▲撮影に使用したカメラ:PENTAX 645Z。(以下同じ)(クリックで拡大) |
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●においやぬくもりを写真に
長いこと空き家にしていた実家を
手放すことになった。
亡くなった祖父母がこの家を大切にしていたので
手放してしまうことは
すごく心苦しかったし、ここに住めないことが本当に申し訳なくて
せめて写真だけでも残したいと思い、
みんなの思い出のかけらを撮り始めた。
片付けながら、懐かしいものにふれると
たくさんの思い出が蘇ってくる。
台所に立つ母、
廊下から咳をしながら茶の間入ってくる父の姿。
ここにいた気配が残っているような
懐しいにおいがする。
父と祖父は私が小さかった頃に亡くなり
特に祖父は仕事でほとんど家にいなかったので、
どんな人だったのか実のところよく知らなかった。
町内でも怖くて有名で、私は怒られてた記憶ばかり。
祖父が集めていた大量のお茶の器や急須が出てきたのを見て、
初めて祖父の好みを知った。
私は何にも知らなかったんだなあ。
私も受け継いでいるのか、器が好きで集めている。
今ならきっと楽しい話ができたんだろうなと
胸が熱くなった。
父は仕事の他に、将棋教室や高校の弓道部を指導していた。
熱心な教室のお便りや、母と付き合う前に書いたラブレターが出てきて、
父にとって娘にラブレターを読まれるなんて、とても恥ずかしいことだと思うし、私も恐る恐る照れくささいっぱいで読んだ。
私の知っている父はいわゆる三枚目だったけれど、真面目で、几帳面で純粋な人だったんだなと、残された文から伝わってきた。
生きている間に、2人を直接写真に撮ることはできなかったけれど、
ここに生きていた証を写真に残すことで、自分の中の気持ちが
少し消化できたような気がした。
次回は佐久間里美さんです。
(2018年12月14日更新)
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