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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 


第118

フジモリメグミ

1986年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。2011年「petit GEISAI #15」準グランプリ受賞。2013年TAP Gallery所属(~2019年)。2015年「hera」新宿/大阪ニコンサロン。2017年写真集「apollon」出版(ユカイハンズパブリッシング)。2018年「kairos」銀座/大阪ニコンサロン。2020年「aroundscape」エプソンスクエア丸の内、「第4回epSITE Exhibition Award」受賞。2021年4月恵比寿に「Koma gallery」をオープン。2021年10月「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」出展。2023年Koma galleryをベースに、年間3~4回の展示会を開催。
http://fujimorimegumi.com
Instagram:@fujimorimegumi


●ダイバーシティ

兄夫婦に子供が産まれた。

母はもちろん大喜び、父も意外にもデレデレ、長男は照れくさいのか抱っこを拒否し、私は新生物との出会いを楽しんでいる。

先日、お宮参りの撮影をさせてもらった。お嫁ちゃんのご両親もいらっしゃり、酷暑というほど暑い日でもなく、和やかな雰囲気の時間が流れる。子供の頃、兄たちが着た掛け着を、甥っ子も着て撮影した。着る、というよりも抱っこするひとに巻き付けるような形だ。両親は前日に「YouTubeで予習したのよ?!」と言っていたが、予習じゃなくて復習じゃね? と心の中でツッコミをいれる。

ご祈祷前の15分程度で撮影を終えて、先に実家へ戻った。お嫁ちゃんのご両親がいるうちに、写真を印刷・額装して渡せればいいなと思い、プリンタの調整をはじめる。ノズルチェック3回、ヘットクリーニング2回、テストプリントもOKな感じだ。ちょうどみんなが帰ってくる音が聞こえた。1階の客間にお茶とケーキが用意してあったので、私もPCを持ってお邪魔させてもらった。

ある程度セレクトした写真を見せて、印刷するカットを選んでもらう。私はその間にケーキをいただく。地元にあるモンサンクレールというケーキ屋さんのもので、私にはそれを食リポする語彙力がないが、食べたことのない味がして、いつも必ず美味しいと感じる。みんなはお子に夢中なので、私はその間に印刷をすることにした。


「子と恐竜01」 使用機材:FUJIFILM X-Pro3、フジノンレンズXF30mmF2.8 R LM WR Macro(クリックで拡大)

 

印刷した写真を両面に貼り付け、額装をする 仕上げにガラスクリーナーでピカピカに磨き上げると、なかなかにいい感じに仕上がった。兄からご両親に渡してもらうと、彼らはすごく喜んでくれた。あれはきっとお世辞じゃない、本当に嬉しいときのリアクションだったと思う。これぞ写真本来の持つ力だ、とても誇らしい気持ちになった。自分の作業もあったので、兄夫婦と両親の分はちょっと時間をもらうことにして、作業部屋に戻る。アラベールとインクジェットの相性はいかに、の検証を行う。


▲「ソファと恐竜01」 使用機材:FUJIFILM X-Pro3、フジノンレンズXF30mmF2.8 R LM WR Macro(クリックで拡大)

 

私は、甥っ子の誕生に心から感謝している。兄、そして無事に出産してくれたお嫁ちゃんに対しても、超心から感謝している。両親をじーちゃんばーちゃんにしてくれたし、赤ん坊がいるだけでその場の空気が明るくなり、自然と笑顔になる。話には聞いていたが、本当にその通りになるのだ。祖母が亡くなったばかりの我が家に、ポジティブな展開をもたらしてくれた。空っぽになることを恐れていたあの部屋は、空っぽにはならなかった。


▲「子と恐竜02」 使用機材:FUJIFILM X-Pro3、フジノンレンズXF30mmF2.8 R LM WR Macro(クリックで拡大)

 

私には子供がいない。コロナ禍になる以前、不妊治療のクリニックに通っていたこともあったがやめてしまった。

自分でホルモン注射を打ったり、それなりの回数の人工授精をし、失敗した。終わりの見えないものに時間やお金を投資するのは苦痛だったし、なにより本気で子供を望んでいないということに私自身は気がついていた。自分が親になる人生がまったく想像できないのだ。ひととして、なにかが欠落しているのだろうか。両親は充分に愛情を持って育ててくれたと思うし、私自身の問題なのだと思う。でも、実はそんなに悲観的にも捉えていない。

私自身をネガティブにさせるのは、ごく一部のひとの言葉だった。目ん玉が飛び出るんじゃないかと思うほどにデリカシーのない言葉は、時間がたったいまでも私の心を一時的にジュクジュクさせる。そういうひとにとって「多様性/ダイバーシティ」という言葉は、どこか遠い国の外国語のようにしか聞こえないんだろう。

さまざまな生き方の選択があるし、他人の人生に口出しする権利はないと思う。そのことを強く発信していた方が亡くなったという知らせは息がつまるほどショックだった。甥っ子の手を握る。彼はこれからどんな人生を歩んでいくのだろうか。私は変わり種系おばちゃんとして、彼の人生の選択を見守っていきたいと思う。





次回は坂東正沙子さんです。
(2023年8月9日更新)



●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回

 

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