●ライティング知識の重要性

AIの台頭には、フィルムカメラからデジタルカメラに移行した当時の変遷と似た空気を感じているが、私の中のAIと写真の付き合い方はまた別物である。

実際私が撮影に使っていただく機会の多い建築写真やラグジュアリー撮影、ポートレート撮影などでのレタッチ作業において、不要なものを消したりするのは致し方ないと思われる面もあるが(それは窓に映る反射であったり、物自体に映り込むカメラであったり)、生成AIによって、ないものをあるようにするのは、もはや私の中で写真の枠組みを超えている。

確かにAIによってさまざまな表現の幅は広がったように思われる。ただ、クライアントの前で複雑なライティングを使いこなして撮影する現場の空気感に馴染んだ身としては、AIによる作品はどうしても理解し難い面が多々ある。それは私自身の使いこなしが追い付いてないのかもしれないが。

今後、基本的なライティング知識、撮り方を知らずにすべてを生成AIでまかなうと言う人の台頭も考えられるが、それはもはやカメラマンとは言えないだろう。それは、生成AIを使いこなした仕事であり、ある水準まで完璧に行われるが故に、生成AIによる選択肢の減少、限界が起こりうるとも私は考える。

AIとは、CGとは、写真とは…。その答えは日々思案の中にある。それらは押したら跳ね返されるゴム毬のようだ。抽象的な答えになってしまうが、カメラマンは、そのジレンマの中を生き続け、シャッターを切り続けていくしかないと私は考える。


モデルはライティングのみで撮影。(クリックで拡大)。

(クリックで拡大)。


(クリックで拡大)。

(クリックで拡大)。

●クライアントニーズにどう応えるか

これからの生成AIを加味した上で、我々カメラマンのスタンスについて考えてみる。

写真と一言で言っても、それは幅広く多岐に渡るジャンルに分類される。広告写真であったり、家族写真であったり、建築写真であったり、宣材写真であったり…実にさまざまな被写体に細分化される。

なかでも広告写真や建築写真などは、これからどんどん生成AIの普及を受けて、少なからずカメラマンだけでの仕事の減少は否めないだろう。

しかし私の考えるカメラマンとは、モデル撮影でも物撮影でも現場の空気感をまず第一に考え、クライアントのニーズを満たすライティング知識を持ったものなのである。

オールドスタイルと言われようが、スタジオマンからステップアップしていき、そこから数年かけて作品撮りはもちろんのこと、並行し直アシやフリーのアシスタントを重ね、プロのカメラマンの技に触れ、さまざまな現場の流れ、ライティングを学んでいく。そうやった経験を経て独立し、さまざまな局面に柔軟に対応できることがカメラマンではないかと考える。

こういった経験の上で生成AIについても学び、クライアントが求めるニーズを自分の技術と生成AIの可能性とともに、自分の写真の中に落とし込んでいくことが、これからのカメラマンに求められるスキルではないのだろうか。


窓の反射、カーテン紐をクライアントニーズで消す(カーテン紐に関してはすべててではない)。(クリックで拡大)。

窓に反射した蛍光灯の光は残してほしいと指示があったのでそのままにした。(クリックで拡大)。


合成処理は行わず、外に雰囲気にそぐわぬものが写っていたのでそれらを消す。(クリックで拡大)。

窓の反射やカーテン紐をクライアントニーズに応え処理。(クリックで拡大)。


正面からの写真だったので、映り込むカメラと私自身を消す。(クリックで拡大)。
 


次回のコラムは増田一真さんの予定です。

(2024年12月10日更新)

 

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