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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 

第69

越沼玲子

茨城生まれ。草木や猫の野生をはじめ、自然や動物の“息づかいや生きるリズム”を写し、自然や人などさまざまなつながりも少しずつ写しはじめる。個展は、2014年「Spirit in wild ~森の鼓動~」(コニカミノルタプラザ)、2017年「灯る」(ニコンサロン)、2019年「古くからある山道」(ニコンサロン)。2014年コニカミノルタフォトプレミオ特別賞受賞。2019年9月Neko Project,“La Fontaine Obscure”in Aix en Provence, in France に、また2020年入江泰吉記念奈良市写真美術館での新鋭展に出展予定。
https://www.instagram.com/akiko_koshinuma/

 


田舎で、散歩する姪と父。(Xperiaで撮影)。(クリックで拡大)
 
 

隙間の空いた蔵と、使われる日を待つ木々や耕耘機。(以下すべてCanon 5D MarkⅢで撮影)。(クリックで拡大)
 

急に全速力で走りだす猫。(クリックで拡大)
 

草木が生えて、自然へ還っていく田。(クリックで拡大)

●自然に包まれて、暮らす。

帰省した田舎で姪と父が散歩をしていた。姪が急に駆けだして砂利道で転びそうで、父が慌ててあとを追いかける。
冬の静寂を破り、田が徐々に姿を変えていく。野山は瞬く間に春めきだす。姪は一緒に散歩すると、すこし怖がりだけど、花や蝶々、鳥など、いろいろな生きものに興味津々だった。橋の上でどこか柔らかな風が強く吹くと、それを感じてとびっきり嬉しそうに微笑んだ。

家の傍らに佇む、ものをしまう蔵。すでに古くガタは来ていたが、東日本大震災の時に壁に隙間が空いてしまった。クワやクマデなど農具をはじめ、杵や臼、古い梅干し、いろいろなものが入っている。
蔵の隣にある耕耘機や立てかけられた木々は、使われる日を待ちわびている。

猫も野生に生きる。何かを感じ急に全速力で走りだし、じっと獲物を追いつめ食し、川や田で水を飲み、草むらに寝ころんで、のびのび暮らす。けれど時に、ほかの動物に襲われる、農薬入りの水を飲むなど、さまざまな危険も潜んでいる。
実家の猫も半年ほど帰らない。しばらく旅をして深傷を負って戻ったことがあり、また帰ってくる気がしてしかたない。

耕す人を失い、草木が繁り、自然へ還る田畑がぽつりぽつり現れる。
昔は大勢で働き、皆で畦道に腰かけ休んでいた。今は1人黙々と働く人が増え、高齢になり、田畑は作り手を失う。寂しく問題も生まれる。
けれど昔々、人がその地を借りて耕す前の姿に還っていくようで、ただの悪いこととも想えない。

自然のありのまま生きる姿は、人にも大事なものを呼び覚ます気がする。初めは草木や猫の“野生”に魅かれ追っていた。今はそっと自然や動物の“息づかい”を写したい。そして人も含め多様なつながりも写せたらと想いはじめた。
どこに暮らしても、時には、太陽、土、風、自然の拡がりを感じたい。厳しくも豊かに包まれる自然に畏敬の念を抱き、愚かさもあるけれど温かくつながる人も大切に想う。
そうして生きるなかで、大事に想うものを写していけたなら。
 



次回は永冨恵子さんです。
(2019年7月12日更新)


●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回

 

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