▲SONY α7 Ⅲにて撮影。自粛期間中、家でよく野菜を撮影していた。(クリックで拡大) |
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▲(クリックで拡大) |
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●生きることに近づきたい
世界的なコロナウイルスの流行以降、豊かなくらしってなんだろうと考えている。
これまで外出が多く、家でほとんど食事をしていなかった夫が、2020年3月以降、3食ご飯を共にできるようになった。
料理をする機会と時間が増えたので、いろんな野菜を買うようになった。これまでいかに自分が「調理するのに慣れている」または「調理がしやすい」野菜ばかりを買っていたかに気づいた。
農家さんから直接野菜を購入するようになり、初めて見るような野菜にたくさん出会った。綺麗な曲線を描いていたり、とても鮮やかな色をしていたり。太陽と土のパワーをしっかり吸収していることが分かり、味の濃さと豊かさに驚く。山菜は下処理に時間がかかるけど、独特の苦味がとても美味しい。そして造形が美しい。
食べた野菜のタネをとって植えてみたり、植物を買ってきて育て始めた。毎日少しずつ変化があり、朝起きてベランダを見ることが楽しみになった。ああこんな形で芽が出るんだ、葉っぱが伸びていくんだ。この野菜の葉っぱってこんな形だったんだ。こんなに虫がついちゃうんだ。虫は思ったよりもつくんだな。農家さんの苦労が分かり、農薬を使いたくなる気持ちも想像ができた。改めて感謝もわく。
これまで切り離されていた消費することと作ることに、ほんのほんのわずかだけど近づけたような気持ちになり、そしてそれはとても充足感のあることだった。
もっともっと生きることに近づきたい、そう思うようになっている。
これまでの私は、「生産性」を第一に考えなければならないと思い込んでいた。
急がなきゃ、何かを生み出さなきゃ、時間を有効に使わなきゃ。
自分や周りとの時間を大切にすること、社会へ目を向けること、動植物とのつながりに思いを馳せること、そういったことを犠牲にしていたと思う。
これからの生き方を考えながら、写真で表現を続けていきたい。
次回は汰木志保さんです。
(2021年8月10日更新)
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