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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 

第129

松田真生

松田真生(まつだまお):1990年東京生まれ。2015年東京造形大学大学院修士課程修了。主な個展:2014年「POLIS」ギャラリー巷房、2016年「SITE」マキイマサルギャラリー、2020年「FOREST」ギャラリー巷房、2023年「YOSEMITE/FOREST -かたちを探して-」Alt_Medium。
2024年7月27日よりギャラリー巷房にて『風景の標本』展開催予定


 


▲2023年9月27日。iPhone12miniで撮影。(クリックで拡大)
 
  

▲2024年2月14日。iPhone12miniで撮影。(クリックで拡大)
 

▲2024年2月14日。iPhone12miniで撮影。(クリックで拡大)

●令和のニュータウンにて

某ニュータウンの住民になった。高度経済成長期に、都市部の人口過密状態に対する解決策として開発された新興住宅地。

月日が経ち建物にも街のインフラにも劣化が見られる。住民の高齢化が進みゴーストタウンのイメージもあるが、実際は子供の姿も多く見られる。歩車分離が徹底された都市計画がなされ、駅から数キロに渡り遊歩道、公園が続く。その中に低層の集合住宅が点在している。

私にとって初めから、この街を歩くのは独特な体験だった。「絵に描いたような」と称するにふさわしい光景が次々と繰り広げられる。ただしその絵は多少物心のついた子供の描いたものか、アンリ・ルソーの描いた風景のようなぎこちなさと心地よい不気味さを湛えている。植物や空までもが作りものめいて見える。

土地を切り開き、ゼロから構築されたこの街の凄みはこうした細部に宿っているように思う。家と家、道と道の些細な間隔が、通常の街とは異なる論理で規定されている。当時の人々の「豊かな生」に対する想像力が、こちらがたじろぐほどあけっぴろげに開陳されているようで、戸惑いを覚える。と同時に、ここに住みたいと思った。

時が経って風合いが出たというのも重要だと思う。壁や歩道に経年劣化による質感が追加され、物の表面に味わいを加える。味わいとはなんなのだろう。ザラザラ、ムラ、陰影…構造物の平面に加わえられたエフェクトのことだろうか。

そんなことを考えながら今日もこの街を歩いている。


次回は服部芽生さんです。
(2024年7月12日更新)



●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回

 

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