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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 

第62回

菊地和歌子

1979年生まれ。宮城県出身。大阪芸術大学写真学科卒業後、良品計画のカメラマンとして勤める。2009年フリーランスフォトグラファーとして活動開始。2016年9月に写真集「echo」刊行(LibroArte)。来年2月にBOOK AND SONSにて個展開催予定
https://www.wwwakakokikuchi.com/

 


▲撮影に使用したカメラ:PENTAX 645Z。(以下同じ)(クリックで拡大)
 
 

▲( クリックで拡大)


▲(クリックで拡大)
 


●においやぬくもりを写真に

長いこと空き家にしていた実家を
手放すことになった。

亡くなった祖父母がこの家を大切にしていたので
手放してしまうことは
すごく心苦しかったし、ここに住めないことが本当に申し訳なくて
せめて写真だけでも残したいと思い、
みんなの思い出のかけらを撮り始めた。

片付けながら、懐かしいものにふれると
たくさんの思い出が蘇ってくる。

台所に立つ母、
廊下から咳をしながら茶の間入ってくる父の姿。
ここにいた気配が残っているような
懐しいにおいがする。

父と祖父は私が小さかった頃に亡くなり
特に祖父は仕事でほとんど家にいなかったので、
どんな人だったのか実のところよく知らなかった。
町内でも怖くて有名で、私は怒られてた記憶ばかり。
祖父が集めていた大量のお茶の器や急須が出てきたのを見て、
初めて祖父の好みを知った。
私は何にも知らなかったんだなあ。
私も受け継いでいるのか、器が好きで集めている。
今ならきっと楽しい話ができたんだろうなと
胸が熱くなった。

父は仕事の他に、将棋教室や高校の弓道部を指導していた。
熱心な教室のお便りや、母と付き合う前に書いたラブレターが出てきて、
父にとって娘にラブレターを読まれるなんて、とても恥ずかしいことだと思うし、私も恐る恐る照れくささいっぱいで読んだ。
私の知っている父はいわゆる三枚目だったけれど、真面目で、几帳面で純粋な人だったんだなと、残された文から伝わってきた。

生きている間に、2人を直接写真に撮ることはできなかったけれど、
ここに生きていた証を写真に残すことで、自分の中の気持ちが
少し消化できたような気がした。
 


次回は佐久間里美さんです。
(2018年12月14日更新)



●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー

 

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