▲ベリーソーダ。ぜんぜん味がしなくてびっくりした! (クリックで拡大)
使用カメラ:すべてFUJIFILM X100V。撮影地:近所のウォーキングコース上にて |
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2023/3/19。(クリックで拡大) |
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2023/3/19。(クリックで拡大)
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2023/3/19。陸橋を上った所でバイバイした。(クリックで拡大)
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●3月19日(日)晴れ。ヨッチャンがウチにやって来た!
昼食後。天気の良さで何処か出かけたい気持ちと、満腹で眠気の狭間でフワフワしてると突然ピンポーン! と部屋に響いた。宅急便か何かでしょと、TV を見ていると「ヨッチャンが来てるよ?」と、モニターを見た夫の声がした。「え!? 何で!!?」と言いながら玄関扉を開けると、いや~どうもどうも! といった感じにズカズカと上がりこみ、居間に座ると同時に携帯の充電をし、夫が出した麦茶をグビっと飲んで、呆気に取られる我々にむけて笑顔を見せつけるこの男――。
そう、彼がヨッチャンで私の6つ上の兄である。
ヨッチャンは両親と実家で暮らし、彼らは用事ついでに年に数回私の家にやって来るのだが、この日は珍しくヨッチャン単体で訪問してきた。アポなしで。「何で来たの?」と尋ねるも、彼は約2時間かけて来た理由についてニコニコするだけで答えてくれない。このゲリラ奇襲が楽しくてパシャパシャ撮った。ヨッチャンは短時間の滞在で去ろうとしたため、私はまだ彼を堪能すべくカフェに誘った(夫はお留守番)。
カフェへ向かう道中「ふたりだけでお店に行くのはこれが初めてだ」と、ふと気付く。実家にいる頃は家族で出掛けたり、帰省した時は皆で外食などはするが、兄妹だけで何処かに行くことはこれまでほとんどなかった。ついに茶を交わす時が来たか、としみじみした気持ちになると同時に「今までなかっただけで、これから先ヨッチャンとふたりだけで過ごす時間が増えるんだろうな」と先のことを思った。
兄は自立が難しく(まったく無理だと思わないけど)、将来は妹である私が彼を支えていくと幼少期から意識させられていた。それについていろいろ思うことはあったが、昔ほど深刻にならなくなった。きっとそれは私が自分の人生を生きている自覚をしているからだと思う。ただこれも、今は私が実家から離れて暮らして余裕があるからそう思うだけで、また一緒になったら分からない。難しいなぁ~~となるが、とりあえず今は、今日の穏やかな気持ちを忘れたくないなと思いカフェへと一緒に歩いた。
ヨッチャンはアイスコーヒー、私はベリーソーダを頼んだ。食いしん坊のヨッチャンのことだから「いろいろ奢らされるんだろうな~」と覚悟していたが、安く済んで良かった。あっけないお茶を終え、しばし私の散歩に付き合ってもらった。青空の下ふたりで木々や水辺周りを歩き、私はたまにレンズをヨッチャンに向ける。何だかすごく心地良くて、「ああ、ずっとこういう時間が欲しかったのだな」と浸っていた。
すると、「じゃ、行くわ。帰るわ!」とヨッチャンが言い放った。「え!!?」と、戸惑う私を他所にヨッチャンは笑いながら手を振って帰って行った。去っていく彼に手を振りながら「最初から最後まで自由すぎるだろ!」と心の中で叫んでしまった。結局ヨッチャンは一体何し来たのか全然分からなかった。よく分らないけど、ヨッチャンの身勝手さというかマイペースな感じが面白かった。もう少し先に行けば、私のお気に入りの道があって当然一緒に行くもんだと思っていたけど仕方ない。私もいろいろヨッチャンに付き合ってもらったし、何より楽しかった。また今日みたいな日がくることを願いながら、ひとりで家に帰った。
次回は中村綾緒さんです。
(2023年5月8日更新)
●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
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