●ロックンロール
コロナ禍によって強制的におうち時間が始まった。
私はその時じっとしていられなくなり、リモートで写真を撮った。ただ自宅のiMacの画面をカメラで写した。その向こう側に知り合いのバンドマンが笑っている。
彼らはスマホを固定して置き、じまんのレコードを見せてくれたり楽器を演奏してくれた。その中の1人、トモスエ君の鳴らしたベースはクレイジーで、激しすぎる動作で鼻血を出していた。私は画面の前でひとり焦りながら、血まみれの姿を少し羨ましく思っていた。
彼から流れた血は純粋なものだった。高校生の時、夏フェスで観たバンドの音楽に興奮し、鼻血を流した自分を思い出す。
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▲すべてNikon D4sで撮影。(クリックで拡大) |
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ロックンロールとは何だったのか。私が頻繁に撮影をしていたロックバンドが数年前に解散した時から未だに考えている。
私にとってはそのバンドの存在がロックンロールだった。なくなってからは私が信じていたものの正体がわからなくなり、写真を撮る情熱の炎が少しずつ小さくなっていくように感じていた。そもそもそんな炎は自分の中になかったのかもしれない。ただ燃えている炎を眺めていただけに違いない。
しかし、私が写した写真は確かにある。無名のロックバンドの情熱の火花が人々を、自分を動かしたのだという事実は確かにあった。私は自分を突き動かす何かを欲していたのだと思う。それがロックンロールだった。
いつの日か私が撮った写真がロックンロールになりますように。
次回は中澤真央さんです。
(2022年11月11日更新)
●連載「女子フォトグラファーの眼差し」のバックナンバー
第33回~
第1回~第32回
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