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リレーコラム
女子フォトグラファーの眼差し

本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!

 

第114

林 朋奈

1986年三重県生まれ。東京ビジュアルアーツ専門学校中退。2013年サードディストリクトギャラリーの運営メンバーに参加。2021年ヤング・ポートフォリオ清里フォトアートミュージアム(清里、山梨)。
Instagram:@hayashitomona
https://hayashitomona.com/
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▲写真集『フラグメントライト』より。友人の子供の成人記念に撮影。使用カメラ:Contax Aria。(クリックで拡大)
 


▲写真集『フラグメントライト』より。使用カメラ:Contax Aria。(クリックで拡大)
 


▲写真集『フラグメントライト』より。友人の結婚式での光景。使用カメラ:Konica Hexar。(クリックで拡大)

 


●林朋奈写真集「フラグメントライト」印刷立ち会い日記

(写真集『フラグメントライト』より抜粋)


2023.02.10(Fri)

絶対寝坊してはいけない日なのに、目覚ましをかけずに寝てしまっていた。

夫が「6時だよ! やばいよ!」と起こしてくれる。新宿7時発のあずさに乗らなければいけないのに、もう6時15分。家から新宿まで30分。信じられない速度で準備し、走り、渋谷で乗換し、6時57分新宿に到着。吐きそうになりながらあずさに乗り込む。

先に乗車していたデザイナーの松本さん「林さん、絶対間に合わないと思いました」とニコニコしながらサンドイッチと温かいお茶を差し出してくれた。

初めての立ち会い印刷は、とにかく楽しくて楽しくて楽しくて楽しい!!! 藤原印刷で働く皆さんが本当にかっこよくって、仕事に信念と自信を持っていて退屈そうな目をしてる人がいなかった。

プリンティングディレクターの花岡さんは、私が打ち合わせの時に言った「プリントの深度」という言葉を覚えてくれていて、その言葉を手掛かりにめちゃくちゃにプロの仕事をしてくれた。1冊目でいきなり一番最高の人に出会っちゃった。と思った。花岡さんは一度も「無理」という言葉を使わなかった。

夜は松本さんと居酒屋で地酒やらを。けっこう酔っ払う。最終のあずさで帰る松本さんをなんとか引き止めようともう一軒誘ったけど、帰っちゃった。とにかく楽しい。


▲プリンティングディレクター花岡さんと、プリントを前にあーだこーだ。(クリックで拡大)


2023.02.11(Sat)

今日は観光。昨日の大雪で、町中雪景色。松本でこんなに雪が降るのは5年ぶりらしい。駅前で盛大に雪遊びしている小学生に声をかけて写真を撮らせてもらう。地元? と聞くと、朝一で東京から電車で遊びに来ました!って! 板橋だって。親は? と聞くと、2人で来ました!!って! そんな遊びあるんや。冒険やん。めっちゃ楽しいやつやん。

そのあと、松本城へ行ったり、街をぷらぷら散歩したり。小学生もこのあと観光すると言っていたから会えるかな? と思っていたけど、会えなかった。

夕飯はKさんおすすめの蕎麦屋さん「野麦路」へ。駅から歩いて20分。夜の雪道散歩楽しい。ぐつぐつに煮えた鍋に柄杓のようなザルで蕎麦をしゃぶしゃぶするのだけど、めちゃくちゃおいしい。とうじ蕎麦というらしい。こんな蕎麦の食べ方初めて。

2023.02.12(Sun)

今日も観光。昨日カメラを真っ逆さまに落としてしまい調子が悪い。シャッターを押してないのに、勝手にシャッターがおりてしまう。どんな写真が撮れているんだろう。とワクワクしつつも落ち込む。さらに電池も切れる。電気屋を検索し、イオンのノジマへ。電池交換するとカメラも元気になり、私もすこぶる元気に。

そこからバスに乗り、浅間温泉へ。ぼぉぉぉっと、1時間ほど温泉を堪能し、謎のいちご農園でいちごとソフトクリームを食べる。いちごもソフトクリームもさっぱりしていて湯上りの体には最高だった。そのあと「本、中川」さんに立ち寄り、絵本やらを購入。民家の中にひっそりと佇む素敵な本屋さん。レジの横に置いてあった、松本在住のおじさんが作った手作りメモ帳が異常に良くってこれも2個購入。

夜は松本出身のSさんが家族で行っていたという洋食屋さん「おきなどう」へ。オールドスクールで洒落た洋食屋さん。地元で通っていた洋食屋さんを思い出し懐かしい気持ちに。松本は古き良きと若い人のセンスが入り混じった、とっても豊かな街で住みたい気持ちになる。温泉効果かお肌つるんつるんで、自分を触りながら就寝。

2023.02.13(Mon)

松本最終日の朝。駅前のパン屋さん「ムラタ」でたくさんパンを買ってもりもり食う! って決めていたのにシャッターが閉まっていた。仕方なく朝マック。PCで日記を書きながらもしゃもしゃ食べる。部屋汚い。ダッシュで荷造り。

10時に部屋を出、エレベータの中スマホを見ると10時15分。え? 15分どこいった? っていうか本当は9時半にホテルを出て、お土産を買い、お気に入りの喫茶店で優雅にお茶する予定だったのに。

急いでお土産を買い込みタクシーで藤原印刷さんへ。鹿児島から結婚で松本へ来て、離婚したという運転手さん。松本が肌に合わないらしい。地元に戻らないんすか? と聞くと「まあ、どこに住んでも同じだよ。結局は自分なんですよ。人のせいにしちゃダメなんですよ」と朝から豚骨ラーメンのような話を聞く。

藤原印刷さんに到着するも、私の守護神松本さん電車の遅延で1時間遅れるとのこと。不安だったけど、この場に松本さんがいないの何かおもしろいな。と思ってはしゃいでいたら花岡さんに「今日テンション高いっすね」と言われる。ギクッ。 立ち会い中、花岡さんが「写真集って誰のものなんだろう。ってよく思うんですよね」と言っていたのが印象的だった。そんなことを日々考え、今この場に立ってくれているんだ。

私も写真って誰のものなんだろう。とよく考える。カメラ、フィルム、被写体、シャッターを押す私。大袈裟かもしれないけれど、今すれ違った見知らぬ人とすれ違わなかったら私はシャッターを押していなかったかもしれない。そんな偶然の積み重ねが写真につながっていて、それって奇跡みたいなこと。私はただそんな奇跡みたいな瞬間に身を任せシャッターを押すだけ。そう考えると写真って誰のものでもないんじゃないかなあ。って。

帰りの電車では、松本さんも私もくたくたに疲れているのに、たくさん話してしまって最後の方は2人してあばばばばば? となりながらもやっぱり話しちゃって笑った。


▲花岡さんと記念撮影。(クリックで拡大)

余談。

初めての写真集。私の所属するサードディストリクトギャラリーからまだ写真集が出ていない。私はサードの名前をこの世に残すぞ。サードでのことをなかったことにしないぞ! という使命感ともいえる熱い思いを胸に「3rddgbooks」を立ち上げました。どうせだったら自分の写真集を「3rddgbooks」の1冊目にしてやる! と鼻息荒く取り組み、1冊の写真集『フラグメントライト』ができ上がりました。

写真集を作るのは本当に本当に大変で、写真集のために貯めたお金でNYに飛び立ち、NYで一旗あげてきますわ!! と意味不明なことをデザイナーの松本さんに口走ってしまうほど大変で血塗れ上等な日々でした(松本さん、冷静に「何言ってるんですか? 本つくるんですよね」と言ってくれました。ありがとうございます)。

そんなこんなで紆余曲折、いろいろあった1冊ですが、でき上がった写真集を友人に見せたところ「クッキーが入ってそうな表紙だね」って、とってもとっても可愛い言葉をもらっちゃって、ああ、大変だったけど本当に素敵な本になったなあ。と胸を撫で下ろしたのでした。


▲林朋奈写真集『フラグメントライト』。(クリックで拡大)
 
  

次回は石毛優花さんです。
(2023年4月12日更新)



●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回

 

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