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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 

第86回

うつゆみこ

1978年東京都荒川区生まれ。早稲田大学第一文学部を中退し、東京写真学園写真の学校卒業後、スタジオ勤務。2005年には第25回一坪展入賞、2006年には、第26回一坪展グランプリ、第29回写真新世紀でも佳作を受賞する。国内、海外での展示多数。東京写真学園写真の学校講師、カメラマンをしながら、自身のアトリエでも不定期で教室を開催している。最近はジンを多数制作している。
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▲「ジャックフルーツガール」 フルーツの髪の毛は、生まれてから一度も切っていない5才の娘の髪の毛を丁髷にして乗せています。ジャックフルーツが重くて腕がプルプルしていました。(クリックで拡大)

 
 


▲「パイナップルガール」 姉も地毛を被せています。チクチクして痛いとご立腹でした。妹とともに、私の手作りのワンピースを着ています。(クリックで拡大) 



▲「猫過菜髪」 帰国の前日に撮影し、大量の猫過菜を茹でて食べましたが、えぐみが強く辛かったです。鼻の穴の開いている瞬間の顔をセレクトしたので、本人は不本意そうにしています。(クリックで拡大)

 


▲「花韮少女」 花韮は茎がしっかりしており、配置するのがとても難しく、一時間くらい掛かってやっと撮りました。鼻に韮を突っ込んでも、動いたら努力が不意になることを理解しているので、動かずにじっと我慢してくれました。(クリックで拡大)。

 
 

●台湾で娘たちと撮影

私は今年の3月に、9歳と6歳の娘たちを連れて、台湾の花蓮で1ヶ月の滞在制作をしてきた。渡航を決める前はいくつかのことで悩んだ。まず、2年生の子の小学校を休ませて学習に支障を来さないのか。次に、毎日取っ組み合いの喧嘩をしている子らと一緒の空間で、果たして制作ができるのか。そしてどなたかに子供たちの面倒を見てもらう際、言葉の壁はどう解決するのか。

悩むこともあったが、1年半前に一度滞在制作のお話をいただき、子供がまだ小さいからとお断りして、今回また断ったら3度目はないかもしれない。また私は若い時から、海外は悩んだらとりあえず行く方を選んでいたので、今回もどうにかなるのではと、家族の心配を押し切っていざ旅立った。

花蓮のレジデンススペースには、制作のためのスタジオと小さなダイニング、キッチン、バスルーム、2部屋の個室があり、私たち以外にもう1人韓国人写真家の男性が暮らしていた。私たちはコロナの感染が広まりつつある日本から入国したということで、2週間の待機要請が出ていた(渡航後2日で子供の学校は休校になり、子を休ませた後ろめたさは消えた)。その期間に予定されていたワークショップは延期になり、原住民の方々の居住地に観光に行くこともままならず、しかしどうしても必要な素材集めなどには最低限外出し、到着から4日目でどうにか撮影を始めた。

コロナのことがなければ、学生さんが子供たちのシッターをしてくれる予定だったらしいのだが、それ知ったのは2週間が経ってからだった。子供たちはレジデンススペースにあった40冊もの日本語の絵本を一瞬で読み終わり、ゲームやYouTubeなどには触れさせない子育てをしている私のせいなのだが、現地で買ったレゴのようなおもちゃ、小麦粘土、お絵かきや折り紙など、毎日一定時間は遊ぶものの、外にもあまり出られず、私が制作中でもお構いなしでスタジオを駆け回った。

ライトを倒して壊されたり、制作中のセッティングを崩されたり、おんぶしたり抱っこしたり。「ママつまんない!」「ママ見て見て!」「ママ来て!」「お腹空いた!」「一緒に遊ぼうよ!」「公園行こう!」が1日中続き、それが2人別々のタイミングで来るものだから、制作に集中できるわけがない。日本で静かな時間をくれている小学校と保育園に心から感謝をした。日中にはどうしても集中できないので、早朝に起きて撮影をした。

制作する上で焦りもあった。滞在期間はちょうど1ヶ月だったが、最後の1週間は、レジデンス期間中の作品で構成した個展の準備に充てるため、正味3週間で作品を制作し終わらなければならない。ギャラリーはそれなりの広さがあり、私はたくさんの写真で埋め尽くす展示を好むので、作品数は増やしたい。気ばかりが急いて、ついつい過去の焼き直しのような作品を制作してしまった。

滞在も半ばに差し掛かった頃、一旦作品を見返してみると、日本にいる時と手法が変わらず、限られた数の素材しか手元にないゆえに、制限されて縮こまっていると感じた。このままでは台湾に来た意味を見出せずに滞在制作を終えることになる、どうにか成長したい、新しいことを試したいと思い、日本では作品としては撮らない、自分の子供を撮ることにした。

退屈している娘たちに打診してみると、待ってましたとばかりに大はしゃぎで、私の無茶な注文にも一生懸命応えてくれた。彼女たちにとって、私の写真は奇異なものではなく、生まれた時から傍にあるものだからだろう、誰よりも抵抗なくモデルをしてくれたように思う。

実は私は下の子が小さい時、作品のためにやや不適切な子供の写真を撮り、夫と揉めたことがあった。それ以来萎縮し、問題のない作品にも子供を登場させられていなかった。今回子供たちは撮影中もとても楽しそうで、作品は個展会場の入口に貼られて目立ち、花蓮の地方局で私の写真展が紹介されたので、誇らしげだった。

子をモデルに撮影することで、お互いに満ち足りた時間を過ごせた充実感があった。日本に帰ってからもお願いしようと思っていたが、半年以上過ぎてもまだ撮れずにいる。子供は育つ。急がなくては。

その代わりと言えるのだろうか、最近は15年ほど逃げていた人物での作品撮りを始めた。まだ慣れずに悩むことも多いが、こんなにも興奮を覚えるものだったのかと、これからの写真家人生が楽しみで仕方がない。



次回は山越めぐみさんです。
(2020年12月10日更新)


●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回

 

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